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ハドソン領 領都
元侯爵令嬢の話 2
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ロナリー院長にもう一度尋ねる前から、私の話を聞いていたロナリー院長の私に向ける瞳には" 可哀想 "の感情が混じった色に変わっていた事に実は気付いていた。
偶に子どもたちを見ていたあの目だ。
話した内容を聞けば、同情とか可哀想だとか思われても仕方ないとは思うし、そう思ってしまうのが普通だとは思う。話だけならね。
「あの、貴女の話はとても気の毒に思うわ。」
流石に面と向かって『可哀想』と口に出すのは躊躇われたのか、ロナリー院長が絞り出した言葉は『気の毒』だった。
「まぁ、そんな感じですよねぇ。でも今の私は毒親や毒家族と離れられて清々している、というのが本音ですね。」
『気の毒に』と言われたので、この世界には無いだろう言葉だけれど、毒親という言葉を使ってみた。毒繋がりって事で。
「実のお父様を毒親だなんてっ。」
「あぁ、成程。ティアナにとって毒みたいな存在だから、毒親?毒家族?面白い言い回しだな。」
クリスが感心したように言っているけれど、まぁ概ねそんなような意味だね。
毒親って" 毒と比喩されるような、子どもにとって悪影響を及ぼす存在 "とかそんなような意味らしい。
長年、クリスは侯爵家でのティアナの扱いを見てきたから、毒親という表現や言葉の意味が直ぐに理解出来たんだろうね。
「ロナリー院長、実際に私にとっては実の父親でもそういう存在だった、という事なんです。
だって父は実の娘を成人した途端に捨てたんですから。」
私がそう言えば、実の父親を毒親と言った私に、眉を顰めていたロナリー院長はキュッと口を結んだ。
育ちの良さそうなロナリー院長にとっては、例え擁護出来ないような父親だったとしても、" 毒親 "なんていう過激な言葉は受け入れられなかったのかもね。
だけど元父親のした事を考えたら、これ以上は咎める事も出来なかったんだろうなぁ。
「あぁ、勿論、母が亡くなってからの日々は、耐え忍ぶばかりで辛かったですよ。最初の内は父の愛情を求めようとしましたし、義母や義妹とだって仲良くしたかったです。
それでも彼らは私を家族とは認めてはくれなかった。
義妹と婚約者との不貞を見せつけられた時には、流石に気を失うほどのショックで倒れました。彼らは屋敷の応接室で逢瀬を繰り返していたんですよ?
父も義母も屋敷中の使用人も知っていたのでしょう。
義妹と婚約者だけでなく、全ての人に裏切られたショックで気を失った私は、丸一日、目を覚ます事がなかったそうです。
でも、それがきっかけで私は目を覚ましました。
血の繋がった親でも、私を害する者たちにも、搾取され続ける事を、虐げられる事も受け入れる必要はないのだと気付きました。
そうと気付いたら、彼らが成人した私を家から追い出すだろう事にも気付く事が出来ました。
だって既に彼らは義妹と私の婚約者の関係を認めていた訳ですから。
彼らが私を軟禁して死ぬまで自分達の代わりに働かせよう、と考えなかった事だけが私にとっての救いでしょうか。
もしかしたら今頃、そういう使い道があったか、と気付いたかも知れませんが。」
そこまで言ってから、あの元家族がその考えに至らなかった事に今更ながらホッとしつつ、『どうかまだその事に気付きませんように。』と思わず心の中で祈る。
だって、散財が趣味で働く事が嫌いなあの人たちが、お母様の商会を取り上げたところで今まで通りに贅沢に暮らせる訳がない。最後の方では、私にほぼ仕事をやらせていたアーノルドが居たって大した役にも立たないでしょう?
ロバートも茶番劇を繰り広げてた時の様子じゃ役に立たないだろうしねぇ。
使えるお金が無くなって、『そうだ!ティアナを連れ戻して働かせればいいじゃない。』、とか言い出す光景が脳裏に簡単に浮かぶほど、ティアナの扱いは酷かった。
それを思うと、彼らに前世の異世界小説系によくある" ざまぁ "をするべきだったのかなぁ。
でも、あの時はそれをするだけの力も、準備する時間も無かったから仕方ないか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援をいつもありがとうございます。
偶に子どもたちを見ていたあの目だ。
話した内容を聞けば、同情とか可哀想だとか思われても仕方ないとは思うし、そう思ってしまうのが普通だとは思う。話だけならね。
「あの、貴女の話はとても気の毒に思うわ。」
流石に面と向かって『可哀想』と口に出すのは躊躇われたのか、ロナリー院長が絞り出した言葉は『気の毒』だった。
「まぁ、そんな感じですよねぇ。でも今の私は毒親や毒家族と離れられて清々している、というのが本音ですね。」
『気の毒に』と言われたので、この世界には無いだろう言葉だけれど、毒親という言葉を使ってみた。毒繋がりって事で。
「実のお父様を毒親だなんてっ。」
「あぁ、成程。ティアナにとって毒みたいな存在だから、毒親?毒家族?面白い言い回しだな。」
クリスが感心したように言っているけれど、まぁ概ねそんなような意味だね。
毒親って" 毒と比喩されるような、子どもにとって悪影響を及ぼす存在 "とかそんなような意味らしい。
長年、クリスは侯爵家でのティアナの扱いを見てきたから、毒親という表現や言葉の意味が直ぐに理解出来たんだろうね。
「ロナリー院長、実際に私にとっては実の父親でもそういう存在だった、という事なんです。
だって父は実の娘を成人した途端に捨てたんですから。」
私がそう言えば、実の父親を毒親と言った私に、眉を顰めていたロナリー院長はキュッと口を結んだ。
育ちの良さそうなロナリー院長にとっては、例え擁護出来ないような父親だったとしても、" 毒親 "なんていう過激な言葉は受け入れられなかったのかもね。
だけど元父親のした事を考えたら、これ以上は咎める事も出来なかったんだろうなぁ。
「あぁ、勿論、母が亡くなってからの日々は、耐え忍ぶばかりで辛かったですよ。最初の内は父の愛情を求めようとしましたし、義母や義妹とだって仲良くしたかったです。
それでも彼らは私を家族とは認めてはくれなかった。
義妹と婚約者との不貞を見せつけられた時には、流石に気を失うほどのショックで倒れました。彼らは屋敷の応接室で逢瀬を繰り返していたんですよ?
父も義母も屋敷中の使用人も知っていたのでしょう。
義妹と婚約者だけでなく、全ての人に裏切られたショックで気を失った私は、丸一日、目を覚ます事がなかったそうです。
でも、それがきっかけで私は目を覚ましました。
血の繋がった親でも、私を害する者たちにも、搾取され続ける事を、虐げられる事も受け入れる必要はないのだと気付きました。
そうと気付いたら、彼らが成人した私を家から追い出すだろう事にも気付く事が出来ました。
だって既に彼らは義妹と私の婚約者の関係を認めていた訳ですから。
彼らが私を軟禁して死ぬまで自分達の代わりに働かせよう、と考えなかった事だけが私にとっての救いでしょうか。
もしかしたら今頃、そういう使い道があったか、と気付いたかも知れませんが。」
そこまで言ってから、あの元家族がその考えに至らなかった事に今更ながらホッとしつつ、『どうかまだその事に気付きませんように。』と思わず心の中で祈る。
だって、散財が趣味で働く事が嫌いなあの人たちが、お母様の商会を取り上げたところで今まで通りに贅沢に暮らせる訳がない。最後の方では、私にほぼ仕事をやらせていたアーノルドが居たって大した役にも立たないでしょう?
ロバートも茶番劇を繰り広げてた時の様子じゃ役に立たないだろうしねぇ。
使えるお金が無くなって、『そうだ!ティアナを連れ戻して働かせればいいじゃない。』、とか言い出す光景が脳裏に簡単に浮かぶほど、ティアナの扱いは酷かった。
それを思うと、彼らに前世の異世界小説系によくある" ざまぁ "をするべきだったのかなぁ。
でも、あの時はそれをするだけの力も、準備する時間も無かったから仕方ないか。
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
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