捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ニトの街にて

女商人は首を突っ込む事にした

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只今、隣からの圧が非常に強いです。おまけに視線も本当に刺さるんじゃないかって程に鋭い。


ゴメンなさい、クリス。そろそろ許して。


私も知らんぷりでニトの街を出て行きたかった。


今でもね!


でも知らんぷり出来なかったんだよぉぉぉ~。


けど口出ししてしまったんだから仕方がない。昨日から頭の隅で考えていた事を思い返して、今この場で提案出来る事、考えていた事などをざっと思い浮かべてみる。


「どういう意味よ、小娘っ!」


エリス様が威嚇するように言ってはいるけれど、女豹メイクが涙で落ちた今、庇護欲を唆るような愛らしい顔では怖くは無いし、なんならエリス様だって小娘に見えるよ?


とりあえずは冒険者ギルド絡みから話してみようかな。


「宿で聞いたんですけど、ニトの街ってと呼ばれていたそうですよね?

けれど半年前に冒険者ギルドはイケアの街のギルドと合併してニトには冒険者ギルドは無くなった。

それで冒険者相手に商売していた店が客が減って困っていると聞きました。

実際、食べに行ったお店はお客さんが少なかったし廃業してしまったのか、店を開けていない所も数軒ありました。」


宿で聞いた話ではニトを南に馬車で一時間ほど下った場所に初級、中級者向けのダンジョンがあるのだそうだ。


出てくる魔獣魔物も程よい強さで手に入る素材も高価ではないけれど日常で需要がある様なモノが多い為、駆け出し冒険者が経験を積むのにちょうど良く、手堅い収入源にもなると人気の高いダンジョンなんだとか。


そのダンジョンに訪れる冒険者が滞在するのに今まではニトの街を利用していたらしい。けれどニトの冒険者ギルドがイケアのギルドと合併し、ニトを去った事で冒険者たちもイケアへと移動してしまったそうだ。


冒険者たちは今はイケアから出るダンジョン行きの乗り合い馬車を利用している為、態々、ニトに立ち寄る事は滅多に無くなった。

立ち寄ったとしてもダンジョンに潜る前に一泊する程度で、ダンジョン内で数日過ごした後はそのままイケアに戻っていくのだそうだ。

マジックバッグが無いならさっさとギルドに戻って素材や買い取りをお願いしたいだろうからねぇ。

それにダンジョンに潜る前と後じゃお金の羽振りが良いのは潜った後だろう。


「私も冒険者らしき人を見かけたのは数人ぐらいでした。半年でそこまで減ってしまうって割と危機的状況だと思いますよ?」


宿屋の人も冒険者ギルドがあった頃は、冒険者の長期滞在で安定した収入があったけれど冒険者以外の観光客はそれ程多くは無いから経営が厳しい、と愚痴を零していたっけ。


「でも、ギルド長がいけすかない奴だったのよ。私たちの事を『嫁き遅れ』だ『愛人にしてやろうか』だとか会う度に言ってきたのよ?

終いには女だと思って舐めてかかって『ニトは俺たちでもっている街なんだから借地代をタダにしろ。』と言い出したから突っぱねただけだし。」

ケイト様が心底嫌そうな顔をして言った。チラリとカイル・スピッツ商業ギルド長を見れば目が泳いでる。

う~ん、この感じは本当の事っぽいなぁ。


もし冒険者ギルドの建物が今でも空き家となっているなら、冒険者ギルド長の嫌がらせかも知れないな。イケアの冒険者ギルドと合併したと見せかけて、ニトがどんどん衰退していった後に恩を着せるように戻って来て、自分たちの希望を飲ませるつもりとか?


元の話で合併する予定が無かったのなら、イケアの冒険者ギルドと合併して双方にメリットが有ったのか、という疑問があるんだよねぇ。

だって合併した後のギルド長はどっちがなったのか、とかさ。職員全員引き連れて行ったとしたら人が余らない?

冒険者ギルドの人手が足りなくて、とか事業拡大みたいな理由でなら合併も分かるけれど、揉めて借地の契約更新が出来ないってだけで他の街の冒険者ギルドと簡単に合併出来るものなの?


まぁ、そこら辺は想像でしかないけれど、ニトの冒険者ギルド側にも色々と問題は有ったんだろう。お姉様方だけじゃなくて若いスピッツ商業ギルド長も舐められていたのだと思う。


問題のありそうなニトの冒険者ギルドと合併してイケアの冒険者ギルドは上手くいっているのかな。そこんところは私には全く関係ないか。


「それは向こうにも問題があると思いますが、でも冒険者ギルドが無くなった今、広場周辺の力だけではニトは衰退していくだけだと思いますよ?」


広場周辺の屋台も店も一見繁盛しているように見える。確かに人で賑わってはいるし儲かってはいるだろう。


でもあれでは長続きはしないと思う。あの場にいたお客さんは若者たちが大半だった。裕福な家の出の若者も居ただろうけれど、服装を見るに一般家庭で育った若者たちが殆どじゃないかな。


そんな若者たちはニトの街のどこかで働いているのだと思う。だって昨日の夕方のあの時間帯に広場に居たからね。

小さな村ならニト周辺にもいくつかあるらしい。でもニトの街と小さな村だったら、働き口はニトの街の方が断然多いだろうし給金も良いだろう。


けどそれでも若者が毎日通い詰めるにはあの広場周辺の屋台や店は高すぎる。勿論、毎日通っている人はごく一部に過ぎないだろう。でもなら、頻繁に通ってくれる様に誘導している事が多いんじゃないかな。

実際、今日見ただけでも

『アンちゃん、今日も来てくれて嬉しいよ。僕は君に会えると幸せな気分になれるんだ。』

とか

『ジェフっ、私、あなたに会える事を支えに仕事を頑張っているのよ?』


みたいなセリフを彼らが商品の受け渡しやサービスをしている時に何度も言っていたのを聞いていたからね。

本当、屋台販売とは違う商売になっているよねぇ。何か食べたくて買いに行くのじゃなくて会いたくて買いに行ってるって感じだもの。


でもさ、元々裕福な人相手の商売ならいいけれど、そういう人は一握りだろうし普通の若者が通い詰めるには銅貨5枚ってキツいよねぇ。

毎日通って1日銅貨5枚なら、って思うかも知れないけれど銅貨5枚で済む人ばかりじゃなかったからね?何度も並び直している人も割といたんだよ。

元々、屋台の食べ物って小銅貨で買えるイメージがあるし高くても銅貨3枚もしない事が多い。屋台販売自体が平民相手の商売ってのが当たり前な感じなんだよね。お忍びで市場を楽しむ貴族もいるだろうけどさ。

銅貨3~5枚で売れるならそれでいいじゃん、と思うかも知れないけれど、屋台や広場周辺のお店が儲かってもニトの街の利益にどれぐらい繋がるのか、と言えば雀の涙ぐらいじゃない?

だってそれ以外のお店や宿屋はどんどんお客が減っている状況で、税収としてプラスよりもマイナスになっているだろう。

「広場周辺の市場や店だけがニトの街にあるお店って訳ではないでしょう?

冒険者が居る事で賑わっていた街だったなら、冒険者が居なくなった今、どうやって街を盛り立てていくおつもりなのですか?」


「そこはお父様やカイルの腕の見せ所なんじゃないの?」

ちょっと意地悪そうな表情を浮かべるケイト様には、好き勝手やっている理由の一つに父親や弟への意趣返し、というのがあるのかも知れない。


けれどそれは家庭の中だけでやらないといけないんじゃないのかな。街の住人他人を巻き込んでする事じゃないと思う。


「どうせ癒しを求めるとか不当な扱いを受けたとかの不満があるならそういうの全部ひっくるめて見返してやる方向に力を注いだらどうですかね?

商業ギルドの職員をやっているよりも案外楽しい毎日になるかも知れませんよ?」


とりあえずお姉様方ので解消してもらおう。






◆  ここまでお読み下さりありがとうございます。 ◆

 エールの応援をありがとうございました。(๑>◡<๑)




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