彼が指輪を嵌める理由

mahiro

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顔良し、頭良し、一人あたり良し。
仕事も出来てスポーツも出来ると社内で有名な重村湊士しげむらみなとさんの左薬指に指輪が嵌められていると噂が流れた。
続いて、これはもう結婚秒読みの彼女がいるに違いないと聞きたくもない情報が流れていた。
面識なし、接点なし、稀に社内ですれ違うだけで私は彼のことを知っているけど、向こうは私のことなど知ってるわけもなく。


「とーおーるー聞いてー!」


私は次々と入ってくる噂にテンションが下がり、後半泣きそうになりながら仕事を終えて真っ先に友達をスイーツ食べ放題のお店に呼び出したのである。


「愛しのとおるちゃんが聞いてますよー」


可愛いらしい友達はテーブルに並べたケーキを次々に口に入れては美味しいと喜んで食べているが、真剣に聞いてくれているのかどうか。


美心みこが愛した王子様が結婚するかもしれないって話でしょ?」


「聞いてくれてたんか!」


ケーキに夢中になってて聞いてくれてなかったのかと思ったわ。
何故、社会人である私たちが居酒屋ではなくスイーツ食べ放題のお店でこんな話をしているのかというと、二人とも下戸であることと澄が可愛すぎて変な男が近寄って来るからだったりする。
スイーツ食べ放題のお店なら男性より女性のお客さんの方が多いし、お互いスイーツの方が好きだし、というでこのお店になったわけだ。


「勿論。大事件だからね」


口についたクリームを紙ナプキンで拭き取り、いつも整っている顔を私に寄せてきた。


「こんなことになる前にもっと早く動いていれば愛しの王子様は美心のものになったかもしれないのに、遠慮ばっかりしてるからこうなるんだぞぉ」


人差し指で頬をつつかれ、私は頭を抱えた。
そうなのだ。
すれ違うタイミングがなかったわけじゃないし、向こうの所属だって知っていた。
接点を持たせようとすれば持つことだって出来なかったわけじゃないのに、してこなかったのは私の弱さのせいだ。


「分かってるんだけどなぁ…」


「分かってても行動しなかったから別の人のものになっちゃったんでしょ?」


これ美味しいと次のケーキを口に運ぶ澄の右手薬指には澄の彼氏から送られた指輪が嵌められている。
こんなに可愛い彼女がいたら牽制したくもなるよね。


「澄みたいに可愛かったら強く出れるんだけどなぁ」


残念ながら私は良くて普通のレベルよ。
彼氏居ない歴イコール年齢だし。


「えぇ?美心も可愛いと思うよ?」


「お世辞は良いの……」


今さらタラレバの話をしたところで事実は変わらないのは分かってるんだけど、話したくなるのは何故なのか。
あぁ、本当に私は重村さんのことを諦めなきゃいけないのかな。
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