87 / 123
第4章 もふもふな幼子たちと子守役は森にお出掛けする
4-6
しおりを挟む幼子たちの持ってきたお土産の効果は、中々のモノだった。
・たけの切り株・を入れ物にして、紅色に輝く美味しい草の実・いちご・をたくさん持って帰ったことが、まずは長たちを驚かせた。美味しい草の実は柔らかいので、採ったその場で食べて御終いなモノだったからだ。
それなのに珍しい大きな・たけ・を入れ物にして、しずくがシッカリと抱えて歩いて、更に其処から、ゆきとかすみが長の一人に一つずつ、美味しい草の実を浮かせて配り歩いたのだ。
「わふっ『おいしいみ、たべて!』」
「ぴぃ~『はいどーぞ、うけとって!』」
かわいい幼子たちの、嬉しそうに・いちご・を配る姿も、お礼を言われて喜ぶ姿も間近で見た長たちは、蒼い鬣の長の、
『これ以上ないほど素晴らしいお土産を貰ったのである。ありがとうである。』
と同様のお礼を口々に述べた。
「ど-いたちまちて、おいちかった?」
お礼に答える幼子たちも、やり切ったと満足していた。
『ほほ~っ、美味しい草の実ですか、このように大粒のモノは、久しぶりに口にしますがの~一段と美味しいですの~ごちそうさまですかの~
配り方も良かったですの~あなた方の成長の現れですからの~
さあ、この後はゆっくりと休むのですかの~』
なので金目の長に休むよう促されても駄々をこねることも無く、
「『『は~い、みなさん、おやしゅみなさい』』」
大人しく薄紅色の尻尾と共に、 自分たちの部屋に向かった。
幼子たちを見送った長たちは、やる気を取り戻して、再び力の制御に取り組みだした。
そんな長たちの中で、順調に力を制御し、更に消費を抑えた新しい力の使い方まで突き詰めつつある数人の長たちが居た。
若葉色の長を始めとしたその長たちは、金目の長を取り巻いて話し込んでいた。
『ふ~む、これが・たけ・の入れ物、このようなうろを上手く利用しているわけか。
ふむ、・たけ・の丸太道と云い、土に還り難いからこそ、考え付いたのだろうが、うまい利用法だ、素晴らしい。』
『このように綺麗なうろができる樹が、此処の巨木以外にもあったとは、我も初めて知ったのである。
だが、このうろは外からは入れないのであるよな?』
『そうやで、そこが大きさと共に巨木との一番の違いやなぁ。
この樹の幹は、中心がほとんどうろの、がらんどうや。せやから、切り倒した丸太も、えらい軽いんや。
お陰で、枯れた木や間引いた木を、森から放り出すのも簡単や。助かったわ。』
『ふ~む、面白い。ふむ、そろそろ金目の長も、何か見えてきた頃か?』
ずっと物も言わずに、ひたすら・たけ・の切り株や若芽の皮を見ていた金目の長が、ようやくため息とともに身動きした。
『ほほ~っ、そうですな、この辺りの木々には感じない力を、ほんの少し感じますかの~
ほ~っ、そして同じ力を、九尾の長からも感じますかの~』
金目の長が、ちかくに集まった長たちを見回しながら言った。
『ふ~む、あの森は、九尾の長が守り始めてからずいぶん経ってから、あの・たけ・が生え始めたのだったか?
ふむ、つまりは九尾の長の守りの力が、森に行き渡って、初めてあの・たけ・が生まれた、という事か?
ふむふむ、興味深い話だ。』
近くに居た長たちは、若葉色の長の考えを聞いて、驚きもしたが、納得もした。
『さすが、九尾の長である。』
『その納得の仕方は、なんでや!ワイが、納得いかん!』
当人は、不満げだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる