あなたに婚約破棄する事は出来ません

レイチェルの章

証明書

祭られている女神像の前に専用の台と飾り箱が置かれています。
そのなかに用紙を入れて、長いと一晩、短いと数時間で結果が出るらしい。
時間が決まっていないなら、
文字の色が変わる物は直ぐわかるけど、変わらない物はいつ諦めるのだろう？

そう思って見ていると、大司教様が
「女神様がお認めにならない場合は紙の色自体がくすんできますので、分かります」

そうおっしゃいました。

なるほど、そうだよね
一緒になりたい２人が認めてもらえなかったら、諦められずいつまでも待ってしまうだろう。

女神様が何を基準にしてどのように決めているのか、分からないけど、どうか私をお救い下さい。
私はそう願いながら、膝をついてお祈りを始めました。



しばらくすると、
「おお」
と大司教様の声が聞こえました。

「なんと　こんなに早く結果が出たのは初めてですよ」

「ありがとうございます。
女神様ありがとうございます」
お父様がお礼を言っている。

私は立ち上がり飾り箱を覗きました

すると、私の名前が赤くなっていました。

あれ？
ニコラス様の名前は黒いまま…　
なんで？

「この場合、レイチェル様の正当性が証明され、アッシュベリー公爵家からの破棄が認められた事になります」

「この内容を清書して、今証明書を作りますのでお待ちください」

大司教様が直々に証明書を３通作って下さいました。

３通のうち１通は教会から、国の機関に送られ、残りの２通は両家に渡されます。

「これから、陛下の所へ行って証明書を渡し報告してくるよ」
とお父様がいいました。

お父様はこれから、陛下に婚約解消ではなく婚約破棄をした事を突きつける気です。

そして、あの報告書も渡されるのでしょう
陛下はこの結果をどう受け止めるのでしょう

先ほど大司教様が言った言葉が思い出されます。

「今回の結果をみると、レイチェル様が婚約解消の申し出をしても、レイチェル様の名前だけ赤くなったのでしょうね…」

最初何が違うのかと思ったのですが解消を申請しても、片方だけ名前が変わるとそれは破棄と見なされるらしいのです。

それは、相手の力に坑がえず破棄を許されない立場の人を救う女神様の気遣いなのだと、大司教様が言いました。

「それだけに、お互い合意の破棄だとしてもどちらかにまったく非がない場合は片方のみ赤くなるんですよ
これは証明書にも、きっちり記載されますので、レイチェル様には全く落ち度がないと言う証明にもなりますよ」

と証明書を書き終えて言ってくれました。