きっと、あなたは知らない

mahiro

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浜砂と出会ったのは平松がいつものごとく普通科に顔を出していたとある日のことだった。
いつもは一人でふらふらとやって来ては騒いで帰って行くのに、その日は誰かと話ながら教室に来ていて、珍しいなと思っていた。


「しーいーなー、俺、ゆーしゅーな後輩が出来た!」


優秀な、と心の中でツッコミを入れておく。
平松と比較すれば誰もが優秀に見えるのでは、と思ってしまったのも口には出さないでおこう。
ショボくれるし、まだ平松のことを知らないであろう後輩の前でそんなこと言われたくないだろうし。


「おーおー良かったね。だけど、選抜クラスと普通科って出入りしないようにって言われてるんだから、あまり平松に連れ回されてこっち来たら後輩が可哀想だろ」


平松は忠告も聞かずに一年の頃からずっと普通科に顔だしてるけど。
最初は先生方が注意していたけれど、毎回のことだから何も言わなくなったが、今年入った一年生はまだその規則というか、この学校の風習というか、それらを知らない人が多いのだから先輩になった平松が教えなくちゃいけないのに、何で連れてくるかな。


「えーだって、そうしたらいつまで経っても椎名に紹介出来ないじゃん!」


しなくて良い、と言いたい。
通常の学校生活を送っていれば、普通科の人間は選抜クラスと関わりを持つことなく学生生活を終える。
それなのに、平松が気にせず来てしまうから関わりがあるだけで。
これ以上、選抜クラスの人物と関わりを持ちたくない、というのが私の気持ちだった。
だって、選抜クラスからも普通科からも平松のせいでよく思われてないし、私。


「なぁーなぁー折角ついてきて貰ったんだから良いだろう?紹介くらい!」


私が頭を抱えていると、その周りを煩いくらいに平松がなぁーなぁーと声をかけてくる。
正直言って鬱陶しい。
まぁ、校舎も別で選抜クラスから普通科までかなり距離がある中を歩いてきてくれたのだから、自己紹介だけでもしておこうか。
関わることなど、どうせないだろうけど、とそう思って視線を平松からその後ろにいた人物へと視線を向けた、その瞬間、全てを奪われたと思った。


「初めまして、浜砂悠真と申します。よろしくお願いいたします」


視線が合って、暫くしてから落ち着いた声が耳に届いたとき、漸く我に返ることが出来たが、それのせいで少し反応が送れてしまった。


「は、初めまして。椎名 春しいな はるです。こちらこそ、よろしく」


慌てて頭を下げながら、顔に集まる熱量と心臓の高鳴りが暫く止まることはなかった。


その後だ。
浜砂が高嶺の花だと呼ばれていると知ったのは。
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