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思ったよりも早く準備が整ったようだ。
それだけラシェルの成長速度が早いということで早くこの場から去らなければと焦っているだけで全く行動に移せていない私とは大違いだ。
そこもラシェルと私の違いのひとつで、何もかもが正反対の彼女が羨ましく感じる。
「………指輪ですか。ついにナマンさんもご結婚される気になったのですね」
今まで立場上、敵も多く仕事が忙しかったこともあり、恋愛はおろか婚約者だっていなかったというのに、この短期間で心の距離を縮めた存在が出来たということ。
今回の発表兼御披露目会はそういう意味も含めてのものかもしれない。
「やっとね。いやぁ、長かったね」
「ナマンさんお忙しいですから」
「だとしても、だよ」
長年付き合ってきたウェリアムでさえ、そう思っているだから周りの皆も同じ思いだろう。
彼の家族はきっと早く結婚して子供を作り、時期当主をと思っているに違いない。
あぁ、聖女としての立場はおろか、伴侶というその位置すら立つことが出来なかった。
もう痛み続ける胸から血が溢れ出しているかのようだ。
せめて、最後に任されたそれだけはしっかりとこなし役目を終えたい。
「お仕事のこと、お引き受けいたします。指輪も無事届けますのでご安心ください」
「ありがとね、助かるよ。あ、ちゃんと夕方前には帰ってくること、分かったかい?」
「大丈夫です。午前中の仕事終わり次第、すぐに向かいますので早めに戻れると思います」
「それなら良かった。指輪はちゃんとナマンに直接渡してね。式の最中で声かけにくかったら私やヨアンに声かけてくれればナマンだけ出られるように調整するから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
本当はウェリアムもヨアンもいないなんて失踪するチャンスなのだが、指輪がなければ2人とも困るだろうし、居なくなるにしても迷惑をかけてまで去りたいわけではない。
去るにしても最低限の手順は踏みたいと思っているのだ。
「ロマーヌちゃん」
急に私の名前を呼び、足を止めたウェリアムは片手で魔物の退治しながら切れ長の目を細めながら言った。
「絶対に帰ってきてね」
一瞬、私が出ていこうと思案していることがバレたのかと思ったが、流石に行動に移せていない現状から分かるはずがないかと頭を振った。
「帰りますよ。他に帰る場所ないですし」
「ならいいんだけどさ、ひとり、帰りを首をながーくして待ってる奴がいるからさ」
そんな人、何処にいるというのか。
きっと、明日会場にいる人たちで私がその場にいないことに気付く人など誰ひとりいない。
過去の聖女の存在など、頭の中から消え去っているのだ。
「架空人物を作り出さないでください」
「いるんだなーそれが」
ニコニコと胡散臭い笑顔をまた浮かべ、歩みを進めるウェリアムの後をついて歩く。
そんな人が本当にいたとして、それは彼ではないのだろうと思うと息がしにくくなった。
そして翌日を迎え私は通常より早く動き出し、毎朝のルーチンを終え午前中の仕事を前倒しで終わらせた後、周りを見る間もなく隣町へと足を進めた。
それだけラシェルの成長速度が早いということで早くこの場から去らなければと焦っているだけで全く行動に移せていない私とは大違いだ。
そこもラシェルと私の違いのひとつで、何もかもが正反対の彼女が羨ましく感じる。
「………指輪ですか。ついにナマンさんもご結婚される気になったのですね」
今まで立場上、敵も多く仕事が忙しかったこともあり、恋愛はおろか婚約者だっていなかったというのに、この短期間で心の距離を縮めた存在が出来たということ。
今回の発表兼御披露目会はそういう意味も含めてのものかもしれない。
「やっとね。いやぁ、長かったね」
「ナマンさんお忙しいですから」
「だとしても、だよ」
長年付き合ってきたウェリアムでさえ、そう思っているだから周りの皆も同じ思いだろう。
彼の家族はきっと早く結婚して子供を作り、時期当主をと思っているに違いない。
あぁ、聖女としての立場はおろか、伴侶というその位置すら立つことが出来なかった。
もう痛み続ける胸から血が溢れ出しているかのようだ。
せめて、最後に任されたそれだけはしっかりとこなし役目を終えたい。
「お仕事のこと、お引き受けいたします。指輪も無事届けますのでご安心ください」
「ありがとね、助かるよ。あ、ちゃんと夕方前には帰ってくること、分かったかい?」
「大丈夫です。午前中の仕事終わり次第、すぐに向かいますので早めに戻れると思います」
「それなら良かった。指輪はちゃんとナマンに直接渡してね。式の最中で声かけにくかったら私やヨアンに声かけてくれればナマンだけ出られるように調整するから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
本当はウェリアムもヨアンもいないなんて失踪するチャンスなのだが、指輪がなければ2人とも困るだろうし、居なくなるにしても迷惑をかけてまで去りたいわけではない。
去るにしても最低限の手順は踏みたいと思っているのだ。
「ロマーヌちゃん」
急に私の名前を呼び、足を止めたウェリアムは片手で魔物の退治しながら切れ長の目を細めながら言った。
「絶対に帰ってきてね」
一瞬、私が出ていこうと思案していることがバレたのかと思ったが、流石に行動に移せていない現状から分かるはずがないかと頭を振った。
「帰りますよ。他に帰る場所ないですし」
「ならいいんだけどさ、ひとり、帰りを首をながーくして待ってる奴がいるからさ」
そんな人、何処にいるというのか。
きっと、明日会場にいる人たちで私がその場にいないことに気付く人など誰ひとりいない。
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「架空人物を作り出さないでください」
「いるんだなーそれが」
ニコニコと胡散臭い笑顔をまた浮かべ、歩みを進めるウェリアムの後をついて歩く。
そんな人が本当にいたとして、それは彼ではないのだろうと思うと息がしにくくなった。
そして翌日を迎え私は通常より早く動き出し、毎朝のルーチンを終え午前中の仕事を前倒しで終わらせた後、周りを見る間もなく隣町へと足を進めた。
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