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「ミア・ウィルソン!本日をもって婚約破棄する!」


目の前には家族が決めた婚約者である、ネイサン・ブルックス王子殿下が男爵令嬢であるアンドレア・ジェームズの肩に手を回し叫んだ。


「貴様はあろうことか、オレの大切なアンドレアに禁忌とされている能力まで使い、彼女の記憶を消そうとしたそうじゃないか!そんなこと、許されるべきことじゃない!」


確かに私、ミア・ウィルソンは禁忌とされている能力を使って記憶を消すことは出来る。
けれど、それは実の親に使ってはならないと言われ続けていた為、一度も使ったことはない。
そもそも私は今日の今日まで、自分の部屋から一歩も出てきたことがなかったし、アンドレアと一対一で会ったこともない。
もっと言うと、このネイサン王子と名ばかりの婚約者だ。
2人が仲良く結婚するというのなら、ご自由にどうぞと言いたい。
しかし、そう言いたくても背後からやってきた兵たちに取り押さえられ、言いたくても何も言えない。


「貴様は自分の罪に向き合わせるため、国民の前で処刑をしてやる!」



処刑当日まで牢屋に捕らえておけ、とネイサン王子は兵たちに向かって言い、問答無用に牢屋へと私は連れていかれた。
初めて部屋から出れたと思ったら、こんなことになるなんて。
まぁ、全く関わっていなかったネイサン王子とどうにかなるとも思っていなかったけれど。

でも、このまま処刑日までこの牢屋で死を待っていなければいけないのだろうか。
やってもいない罪を被せられ、それを大罪を犯したと言われ国民の前にさらされるの?

そんなの耐えられない。

やっと、外に出れたと喜んでいたのに、ここで死んでたまるもんですか。

そう思った私は、早速逃げ道がないか、逃げるタイミングがないのか探ってみた。
すると、とある時間だけ警備が手薄になるタイミングがあることに気が付いた。

そこを狙い、私は一目散に逃げ出した。

後ろから私の逃亡に気が付いた兵たちが追いかけてくる気配がする。
それを感じながら暗闇の茂みに紛れ込みながら、死に物狂いで走った。
その間、兵たちからの攻撃を受け、あらゆる所を怪我したが、それで足を止めるわけにはいかず走り続けた。


「痛っ………!」


後ろから撃たれた弾丸がそれぞれ両足を貫通し、その場に崩れ落ちた。
あまりの痛さに涙が出て、ついにここまでなのかと悟ってしまう。
私の人生って何なの。
こんな所で、呆気なく終わってしまうの?
そんなの絶対に嫌!


誰でもいいの、誰か助けて………!
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