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クリスマスイブ 21時 昨夜の私
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マズい。非常にマズい。
叫び出したい気持ちを抑える為に、両手でテーブルを掴んで心を落ち着かせる。
「あ。もうお腹がペコペコですよね。佳奈さん、食べ始めましょう」
私が前のめりでテーブルを掴んでいるのを勘違いしたサンタクロース青年が笑顔で言った。
部屋に入ってもサンタクロース衣装のままの青年は、本当はサンタクロースの妖精で、散々な一日だったクリスマスイブの日を変える為に、私の目の前に現れてくれたのかな?
「昨日は佳奈さん、もの凄い量のお酒を飲んでいたから、今夜は飲むのをやめますか?」
現実逃避、失敗ぃぃ~。
「き、君。昨夜は何で私と飲むことになったのかな?」
「君、なんて他人行儀だなぁ。昨日みたいにせいやって呼んで下さいよ」
「せいや?」
「そう!聖なる夜と書いて、聖夜!
24日生まれでもないのに、おっかしいですよねぇ。おまけに僕、12月生まれですらないんですよ?」
まさかの聖夜に聖夜!
そして、昨日からの知り合い(推定)に、他人行儀だなどと言われてしまう私と聖夜との関係とは?
心の平穏の為に、早く知りたい。
知りたくないけれども、知らなきゃそこそこ分厚い私の中の黒歴史ノートのページが、この歳で新しく書き加えられてしまったのかどうかの判別がつかないよ!
出来れば真っ白のままであって欲しい。いや、真っ白なのは私の昨夜の記憶なのだけど。
『君を愛せなかった』なんて言われて振られた現場を見られている時点で、黒歴史ノートに新しいページが増えていってる様な気もするな・・・。
「ん!このお肉、美味しい!やっぱり七面鳥なのかなぁ?佳奈さん、どう思います?」
青年よ。あ、聖夜君だったか。
何故、君はそんなに一人で楽しそうなんだい?
私も無意識に手が動いて、クリスマス限定特製ソースがかかったローストビーフを口にしているけれども。
「あ、あのさ~。さっきの話の続き・・・」
「ああ、佳奈さんが昨日の夜の事を綺麗さっぱり忘れているらしい話、でしたっけ」
うぐっ!
確かにその通り!その通りなんだけれど、私は聖夜君に一体、何をしてしまったの!?
「コンビニまで戻ったら、ちょうど佳奈さんがタケシが渡した缶チューハイを片手に、缶ビールが沢山入ったビニール袋を持って出て来たところだったんです」
コンビニ店員のドン引きした姿を覚えているのに、何故、店から出た後の記憶はないんだ?私ぃ~!
「僕、何て声を掛けたらいいのかわからなくて。そしたら佳奈さん。いきなり缶チューハイのプルタブを開けて一気飲みしだして」
ああ、うん。それは記憶があるな。
「佳奈さんはそのままふらふらと歩き出したんですよ。重たいはずの缶ビール入りビニール袋をブンブンと振り回して」
うん。その記憶もある。
「それでつい声かけちゃったんですよねぇ。『凄い腕力ですね』って。そうしたら佳奈さん、『私、腕力、握力が結構あるんで』とか言って返事をしてくれたんです」
ああ、はい。その記憶も朧げながらあるよ。
てかっ!この時点でで既に記憶が朧げって、私、どんだけ速攻で酔いが回っちゃったわけ!?
「けど、佳奈さんの足取りが、え~と千鳥足?みたいになってて、それで見ていて危なっかしくて、『僕が荷物を持ちますよ』って言っちゃったんです」
酔いのスピードは速いのに、缶ビール入りのビニール袋を振り回しつつ、足取りはふらふらの千鳥足って。
・・・最っ悪だ!
典型的な酔いどれオヤジの歩き方じゃん。それだけで黒歴史ノートを新しく更新しちゃってるよ!
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
叫び出したい気持ちを抑える為に、両手でテーブルを掴んで心を落ち着かせる。
「あ。もうお腹がペコペコですよね。佳奈さん、食べ始めましょう」
私が前のめりでテーブルを掴んでいるのを勘違いしたサンタクロース青年が笑顔で言った。
部屋に入ってもサンタクロース衣装のままの青年は、本当はサンタクロースの妖精で、散々な一日だったクリスマスイブの日を変える為に、私の目の前に現れてくれたのかな?
「昨日は佳奈さん、もの凄い量のお酒を飲んでいたから、今夜は飲むのをやめますか?」
現実逃避、失敗ぃぃ~。
「き、君。昨夜は何で私と飲むことになったのかな?」
「君、なんて他人行儀だなぁ。昨日みたいにせいやって呼んで下さいよ」
「せいや?」
「そう!聖なる夜と書いて、聖夜!
24日生まれでもないのに、おっかしいですよねぇ。おまけに僕、12月生まれですらないんですよ?」
まさかの聖夜に聖夜!
そして、昨日からの知り合い(推定)に、他人行儀だなどと言われてしまう私と聖夜との関係とは?
心の平穏の為に、早く知りたい。
知りたくないけれども、知らなきゃそこそこ分厚い私の中の黒歴史ノートのページが、この歳で新しく書き加えられてしまったのかどうかの判別がつかないよ!
出来れば真っ白のままであって欲しい。いや、真っ白なのは私の昨夜の記憶なのだけど。
『君を愛せなかった』なんて言われて振られた現場を見られている時点で、黒歴史ノートに新しいページが増えていってる様な気もするな・・・。
「ん!このお肉、美味しい!やっぱり七面鳥なのかなぁ?佳奈さん、どう思います?」
青年よ。あ、聖夜君だったか。
何故、君はそんなに一人で楽しそうなんだい?
私も無意識に手が動いて、クリスマス限定特製ソースがかかったローストビーフを口にしているけれども。
「あ、あのさ~。さっきの話の続き・・・」
「ああ、佳奈さんが昨日の夜の事を綺麗さっぱり忘れているらしい話、でしたっけ」
うぐっ!
確かにその通り!その通りなんだけれど、私は聖夜君に一体、何をしてしまったの!?
「コンビニまで戻ったら、ちょうど佳奈さんがタケシが渡した缶チューハイを片手に、缶ビールが沢山入ったビニール袋を持って出て来たところだったんです」
コンビニ店員のドン引きした姿を覚えているのに、何故、店から出た後の記憶はないんだ?私ぃ~!
「僕、何て声を掛けたらいいのかわからなくて。そしたら佳奈さん。いきなり缶チューハイのプルタブを開けて一気飲みしだして」
ああ、うん。それは記憶があるな。
「佳奈さんはそのままふらふらと歩き出したんですよ。重たいはずの缶ビール入りビニール袋をブンブンと振り回して」
うん。その記憶もある。
「それでつい声かけちゃったんですよねぇ。『凄い腕力ですね』って。そうしたら佳奈さん、『私、腕力、握力が結構あるんで』とか言って返事をしてくれたんです」
ああ、はい。その記憶も朧げながらあるよ。
てかっ!この時点でで既に記憶が朧げって、私、どんだけ速攻で酔いが回っちゃったわけ!?
「けど、佳奈さんの足取りが、え~と千鳥足?みたいになってて、それで見ていて危なっかしくて、『僕が荷物を持ちますよ』って言っちゃったんです」
酔いのスピードは速いのに、缶ビール入りのビニール袋を振り回しつつ、足取りはふらふらの千鳥足って。
・・・最っ悪だ!
典型的な酔いどれオヤジの歩き方じゃん。それだけで黒歴史ノートを新しく更新しちゃってるよ!
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
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