見知らぬ君に触れられない

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社長がファーベルに説明をしている間、自分の呼吸が浅くなっていることに気付き、受話器を身体から離し深呼吸を繰り返した。
電話越しでこれでは直接会ったらどうなるか考えたくもない。


「ふーん、『イザベル』ね」


おい、聞きたいのはそこじゃないんだよ。
依頼を受けるか受けないかが重要なんだっての。


「こちらとしては前向きな返答をお願いしたが、どうだ？」


「そうですね...能力関係なさそうですし、うちの事務所的にはNGですが、能力関係なしの何でも屋からですからね」


社長が仰っていた関係性というのは、能力と無関係の所で厄介事が起こると何でも屋に相談が来るケースがよくあるため、今の関係性を崩したくないというところか。
それはこちらも同じで、能力と無関係だと思っていた依頼が実は能力が関係していたというパターンも十分あるわけで、そういったときはムーン探偵事務所に相談を持ち込むケースもある。
勿論、組織へ話を持ち込むこともあるが。


「分かりました、引き受けましょう。ただ、2人で会うのはリスクが非常に高いのでイザベルさんが同席してくださるなら、っていうのはいかがでしょう？」


そう来たか。
確かにあの人と2人きりにさせるのはリスクが高いだろうが、ファーベルなら自分のことくらい守れるだろう。
元とはいえ組織の人間なのだから。