あなたに婚約破棄する事は出来ません

レイチェルの章

親子の決断

レイチェルは父親に呼ばれ、書斎に入った。
厳しい顔の父に紙の束を渡された。

「レイチェル　あまり気分のいいものではないが、お前は知っておく権利がある　読むか読まないかは自分で決めなさい」

その言葉で、ここに書かれている事の想像はついた。
ただ、想像するのと、しっかり事実を突きつけられるのでは、ダメージの大きさは雲泥の差だろう。

「確かに、これを読むのは気分のいいものではないのでしょう
でも、ハッキリさせないと私はこの先に進めない気がします」

「そうか…」

私はゆっくり紙をめくった。

内容は思った以上にひどかった。
この３ヶ月こんな非常識で勝手な事をしつつ、まるで私が悪いように言葉を重ねていたのね。

せめて正直に好きな人が出来たから婚約解消をしてほしいと言うことは出来なかったのだろうか？

それなら、女神様の意向は別にしても協力はしてあげたのに…

幼い頃から好きだと思ったことはなかった。
むしろいつも迷惑をかけられた。
このまま２人で生きていく未来なんて想像する事さえ困難な程、お高いを理解していなかった。

私は女神様の存在や力を疑った事はない。
だけどなぜこんなにも合わない２人の婚約をお許しになったのだろう。

これは、女神様からの試練なのでしょうか？

私が報告書を読み終わり、考え込んでいるとお父様に声を掛けられました。

「報告書にもあったと思うが噂が広がるのも時間の問題だ。
少しでも早く婚約破棄をしないと我々もこのスキャンダルに巻き込まれる」

「そうですね、早速教会に相談しに行きましょう」

私は立ち上がり外出の支度をするために部屋にもどった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「なぁ、リネット。　君は本当に殿下と婚約出来ると思っているの？」

「当たり前でしょ？　私達は愛し合っているんだから」

「君はこの国に来てまだ間もないから、女神様の事はしらないのか？」

「女神様？　ああ　なんだか偉そうにこの国の人の婚姻を決めてる女神よね？」

「この国では女神様の承認がないと結婚は認めてもらえない可能性があるんだよ」

「でも、教会の女神様より、国王の方が偉いんでしょ？
王様だって、息子が好きな人と一緒になれる方がいいと思うわよ」

「ふーん、でも殿下だって自分だけを好きな女のがいいと思うんじゃないかな？」

「えー　だって夫になる人と恋人は別じゃない。
私はあなたも好きなんだもん」

そう言って、リネットはアンソニー・ブライトに抱きついた。

「それは君だけの考えだろ？
殿下が知ったら、怒ると思うな～」

「あなたが言わなければ、知られる事はないんじゃない？」

「自分の身が危ないのに、言うわけないだろ」

そう言ってアンソニーはリネットの腰に手を回す。