10 / 10
10
しおりを挟む
この先、一体何を見せられるのだろうか。
ラシェルとの婚約発表?指輪交換?誓いのキス?どれも見たくない。
なのにナマンはそれを私に見せようとしており、ウェリアムは私を逃がそうとしない。
私の味方なんて、何処にもいないのだ、と思い目を強く閉じると視界がいっきり明るくなった。
スポットライト全てが集められているような眩しさも感じていると、それを遮るようにナマンは目の前に立った。
「皆様、大変お待たせいたしました」
そして会場内に響き渡るほど大きな声でそう言い、私の手を握る手に力が込められた。
「先程、聖女 ラシェルのことを発表いたしましたが、もうひとつ皆様にお伝えしたいことがあります。その前に『永遠の幸せを得られる指輪』のことをご存知ですか?『キュリー』家と『クリスタ』家が結婚する際に使用する指輪で、愛し合う2人にしか嵌めることが出来ないとされているものです。それが今、こちらにあります」
ケースを片手で開け、それを皆に見えるよう掲げ、皆が宝石の輝きに言葉を失っているようだった。
私は指輪のことよりもナマンの言った『キュリー』家と『クリスタ』家が結婚する際にという言葉に疑問を持った。
『キュリー』家とはナマンの一族を差し、『クリスタ』家は私の父方のファミリーネームで、私をナマンに託した一族でもあるらしい。
その一族同士が結婚をする際に使ったと言っていたが、ラシェルは『クリスタ』家の人間ではないはず。
それなのに何故その指輪をラシェルに渡そうとするのか意味が分からなかった。
「この指輪は花嫁が自らの手で指輪を入手し、花婿へ手渡し、花婿が花嫁の手に指輪を嵌め、最後に花嫁が花婿へ指輪を嵌めることが出来たら2人の愛が成立するのです」
つまり、この指輪は本来、ラシェルが教会へ行き指輪を受け取りナマンに指輪を届けるのが正しい流れだということなのだろうが、ラシェルがやるべきことを全て私がやってるのはどうなんだ。
一族も違い流れも違うのはナマンの口癖である『そんなこと知ったこっちゃない』ってやつだろうか。
それともそんな古くからのルールなんて知らないね!僕は僕が決めたやり方でしかやらないから!ってやつだろうか。
「説明は以上にして、ここまで頑張って指輪を運んできた僕の花嫁様に皆様の前で指輪を嵌めて貰おうと思います」
その一言に会場が一気にざわめき始めた。
今まで一度もそういった噂も出たことがなかったから皆驚いてるな、と呑気に会場を見ようとしたらナマンに強引に手を引かれ、ナマンの横に立たされた。
「ちょっ」
何するんですか、と抗議の言葉を口にしようと口を開けようとしたら何故かナマンは私の前で跪き、指輪の入ったケースを私に向けてきた。
「ロマーヌ、僕と結婚してくれませんか?」
「は?」
幻聴か?いや?幻覚も見えてるのか?と思うも目の前には神々しいほど美しい笑みを浮かべながら、私の手を力強く握り締めてくる。
それが夢ではないと伝えてくる。
「……私、ラシェルじゃないですよ?」
「ラシェル?何でここでラシェルが出てくるのさ。僕はロマーヌに結婚を申し込んでるんだけど?」
整った顔を僻めるナマンの姿に私は視線を反らした。
「ナマンさんはラシェルのことが好きなんじゃないんですか?あんなにベタ褒めしてましたよね?」
「あーそういうことね」
あちゃ、と言いながら俯いてしまったナマンの姿に背後にいたウェリアムの笑い声が聞こえてくる。
「それ全く違うから。ラシェルは確かに最高な子だけど、それはロマーヌの後継者として最高で適した逸材って意味で褒めてただけだから」
「後継者?」
「うん。ロマーヌにはいつまでも『みんなの聖女様』でいて欲しくなかったの。早く僕だけのロマーヌになって欲しかったの!だから、各地で後継者を探してた所にラシェルを見つけて喜んでたの!わかった?!」
そんな、まさか、と震える口でそう呟けば、ウェリアムがだから架空人物ね、と笑いながらひとり納得しているようだった。
「もう!分からなくてもいいから指輪を嵌めてみてよ。嘘なら嵌められないから」
そこ笑わない!とウェリアムに半ば叫ぶように言いながらナマンは私に左手を差し出してきた。
ナマンの言葉を疑いたくはないが、本当に嵌めて良いのか戸惑う。
だって、こんな夢のようなことがあって良いのだろうか。
この綺麗な指に私が指輪を嵌めて良いのだろうか。
「あ、そうだ。僕が嵌めて貰う前に僕が嵌めないとだ。ロマーヌ左手出して」
みっともなく震え彷徨っていた左手を掴まれ、左手の薬指にそれは嵌められた。
サイズが合わないのではと思ったのだが、指輪がサイズに合わせて変動するようで嵌められた瞬間にフィットした。
「はい、次僕ね」
ホッとした様子のナマンに、あぁ、指輪が嵌められたことで私の気持ちが伝わったのだなと悟った。
これでナマンの指輪が嵌められれば、お互いに愛し合っているということを示し、永遠の幸せを得ることが出来るということ。
「ナマンさん」
「ん?」
何処か緊張した面持ちに見えるナマンに私は傷で痛む顔を弛め、彼の指輪を嵌めた。
「私で良ければよろしくお願いします」
指輪は砕け散らなかった。
そして会場内で拍手が響き渡り、その音と同じくらいナマンの喜びの声が響き渡ったのだった。
その彼の表情は出会った中で一度も見たことがないくらい幸せそうな顔だった。
終わり
ここまでお付き合いいただきました皆様へ深く感謝申し上げます。
完結致しましたのも皆様のおかげです。
主人公を変えて同じ設定の物語を書くかもしれません。
その際はまたお付き合いいただけますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
ラシェルとの婚約発表?指輪交換?誓いのキス?どれも見たくない。
なのにナマンはそれを私に見せようとしており、ウェリアムは私を逃がそうとしない。
私の味方なんて、何処にもいないのだ、と思い目を強く閉じると視界がいっきり明るくなった。
スポットライト全てが集められているような眩しさも感じていると、それを遮るようにナマンは目の前に立った。
「皆様、大変お待たせいたしました」
そして会場内に響き渡るほど大きな声でそう言い、私の手を握る手に力が込められた。
「先程、聖女 ラシェルのことを発表いたしましたが、もうひとつ皆様にお伝えしたいことがあります。その前に『永遠の幸せを得られる指輪』のことをご存知ですか?『キュリー』家と『クリスタ』家が結婚する際に使用する指輪で、愛し合う2人にしか嵌めることが出来ないとされているものです。それが今、こちらにあります」
ケースを片手で開け、それを皆に見えるよう掲げ、皆が宝石の輝きに言葉を失っているようだった。
私は指輪のことよりもナマンの言った『キュリー』家と『クリスタ』家が結婚する際にという言葉に疑問を持った。
『キュリー』家とはナマンの一族を差し、『クリスタ』家は私の父方のファミリーネームで、私をナマンに託した一族でもあるらしい。
その一族同士が結婚をする際に使ったと言っていたが、ラシェルは『クリスタ』家の人間ではないはず。
それなのに何故その指輪をラシェルに渡そうとするのか意味が分からなかった。
「この指輪は花嫁が自らの手で指輪を入手し、花婿へ手渡し、花婿が花嫁の手に指輪を嵌め、最後に花嫁が花婿へ指輪を嵌めることが出来たら2人の愛が成立するのです」
つまり、この指輪は本来、ラシェルが教会へ行き指輪を受け取りナマンに指輪を届けるのが正しい流れだということなのだろうが、ラシェルがやるべきことを全て私がやってるのはどうなんだ。
一族も違い流れも違うのはナマンの口癖である『そんなこと知ったこっちゃない』ってやつだろうか。
それともそんな古くからのルールなんて知らないね!僕は僕が決めたやり方でしかやらないから!ってやつだろうか。
「説明は以上にして、ここまで頑張って指輪を運んできた僕の花嫁様に皆様の前で指輪を嵌めて貰おうと思います」
その一言に会場が一気にざわめき始めた。
今まで一度もそういった噂も出たことがなかったから皆驚いてるな、と呑気に会場を見ようとしたらナマンに強引に手を引かれ、ナマンの横に立たされた。
「ちょっ」
何するんですか、と抗議の言葉を口にしようと口を開けようとしたら何故かナマンは私の前で跪き、指輪の入ったケースを私に向けてきた。
「ロマーヌ、僕と結婚してくれませんか?」
「は?」
幻聴か?いや?幻覚も見えてるのか?と思うも目の前には神々しいほど美しい笑みを浮かべながら、私の手を力強く握り締めてくる。
それが夢ではないと伝えてくる。
「……私、ラシェルじゃないですよ?」
「ラシェル?何でここでラシェルが出てくるのさ。僕はロマーヌに結婚を申し込んでるんだけど?」
整った顔を僻めるナマンの姿に私は視線を反らした。
「ナマンさんはラシェルのことが好きなんじゃないんですか?あんなにベタ褒めしてましたよね?」
「あーそういうことね」
あちゃ、と言いながら俯いてしまったナマンの姿に背後にいたウェリアムの笑い声が聞こえてくる。
「それ全く違うから。ラシェルは確かに最高な子だけど、それはロマーヌの後継者として最高で適した逸材って意味で褒めてただけだから」
「後継者?」
「うん。ロマーヌにはいつまでも『みんなの聖女様』でいて欲しくなかったの。早く僕だけのロマーヌになって欲しかったの!だから、各地で後継者を探してた所にラシェルを見つけて喜んでたの!わかった?!」
そんな、まさか、と震える口でそう呟けば、ウェリアムがだから架空人物ね、と笑いながらひとり納得しているようだった。
「もう!分からなくてもいいから指輪を嵌めてみてよ。嘘なら嵌められないから」
そこ笑わない!とウェリアムに半ば叫ぶように言いながらナマンは私に左手を差し出してきた。
ナマンの言葉を疑いたくはないが、本当に嵌めて良いのか戸惑う。
だって、こんな夢のようなことがあって良いのだろうか。
この綺麗な指に私が指輪を嵌めて良いのだろうか。
「あ、そうだ。僕が嵌めて貰う前に僕が嵌めないとだ。ロマーヌ左手出して」
みっともなく震え彷徨っていた左手を掴まれ、左手の薬指にそれは嵌められた。
サイズが合わないのではと思ったのだが、指輪がサイズに合わせて変動するようで嵌められた瞬間にフィットした。
「はい、次僕ね」
ホッとした様子のナマンに、あぁ、指輪が嵌められたことで私の気持ちが伝わったのだなと悟った。
これでナマンの指輪が嵌められれば、お互いに愛し合っているということを示し、永遠の幸せを得ることが出来るということ。
「ナマンさん」
「ん?」
何処か緊張した面持ちに見えるナマンに私は傷で痛む顔を弛め、彼の指輪を嵌めた。
「私で良ければよろしくお願いします」
指輪は砕け散らなかった。
そして会場内で拍手が響き渡り、その音と同じくらいナマンの喜びの声が響き渡ったのだった。
その彼の表情は出会った中で一度も見たことがないくらい幸せそうな顔だった。
終わり
ここまでお付き合いいただきました皆様へ深く感謝申し上げます。
完結致しましたのも皆様のおかげです。
主人公を変えて同じ設定の物語を書くかもしれません。
その際はまたお付き合いいただけますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
307
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました
おりの まるる
恋愛
カーネリアは、大好きな魔法師団の副師団長であるリオンへ告白すること2回、元カノが忘れられないと振られること2回、玉砕覚悟で3回目の告白をした。
3回目の告白の返事は「友達としてなら付き合ってもいい」と言われ3年の月日を過ごした。
もう付き合うとかできないかもと諦めかけた時、ついに付き合うことがてきるように。
喜んだのもつかの間、初めてのデートで、彼を以前捨てた恋人アイオラが再びリオンの前に訪れて……。
大好きな彼の幸せを願って、身を引こうとするのだが。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結】嘘が匂いますね、公爵様〜愛を騙る夫の後悔〜
終日ひもの干す紐
恋愛
一目惚れ──その言葉に偽りはないのに、彼の愛の囁きは嘘に塗れている。
貧乏伯爵家の娘ウィステルのもとへ、突然縁談が舞い込む。
相手はキャスバート公爵家当主フィセリオ。彼は婚姻を条件に援助を申し出る。
「一目惚れとはいえ、私はウィステル嬢を心から愛している。必ず大切にすると、キャスバートの名に誓いましょう」
けれど、ウィステルには『嘘を匂いで感じ取る』秘密の力があった。
あまりにもフィセリオに得のない縁談。愛もなく、真意は謎に包まれたまま、互いに秘密を抱えて時間を重ねる。全ては信頼される妻になるために。
甘い嘘で“妻を愛する夫”を演じきる公爵と、夫の嘘を見抜き、共犯者になると決めた令嬢の恋愛物語。
* * *
※主人公ウィステル以外の視点の話は【】にそのキャラを表記しています。同じ話の別視点ではなく、基本的に物語は進行していきます。
他のサイトでも投稿しています。
幼馴染と結婚したけれど幸せじゃありません。逃げてもいいですか?
鍋
恋愛
私の夫オーウェンは勇者。
おとぎ話のような話だけれど、この世界にある日突然魔王が現れた。
予言者のお告げにより勇者として、パン屋の息子オーウェンが魔王討伐の旅に出た。
幾多の苦難を乗り越え、魔王討伐を果たした勇者オーウェンは生まれ育った国へ帰ってきて、幼馴染の私と結婚をした。
それは夢のようなハッピーエンド。
世間の人たちから見れば、私は幸せな花嫁だった。
けれど、私は幸せだと思えず、結婚生活の中で孤独を募らせていって……?
※ゆるゆる設定のご都合主義です。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる