捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

文字の大きさ
435 / 441
ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

その玩具の名は

しおりを挟む
カチカチカチッ

「いらっしゃい、いらっしゃい~」

カチカチカチッ

「ワトル村土産はいかがですかぁ~」

カチカチカチッ


・・・。

カチカチとうるさぁ~い!!


「わぁ~!何これ?」

五、六歳ぐらいの男の子が、屋台に近づいて来ると目を輝かせて聞いてきた。

私にはどうも良さが分からないが、実は今朝からもう十個も売れている。全く解せない。

コリンさんたちは、私に依頼された食器を作る傍ら、私が提案した土産品の試作を作り続けていた。その中で既に完成しているのがけん玉だった。

けん玉にハマったレオさんたちがもの凄い勢いで、けん玉を作り始めちゃってねぇ。試作品というよりも、自分たちの為に最高の一品を!みたいなノリで。

それでそれぞれのマイけん玉が出来て満足した、と思ったら大量のけん玉や製作途中のパーツが山のようにたまっていたのだとか。

レオさんたちは、それはそれは拘ってけん玉作りに励んだみたいよ?
玉の大きさから大皿、中皿などのサイズまで、下手をしたらミリ単位で作っていたらしい。

けん玉一つで、何故そこまで?

 まあ、確かに私の描いた設計図みたいなものにサイズは書かれていなかった。だってそんなの知らないし、そこは何度か試作していい感じに作ってくれれば、というものではあったけれど。

いや、しかし!
レオさんたちも試作のつもりが、いつの間にか競い合うようにマイけん玉作りに夢中になってしまうって・・・。

どれだけ童心に返っちゃってるの!?

 スコティッシュ子爵たちが村を去って、やっと宿屋で話し合いが出来るようになった時に大量のけん玉を見せられたのだけど、もう直ぐにでも土産品として売ってはどうか?という話になったわけだ。

その時に見せられたけん玉を見てポツリと言っちゃったんだよね。

「なんかアメリカンクラッカーも作れそうだよね」って。

そうしたら何故だかレオさんたちが、私の呟きにもの凄く興味を持っちゃって話を聞きたがったのだ。


紐の端と端に四、五センチぐらいの硬い玉がついていて、ぶつけて音を鳴らして遊ぶおもちゃがアメリカンクラッカー。

もの凄く単純なおもちゃだよねぇ。
正直、何が面白いのか全く分からない。

だけど、前世の児童養護施設の子どもたち、ーーといっても大体は男の子だったけどーー が、一時期夢中になって遊んでいたおもちゃなんだよ。

 この一時期、というのが曲者で、毎年のように低学年の男の子たちの間で流行るのだ。
しかも高学年の男の子たちが得意気にお手本を見せて『かっけぇぇ~』の賞賛の声を貰って、何故か高学年の子達も競い合うようにやるようになるまでがセット、という。

勿論、これは施設の間での話。

だって、アメリカンクラッカーって何!?って、感じじゃない?

 施設にあるおもちゃって、寄付されたものが多かった。一応は予算もあって、年に数回、新しい玩具が購入されたりもしたけれど、基本は本が多かったし、玩具も知育系の物が多かったんだよね。

ゲーム機とかそういうのは、子ども人数分なんて用意出来ないし、遊ぶにもゲームソフトが必要になるでしょ?
予算的にも厳しかったのは理解出来る。

 それで、寄付されたおもちゃというのは、家庭内で不要になった物が回ってくることが多かったんだよね。
そういう物ってどういうわけか?どの家庭でも不要になる物らしくて、必然的に施設には同じおもちゃが増えていくことになる。

そういえば、けん玉も大量にあったなぁ。コマとか縄跳びとかも。
そう!それでアメリカンクラッカーも幾つかあったんだよ。

兎に角、レオさんたちに聞かれたから答えたわけなんだけれど、それでその場で試作品を作るレオさんたちがいて、更に何故かその試作品でレオさんたちが無心で遊び始めて・・・。

それでまた、アメリカンクラッカーが大量に作られ、そしてけん玉と一緒に販売されることになった、と。

それで、ロッキーさんのお店に土産品を置いておくだけでは売れないだろうと屋台で売ってみることになったのだ。
屋台の隣で、リッキー君の呼び込みとともに、ワトル村の子どもたちがけん玉とアメリカンクラッカーの実演してみたところ・・・。


 いやぁ~。子どもって凄いね。アメリカンクラッカーは単純な遊びだから、誰でもすぐに出来るものではあったけれど、子どもたちが目をキラキラさせてやっていると、凄く面白そうに見えるんだよ。

 レオさんたちも無心でやってたけど、見ていても面白くなかったんだよね。だけど子どもたちがやっているのを見ていると『あれ?もしかして実は面白い?』って気になってくるから不思議。

 それで、子連れの乗客の皆さんが買ってくれて、『孫の土産に』と言って買ってくれたお年寄りもいた。

因みにアメリカンクラッカーは、カチカチボールという名前で売り出すことになった。ベタだけど分かりやすい名前だよね。



ーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読みいただきありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。

遅くなりましたが、本年一回目の投稿になりました。
今年もよろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...