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聖女ミーシェ 3
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聖魔法を持っている事で聖女に選ばれた者たちの中には、治癒の力を持つ聖女もいた。
しかし大神殿では平民だけでなく貴族にさえ、聖女が治癒の力を使う事を認めてはいない。
それには微々たる治癒の力しか持たない聖女たちの、聖女としての評価を下げたくない神殿側の思惑があった。
聖女たちの治癒の力は弱く、痛みをほんの少し柔げる程度の効果しかなかったからだ。今ではその程度の治癒の力さえ持たぬ聖女が殆どだった。
大神殿の中で、聖女でありながらも聖女の扱いを受けていなかったミーシェが、治癒の力を持っている事を知っている者はいない。
聖女たちには治癒の力を必要とする場など無かったのだから当然のことだ。
大神殿で祈りを捧げ、言祝ぎ草を育てる事以外、何も望まれていないどころか、他の聖女たちから疎まれる存在だったミーシェが、治癒の力をひけらかす事などある筈もない。
だが今、直接治癒を施されたウィルはミーシェの力を知り、ミーシェが本当の言祝ぎの聖女だと確信していた。それだけでなくミーシェはマハークベ神の愛し子の可能性もある事に気付かされた。
ミーシェには平気な振りをしていたが、ウィルの右腕は出血しているだけでなく完全に骨が折れた状態だった。
それがミーシェが祈るように何かを呟きウィルの腕にそっと触れた途端に、痛みだけでなく折れた筈の腕が元通りになったのだ。
事実、ダラリと腕を下げていただけの右腕は、今はもう普段通りに腕を上げる事が出来る。
その事に治療したミーシェは気付いていない。
「ミーシェ様、追手が私たちの死を確認しに来る可能性もあります。早くこの場を立ち去った方が良いでしょう。
先ずはこの森を抜け、私の祖国ガーネシアを目指しませんか?」
外の世界を知らないミーシェにとって、ウィルの申し出は有り難かった。だが追われる身のミーシェにはウィルと行動を共にし続ける訳にはいかないのだ。
「ウィル様。罪人となった私を助けて頂きありがとうございました。ですが、追われるのは私一人です。
何の罪もないウィル様は、私から離れた方が良いと思うのです」
冤罪とはいえミーシェは罪人であり、何よりその所為で彼はミーシェの巻き添えで殺されかけたのだ。
ミーシェを殺したと思っている聖騎士団の所へとウィル戻る訳にもいかないだろう。だからといって森を抜けた後も、彼がミーシェと行動を共にする必要など無いのだ。
彼自身には何の咎も無いのに聖騎士を辞めざるを得なくなったのだ。ミーシェは何度謝罪しても足りないのに、これ以上迷惑を掛けてはいけない。
「私はこうなる事を予測していたのに、ミーシェ様をこの様な危険な目に遭わせてしまいました。
先の事は一先ず置いておいて、この森を抜け、せめて人が住む場所まではご一緒させて下さい」
ウィルの真摯な言葉にミーシェは考える。確かに今は何処とは知れない森の中。
非力で体力もないミーシェがウィルに恩を返す機会などありはしないだろう。
人が住む場所まで出れたなら、ミーシェにも何か出来る事があるのかもしれない。せめて少しでも身を挺してミーシェを助けてくれた彼に恩を返したい。
既にお釣りが出るほど恩を返している事に気付いていないミーシェは、ウィルの申し出を受ける事にした。
「ウィル様。私は聖女の資格を剥奪され、罪人となったただの平民です。
どうか、様など付けずにミーシェと呼び捨てで構いません」
日頃、ミーシェ様と呼ばれる事もなく、ミーシェ様と呼んでくれるのは、ウィルただ一人であった。しかし罪人となった今ではミーシェ様と呼ばれるのは分不相応だ。
「そうですか。それではミーシェと呼ばせて頂きましょう。ですが私の事も様など付けずにウィルとお呼び下さい。
ミーシェ、それでは先を急ぎましょう。日が暮れるまでに今日の寝床を探さなくてはなりません」
ウィルはミーシェが自分の事を罪人だと告げた言葉には反応せずに、ニコリと微笑んでミーシェの名を呼んだ。
ウィルの言い方は、呼び捨てであっても優しい響きに聞こえるのは気のせいだろうか。
そのような声で呼ばれたことの無いミーシェは、ほんの少し胸が暖かいなったような心持ちになり、素直に嬉しいと思った。
それからミーシェとウィルの二人は森の中へと足を踏み入れた。
隣国シーヴァへと向かう道の何処かの崖から落ち、川に流された為、森を抜けるにしても何処を目指して歩けば良いのか分からない。
だが言祝ぎ草が一本の道のように連なって咲いているのに気が付いて、ウィルは隣に立つミーシェを見る。
二人の目の前に咲く言祝ぎ草を見たミーシェは、選定の儀が行われた日の事が頭に浮かぶ。
私が育てた言祝ぎ草の鉢の前で、祈りを捧げた時に感じた不思議な力を目の前の言祝ぎ草にも感じるのは気のせい?
だけど何故だか言祝ぎ草の道の先で、マハークベ神様が待っていて下さるように感じて、ミーシェは無意識に言祝ぎ草が咲くその先へと歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
しかし大神殿では平民だけでなく貴族にさえ、聖女が治癒の力を使う事を認めてはいない。
それには微々たる治癒の力しか持たない聖女たちの、聖女としての評価を下げたくない神殿側の思惑があった。
聖女たちの治癒の力は弱く、痛みをほんの少し柔げる程度の効果しかなかったからだ。今ではその程度の治癒の力さえ持たぬ聖女が殆どだった。
大神殿の中で、聖女でありながらも聖女の扱いを受けていなかったミーシェが、治癒の力を持っている事を知っている者はいない。
聖女たちには治癒の力を必要とする場など無かったのだから当然のことだ。
大神殿で祈りを捧げ、言祝ぎ草を育てる事以外、何も望まれていないどころか、他の聖女たちから疎まれる存在だったミーシェが、治癒の力をひけらかす事などある筈もない。
だが今、直接治癒を施されたウィルはミーシェの力を知り、ミーシェが本当の言祝ぎの聖女だと確信していた。それだけでなくミーシェはマハークベ神の愛し子の可能性もある事に気付かされた。
ミーシェには平気な振りをしていたが、ウィルの右腕は出血しているだけでなく完全に骨が折れた状態だった。
それがミーシェが祈るように何かを呟きウィルの腕にそっと触れた途端に、痛みだけでなく折れた筈の腕が元通りになったのだ。
事実、ダラリと腕を下げていただけの右腕は、今はもう普段通りに腕を上げる事が出来る。
その事に治療したミーシェは気付いていない。
「ミーシェ様、追手が私たちの死を確認しに来る可能性もあります。早くこの場を立ち去った方が良いでしょう。
先ずはこの森を抜け、私の祖国ガーネシアを目指しませんか?」
外の世界を知らないミーシェにとって、ウィルの申し出は有り難かった。だが追われる身のミーシェにはウィルと行動を共にし続ける訳にはいかないのだ。
「ウィル様。罪人となった私を助けて頂きありがとうございました。ですが、追われるのは私一人です。
何の罪もないウィル様は、私から離れた方が良いと思うのです」
冤罪とはいえミーシェは罪人であり、何よりその所為で彼はミーシェの巻き添えで殺されかけたのだ。
ミーシェを殺したと思っている聖騎士団の所へとウィル戻る訳にもいかないだろう。だからといって森を抜けた後も、彼がミーシェと行動を共にする必要など無いのだ。
彼自身には何の咎も無いのに聖騎士を辞めざるを得なくなったのだ。ミーシェは何度謝罪しても足りないのに、これ以上迷惑を掛けてはいけない。
「私はこうなる事を予測していたのに、ミーシェ様をこの様な危険な目に遭わせてしまいました。
先の事は一先ず置いておいて、この森を抜け、せめて人が住む場所まではご一緒させて下さい」
ウィルの真摯な言葉にミーシェは考える。確かに今は何処とは知れない森の中。
非力で体力もないミーシェがウィルに恩を返す機会などありはしないだろう。
人が住む場所まで出れたなら、ミーシェにも何か出来る事があるのかもしれない。せめて少しでも身を挺してミーシェを助けてくれた彼に恩を返したい。
既にお釣りが出るほど恩を返している事に気付いていないミーシェは、ウィルの申し出を受ける事にした。
「ウィル様。私は聖女の資格を剥奪され、罪人となったただの平民です。
どうか、様など付けずにミーシェと呼び捨てで構いません」
日頃、ミーシェ様と呼ばれる事もなく、ミーシェ様と呼んでくれるのは、ウィルただ一人であった。しかし罪人となった今ではミーシェ様と呼ばれるのは分不相応だ。
「そうですか。それではミーシェと呼ばせて頂きましょう。ですが私の事も様など付けずにウィルとお呼び下さい。
ミーシェ、それでは先を急ぎましょう。日が暮れるまでに今日の寝床を探さなくてはなりません」
ウィルはミーシェが自分の事を罪人だと告げた言葉には反応せずに、ニコリと微笑んでミーシェの名を呼んだ。
ウィルの言い方は、呼び捨てであっても優しい響きに聞こえるのは気のせいだろうか。
そのような声で呼ばれたことの無いミーシェは、ほんの少し胸が暖かいなったような心持ちになり、素直に嬉しいと思った。
それからミーシェとウィルの二人は森の中へと足を踏み入れた。
隣国シーヴァへと向かう道の何処かの崖から落ち、川に流された為、森を抜けるにしても何処を目指して歩けば良いのか分からない。
だが言祝ぎ草が一本の道のように連なって咲いているのに気が付いて、ウィルは隣に立つミーシェを見る。
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私が育てた言祝ぎ草の鉢の前で、祈りを捧げた時に感じた不思議な力を目の前の言祝ぎ草にも感じるのは気のせい?
だけど何故だか言祝ぎ草の道の先で、マハークベ神様が待っていて下さるように感じて、ミーシェは無意識に言祝ぎ草が咲くその先へと歩き始めた。
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