78 / 123
第3章 幼子たちと子守役たちはモフモフ巡りをする
3-37
しおりを挟む金目の長や他の森の長たちは、幼子たちの話を、一言も漏らさぬように、静かに聞いていた。この話の突然の成り行きについていくだけで一杯になり、質問する余裕もなかった。ただ九尾の長だけが、疑問で頭を一杯にしていても質問をするだけの余裕があったのだろうか、次々と口を挿んで来た。
『幼子らの見た夢ってなんや、どんな夢やったか、ワイらに聞かせてみんかなぁ。』
これは好反応を得たと思った幼子たちは、お散歩を中止にさせないためにもと、ここぞとばかりにお喋りを始めた。
「きゅうびのおさの、せなかにのって、・たけのもり・にいきまちた。いろんな・たけ・で、いっぱいになった、もりでちた。」
「ぴぃ~『かれたきが、びっちりと、つまってて、けだまもなかに、はいれなかった、けどきゅうびのおさが、もりのそとから、かれたきとって、すててた!』」
「わふっ『あいたすきまから、・たけ・のわかめを、いっぱいほった!けだまと、わけてたべた、おいしかった!』」
『そこは夢や無いで~ワイの森で、ホンマにあったことやでなぁ。みかん色の尻尾と薄紅色の尻尾も、一緒に手伝いしてくれたやろ?』
幼子たちはハッとして、こくこくと頷くとしゃべり続けた。
「う~ん、あとは、かれたきがなくなって、もりがひろくなって、おおきなけだまも、あゆいてまちた~・たけ・が、とってもふとく、なりまちた~」
『大きな毛玉って、誰のことや?』
「わふっ『おおきなけだまが、しっぽでしゅってしたら、ふといきが、きれた!しっぽで、ひとふり、きれーなきりくち、すごかった~ふといまるた、いっぱいあった!』」
『尻尾の一振りで、太い木を切り倒したぁ。誰やそれ?ワイらや無いよなぁ。』
九尾の長が、みかん色の尻尾と薄紅色の尻尾に目を向けて、確認を取った。
「けだまたちが、・たけ・のかわを、ばしゃばしゃちたら、あめよけに、なりまちた!かるい、むこうがみえる、しゅごいあめよけ、でしゅ~」
「わふわふっ『ひろいくさはらに、いっぱいみずがながれてて、けだまは、・たけ・のまるたをおいて、わたってた!』」
「ぴぃ~『ふとい・たけ・に、おおきなうろがあった。きりかぶにも、うろがあって、みずと、おさなごが、でてきた。』」
『雨除けの話と、木のうろから水が出てくるゆうんはいいけど、幼子が出てくるゆうんは、どうなんや?夢の話やな、間違いないなぁ。』
この辺りで、幼子たちは金目の長に聞きたい事があったと、思い出した。
「わふっ『ゆきたちは、おやまでうまれて、ししょうがみつけた!おさたちも、おやまでうまれた!』」
「ぴぴっぴぃ~『けだまたちは、もりでうまれた、そうきいた。ちいさいけだまは、もりでうまれて、おおきいけだまは、おやまでうまれる、そうおもってた。』」
『森の子らが小さい毛玉で、ワイらが大きい毛玉かいな。とゆーことは…』
ブツブツと呟いて考え込んだ九尾の長はこの際脇に置いて、幼子たちは金目の長に問いかけた。
「おおきなけだまも、もりでうまれゆ、でしゅか?ひかる、おみじゅが、いるでしゅか?」
金目の長は崩れそうな姿勢を直すと、幼子たちに確認を取りつつ答えていった。
『ほ~っ、木のうろの中で、小さき者ではない、幼子が、生まれたのですかの~光る水も、共にあった、ならその水は、力ある水ですかの~
儂らのような、大きな毛玉は、皆その力ある水で、育つのですがの~その大事な水は、ほとんど御山でしか湧かないので、儂らも御山で生まれたのですがの~』
『ふ~む、森で力ある水が湧くなら、私たちの幼子が、森で生まれることも、あり得る。急いで各森へ、連絡をすべき!』
長たちが行動に移す寸前に、ゆきがそれを止めた。
「わふっ『だいじょうぶ、おやまのしゅごしゃが、まいご、といってた!ゆきたちも、まいご、いわれた!』」
「ぴぃ~『しろいおやまのおさなご、ともいわれたけど!』」
各地の森の長たちは、今度こそ完全に、動きを止めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる