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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村
鴨肉と意外な事実
「今日は早いね。姉ちゃん、エール3つ!」
何がなんだか分からない私たちとサーっと顔色を悪くするチャックさん夫婦。
動じずに厨房の方に向かって声を掛けるとリッキーさんはすくっと立ち上がった。
「俺、結構料理の腕があると思うんで、エトリナ商会の人たちもついでに食べてみて下さいよ」
誰に対してなのか、バチっと右目でウィンクを決めて、リッキーさんが厨房の方へと戻って行く。
「あ、あの、これはその」
余裕な態度のリッキーさんとは対照的に可哀想なぐらい真っ青な顔でチャックさんが何かを言おうとしている。
それを知ってか知らずか、作業服姿の男性たちが三人、私たちの隣のテーブルへと腰を下ろして賑やかに喋り出した。
「いつも客が来ねぇって言ってるけど、良かったじゃねぇか、チャック」
「お兄さんたち、良い身なりをしてるけど、商人さんかい?」
「おい、ジョー。気安く話しかけんじゃねぇよ。お貴族さんかも知れねぇだろうが」
どう見てもクリスたちより歳上のオジさんたちがアシュトンさんに話しかけるのをチャックさんがアワアワと止めようとしているけど全く間に合ってない。
「お。お兄ちゃんたち、こりゃまた別嬪さんを連れて、アターミに行くところかい?」
「この人たちは今日からウチに宿泊するお客さんだよ。ちょっと村の相談に乗ってもらう事になってんだ」
お姉さんに頼んだ筈のエールを両手に持ってリッキーさんが再びテーブルに戻ってきた。
「ティアナさん、だっけ?嫌いなモンてある?田舎料理で普段は男向けばっかりだから量が分からないんだけど、パンて3つ?それとも4つぐらいいける?」
大きさやメインの料理が何かにもよると思うんだけど、たぶん4つは無理。
「あの、パンの他にも料理があるならパンは2つでお願いします」
「あいよ。そっちのお兄さんたちは4つは軽いよね。適当に籠で持ってくるわ」
えぇ?適当に籠で持ってくるなら、態々聞かなくてもよくない?なんでパンの数に拘りがあるのかが謎。
でもリッキーさんはオジさんたちにエールを出して、私たちにも聞くだけ聞いてご機嫌で厨房に戻って行った。顔色の悪い置き物状態のチャックさんたちは放置のままで。
突然現れたオジさんたちに固まったままのチャックさんたちだけど、オジさんたちがいるこの場で話を続けても良いのか判断に迷う。
「取り敢えず詳しい話はまた後にして、少々早いですが私たちも夕食を頂きましょうか。チャックさん、それで宜しいでしょうか?」
「は、はいっ。勿論です!ナタリー、お前も厨房の方を手伝ってやってくれ。あ、私は料理が出来るまでの間にアシュトン様たちがお泊まりになる部屋の方の準備をしてきますので失礼します」
そう言ってサッと立ち上がってチャックさんがテーブルを離れて行った。機敏な動き、というよりは逃げ足と言った方が合っていると思うほどの素早い動きだった。取り残されたナタリーさんもハッとして慌てて席を立って厨房の方に下がっていった。
隣のテーブルのオジさんたちがエールを飲み干す前に、リッキーさんとナタリーさんがトレイのようなものに料理を載せてきた。料理自体はもう出来てたっぽいね。
「お待ちどう~。今日はジョーさんが獲ってきてくれた鴨肉を使ってるんだ。昼に作ったんだけど、固くならずに美味しく出来たから俺の一押し。スープの方は足のとこと一緒に煮たけど良い感じの味になってるぜ」
リッキーさんがオジさんたちに話しかけながらどんどんと料理を置いていく。私たちのテーブルの方はナタリーさんが緊張した雰囲気でそっと並べている。隣のテーブルを見ると料理を載せている器に違いはあるけれど同じ料理みたい。
オジさんたちのテーブルはスープ皿じゃなくて、3人分を大きな鍋で出されていて、見た目はスープというよりは鍋料理な感じ。じゃがいもやニンジンなどがゴロっとした感じで入っていて、鴨の足の骨?がところどころ飛び出ている。骨付き肉というよりは鶏がらスープを作る為のものかな。鴨肉はスライスしたお肉が入っている。
リッキーさんが言っていた一押しの鴨肉は、ローストビーフの鴨肉版ぽいけど、赤っぽい部分は殆どなくて焼き目を付けた後に茹でたかオーブンを使ったのかなぁ。ソースは赤ワインとかじゃなくて、何かの野菜をすり潰して調味料と混ぜた感じ?
オジさんたちは躊躇せずにレタスと鴨肉をパンに挟んで食べ始めているので、この食堂の定番メニューなのかも。
パンに挟む前に鴨肉を一切れ口に入れる。確かに柔らかい。それにシンプルな味付けだけど美味しい。味付けはたぶん塩のみ。次はソースをつけて食べてみたらこれも美味しい。バターと塩が使われている思うけど、野菜は玉ねぎと緑系の野菜を使っている。
「このソース、美味しいですね。この緑色の野菜は何を使っているんですか?」
ナタリーさんは置いたらすぐに厨房へと戻っていったけど、リッキーさんはそのまま近くの椅子に腰掛けたので聞いてみる。
「ん~、さぁ?食堂で使う野菜は裏で育ててるんだけど、周りに生えている葉っぱが良い匂いをさせてたからすり潰して入れてみた」
リッキーさんオリジナルのソースって事か。葉っぱという事はバジルとかハーブ系の何かかもね。
「もしかしてリッキーさんはどこかのお店で修行したとかじゃなくて、独学で料理を習得されたとかですか?」
「修行~。俺、まだ16だからね。小さい頃から宿屋の手伝いしてて、強いて言うなら婆ちゃんに料理の事は教わったけどそれだけだよ?」
どういうわけだか、私が言った修行という言葉に何が面白いのか超ウケているんですけど?
しかもお婆ちゃんに教わっただけと言ってるけど、さっき料理の腕が結構あるって自分で言ってなかった?
確かに美味しいけれども!
誰基準にした腕自慢なの!?
というか・・・16歳って、私より歳下~!
リッキーさんじゃなくて、リッキー君じゃん!!
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
何がなんだか分からない私たちとサーっと顔色を悪くするチャックさん夫婦。
動じずに厨房の方に向かって声を掛けるとリッキーさんはすくっと立ち上がった。
「俺、結構料理の腕があると思うんで、エトリナ商会の人たちもついでに食べてみて下さいよ」
誰に対してなのか、バチっと右目でウィンクを決めて、リッキーさんが厨房の方へと戻って行く。
「あ、あの、これはその」
余裕な態度のリッキーさんとは対照的に可哀想なぐらい真っ青な顔でチャックさんが何かを言おうとしている。
それを知ってか知らずか、作業服姿の男性たちが三人、私たちの隣のテーブルへと腰を下ろして賑やかに喋り出した。
「いつも客が来ねぇって言ってるけど、良かったじゃねぇか、チャック」
「お兄さんたち、良い身なりをしてるけど、商人さんかい?」
「おい、ジョー。気安く話しかけんじゃねぇよ。お貴族さんかも知れねぇだろうが」
どう見てもクリスたちより歳上のオジさんたちがアシュトンさんに話しかけるのをチャックさんがアワアワと止めようとしているけど全く間に合ってない。
「お。お兄ちゃんたち、こりゃまた別嬪さんを連れて、アターミに行くところかい?」
「この人たちは今日からウチに宿泊するお客さんだよ。ちょっと村の相談に乗ってもらう事になってんだ」
お姉さんに頼んだ筈のエールを両手に持ってリッキーさんが再びテーブルに戻ってきた。
「ティアナさん、だっけ?嫌いなモンてある?田舎料理で普段は男向けばっかりだから量が分からないんだけど、パンて3つ?それとも4つぐらいいける?」
大きさやメインの料理が何かにもよると思うんだけど、たぶん4つは無理。
「あの、パンの他にも料理があるならパンは2つでお願いします」
「あいよ。そっちのお兄さんたちは4つは軽いよね。適当に籠で持ってくるわ」
えぇ?適当に籠で持ってくるなら、態々聞かなくてもよくない?なんでパンの数に拘りがあるのかが謎。
でもリッキーさんはオジさんたちにエールを出して、私たちにも聞くだけ聞いてご機嫌で厨房に戻って行った。顔色の悪い置き物状態のチャックさんたちは放置のままで。
突然現れたオジさんたちに固まったままのチャックさんたちだけど、オジさんたちがいるこの場で話を続けても良いのか判断に迷う。
「取り敢えず詳しい話はまた後にして、少々早いですが私たちも夕食を頂きましょうか。チャックさん、それで宜しいでしょうか?」
「は、はいっ。勿論です!ナタリー、お前も厨房の方を手伝ってやってくれ。あ、私は料理が出来るまでの間にアシュトン様たちがお泊まりになる部屋の方の準備をしてきますので失礼します」
そう言ってサッと立ち上がってチャックさんがテーブルを離れて行った。機敏な動き、というよりは逃げ足と言った方が合っていると思うほどの素早い動きだった。取り残されたナタリーさんもハッとして慌てて席を立って厨房の方に下がっていった。
隣のテーブルのオジさんたちがエールを飲み干す前に、リッキーさんとナタリーさんがトレイのようなものに料理を載せてきた。料理自体はもう出来てたっぽいね。
「お待ちどう~。今日はジョーさんが獲ってきてくれた鴨肉を使ってるんだ。昼に作ったんだけど、固くならずに美味しく出来たから俺の一押し。スープの方は足のとこと一緒に煮たけど良い感じの味になってるぜ」
リッキーさんがオジさんたちに話しかけながらどんどんと料理を置いていく。私たちのテーブルの方はナタリーさんが緊張した雰囲気でそっと並べている。隣のテーブルを見ると料理を載せている器に違いはあるけれど同じ料理みたい。
オジさんたちのテーブルはスープ皿じゃなくて、3人分を大きな鍋で出されていて、見た目はスープというよりは鍋料理な感じ。じゃがいもやニンジンなどがゴロっとした感じで入っていて、鴨の足の骨?がところどころ飛び出ている。骨付き肉というよりは鶏がらスープを作る為のものかな。鴨肉はスライスしたお肉が入っている。
リッキーさんが言っていた一押しの鴨肉は、ローストビーフの鴨肉版ぽいけど、赤っぽい部分は殆どなくて焼き目を付けた後に茹でたかオーブンを使ったのかなぁ。ソースは赤ワインとかじゃなくて、何かの野菜をすり潰して調味料と混ぜた感じ?
オジさんたちは躊躇せずにレタスと鴨肉をパンに挟んで食べ始めているので、この食堂の定番メニューなのかも。
パンに挟む前に鴨肉を一切れ口に入れる。確かに柔らかい。それにシンプルな味付けだけど美味しい。味付けはたぶん塩のみ。次はソースをつけて食べてみたらこれも美味しい。バターと塩が使われている思うけど、野菜は玉ねぎと緑系の野菜を使っている。
「このソース、美味しいですね。この緑色の野菜は何を使っているんですか?」
ナタリーさんは置いたらすぐに厨房へと戻っていったけど、リッキーさんはそのまま近くの椅子に腰掛けたので聞いてみる。
「ん~、さぁ?食堂で使う野菜は裏で育ててるんだけど、周りに生えている葉っぱが良い匂いをさせてたからすり潰して入れてみた」
リッキーさんオリジナルのソースって事か。葉っぱという事はバジルとかハーブ系の何かかもね。
「もしかしてリッキーさんはどこかのお店で修行したとかじゃなくて、独学で料理を習得されたとかですか?」
「修行~。俺、まだ16だからね。小さい頃から宿屋の手伝いしてて、強いて言うなら婆ちゃんに料理の事は教わったけどそれだけだよ?」
どういうわけだか、私が言った修行という言葉に何が面白いのか超ウケているんですけど?
しかもお婆ちゃんに教わっただけと言ってるけど、さっき料理の腕が結構あるって自分で言ってなかった?
確かに美味しいけれども!
誰基準にした腕自慢なの!?
というか・・・16歳って、私より歳下~!
リッキーさんじゃなくて、リッキー君じゃん!!
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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