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まさかの出来事
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そんなこんなで新しい生活が始まって、一ヶ月が経った頃だろうか。
先生たちからの信頼があるからなのか分からないけど、やたらと物を頼まれる。
ノート集めておいてとか、教材を教材室に戻しておいてとか。
嫌じゃないけど、頻度が高いのは何故だろうとは思う。
今日は教材を部屋に戻すように頼まれて部屋に入ろうとしたら、中から声がしてドアノブに触れようとして止まった。
「…………」
中から小さな声が確かに聞こえるけど、何を言っているのかは聞き取れない。
ドアに耳を近付けてみると、何処かで聞いたことのある声が聞こえた。
「……悪いな、大雅。また迷惑かけちまう」
間違えようがない、この声は『宮永』の声だ。
いつも盗み聞いているような楽しげな声ではなく、何処か苦しそうな声で、少し震えているようにも思える。
何があったのかと気にはなるが、このまま聞き耳を立てていて良いものかと悩む。
恐らく一緒にいるのは宗方に間違えないと思うが、こんな盗み聞きしている姿なんて見られたら何を思われるか。
宗方とも一度も話したことはないが、今のこの状態は悪い印象しか与えないような気がする。
どうせなら良い印象を与えたい所なのに。
僅かに開いた扉の奥にはこちらに背を向けた宗方と宗方に震えながらしがみつく『宮永』の姿が見え、慌てて反らした。
盗み聞きだけでなく盗み見はまずい。
それにあんな弱った姿を他の人に見られたくないよな。
今日見たことはオレの中で秘めておくことにして、早くここから去った方が良さそうだ。
足を立てないように一歩また一歩と下がり、方向転換をした所で、誰かが階段を登ってくるような音が聞こえオレはなるべく足音を立てないようにしてそちらに向かった。
今いる階が最上階だから、この足音がこのまま止まらなかったらこっちに来る可能性が高い。
そうすると、あの二人の元に近付いてしまう恐れがある。
それはどうにかして避けなければ。
その一心で向かうと、階段をのんびり上がってくる入学式で見かけたイケメンが登場してきた。
手にはオレの手元にあるものと同じ教材がある。
となると目的は同じ場所というわけだ。
「やぁ、イケメン君。君と話してみたかったんだよね?時間ある?」
先を向かわせないように両手を広げながら、とても高校1年生には見えないこの男に近付けば、無表情のままオレのことを見上げてきた。
階段のお陰で見上げられてるけど、平坦の所だったら確実に慎重抜かされてる。
一体身長いくつあるんだよ、この男。
「………誰?」
警戒心の強い猫のような態度にオレは少し笑い、一気に距離を詰めて男の手首を掴み走り出した。
「隣のクラスの玖蕗栖一真。君の持ってるその教材、オレが後で返しておくから今はついて来てくれ!」
男は眉間に皺を寄せて、嫌がりながらもオレについて来てくれた。
向かった先は遠く離れた空き教室で、今は物置とされている場所だ。
ここまで来ればもう大丈夫だろう。
「はぁ、悪いな。ついて来て貰って」
「別に」
不機嫌丸出しの態度に、子供っぽい所もあるんだな、と思ってしまった。
そりゃそうだよな、見た目が大人っぽくてもまだ15歳だもんな。
にしても困ったな、特にこれといって用はないんだよな。
話したいとか本当は思ってなかったし。
だって名前だって覚えてないくらいだし。
ここはオレが聞きたいことを忘れたことにするか。
「君と少し話がしてみたかったのは本当なんだけど、走ってたら忘れちまった。悪い!ちゃんと教材は返しておくから許してくれ!」
顔の前で両手を合わせて謝罪したら、冷えた眼差しでこちらを見下ろしてきた。
顔が整ってる奴ほど無表情って怖いし、こういう眼差しも怖いと思う。
幸輝も父さんに似てどちらかというと美形だから注意しておかないと、これからもっと成長したら目の前で怖い顔してるこの男と同じになっちゃうな。
「………はぁ、何かまずいものでもあったわけ?教材室に」
「は?」
盛大なため息と共に問われた質問に、思わず間の抜けた声を出せば、今度は睨まれた。
何なのこのイケメン。
滅茶苦茶怖いんですけど。
「同じこと何回も言わせないでくれる?」
「いや、悪い。まさかバレるとは思ってなくてさ。まぁ、あからさまな行動取ったしバレるか」
手を顔から離して改めて目の前の男を見るけど、見れば見るほど、高校生には見えない。
大学生でも通用しそうだな。
さっきの態度とか子供っぽいところがあると年相応だな、とは思うけど。
「あまり弱ってる姿を他人に見られるのって嫌じゃん?特に男って」
「なるほどな………」
男は納得したように何回か頷くと、教室から颯爽と出て行こうとするから慌てて追いかけ教材を受け取れば、受け取った際に悪魔の囁きが頭上から発された。
「今回の礼として、今度俺の相談に乗ってくれないか?嫌だとは言わせないけど」
「は?!」
「明日の昼にまたここで」
そう言って今度こそ去って行く男に、オレは何を返したら良いか分からなかった。
え、今日のお礼に相談に乗る?
何のお礼?
大人しく言うことを聞いたからとかそんな所?
まぁ、相談に乗るくらい別に良いけど。
先生たちからの信頼があるからなのか分からないけど、やたらと物を頼まれる。
ノート集めておいてとか、教材を教材室に戻しておいてとか。
嫌じゃないけど、頻度が高いのは何故だろうとは思う。
今日は教材を部屋に戻すように頼まれて部屋に入ろうとしたら、中から声がしてドアノブに触れようとして止まった。
「…………」
中から小さな声が確かに聞こえるけど、何を言っているのかは聞き取れない。
ドアに耳を近付けてみると、何処かで聞いたことのある声が聞こえた。
「……悪いな、大雅。また迷惑かけちまう」
間違えようがない、この声は『宮永』の声だ。
いつも盗み聞いているような楽しげな声ではなく、何処か苦しそうな声で、少し震えているようにも思える。
何があったのかと気にはなるが、このまま聞き耳を立てていて良いものかと悩む。
恐らく一緒にいるのは宗方に間違えないと思うが、こんな盗み聞きしている姿なんて見られたら何を思われるか。
宗方とも一度も話したことはないが、今のこの状態は悪い印象しか与えないような気がする。
どうせなら良い印象を与えたい所なのに。
僅かに開いた扉の奥にはこちらに背を向けた宗方と宗方に震えながらしがみつく『宮永』の姿が見え、慌てて反らした。
盗み聞きだけでなく盗み見はまずい。
それにあんな弱った姿を他の人に見られたくないよな。
今日見たことはオレの中で秘めておくことにして、早くここから去った方が良さそうだ。
足を立てないように一歩また一歩と下がり、方向転換をした所で、誰かが階段を登ってくるような音が聞こえオレはなるべく足音を立てないようにしてそちらに向かった。
今いる階が最上階だから、この足音がこのまま止まらなかったらこっちに来る可能性が高い。
そうすると、あの二人の元に近付いてしまう恐れがある。
それはどうにかして避けなければ。
その一心で向かうと、階段をのんびり上がってくる入学式で見かけたイケメンが登場してきた。
手にはオレの手元にあるものと同じ教材がある。
となると目的は同じ場所というわけだ。
「やぁ、イケメン君。君と話してみたかったんだよね?時間ある?」
先を向かわせないように両手を広げながら、とても高校1年生には見えないこの男に近付けば、無表情のままオレのことを見上げてきた。
階段のお陰で見上げられてるけど、平坦の所だったら確実に慎重抜かされてる。
一体身長いくつあるんだよ、この男。
「………誰?」
警戒心の強い猫のような態度にオレは少し笑い、一気に距離を詰めて男の手首を掴み走り出した。
「隣のクラスの玖蕗栖一真。君の持ってるその教材、オレが後で返しておくから今はついて来てくれ!」
男は眉間に皺を寄せて、嫌がりながらもオレについて来てくれた。
向かった先は遠く離れた空き教室で、今は物置とされている場所だ。
ここまで来ればもう大丈夫だろう。
「はぁ、悪いな。ついて来て貰って」
「別に」
不機嫌丸出しの態度に、子供っぽい所もあるんだな、と思ってしまった。
そりゃそうだよな、見た目が大人っぽくてもまだ15歳だもんな。
にしても困ったな、特にこれといって用はないんだよな。
話したいとか本当は思ってなかったし。
だって名前だって覚えてないくらいだし。
ここはオレが聞きたいことを忘れたことにするか。
「君と少し話がしてみたかったのは本当なんだけど、走ってたら忘れちまった。悪い!ちゃんと教材は返しておくから許してくれ!」
顔の前で両手を合わせて謝罪したら、冷えた眼差しでこちらを見下ろしてきた。
顔が整ってる奴ほど無表情って怖いし、こういう眼差しも怖いと思う。
幸輝も父さんに似てどちらかというと美形だから注意しておかないと、これからもっと成長したら目の前で怖い顔してるこの男と同じになっちゃうな。
「………はぁ、何かまずいものでもあったわけ?教材室に」
「は?」
盛大なため息と共に問われた質問に、思わず間の抜けた声を出せば、今度は睨まれた。
何なのこのイケメン。
滅茶苦茶怖いんですけど。
「同じこと何回も言わせないでくれる?」
「いや、悪い。まさかバレるとは思ってなくてさ。まぁ、あからさまな行動取ったしバレるか」
手を顔から離して改めて目の前の男を見るけど、見れば見るほど、高校生には見えない。
大学生でも通用しそうだな。
さっきの態度とか子供っぽいところがあると年相応だな、とは思うけど。
「あまり弱ってる姿を他人に見られるのって嫌じゃん?特に男って」
「なるほどな………」
男は納得したように何回か頷くと、教室から颯爽と出て行こうとするから慌てて追いかけ教材を受け取れば、受け取った際に悪魔の囁きが頭上から発された。
「今回の礼として、今度俺の相談に乗ってくれないか?嫌だとは言わせないけど」
「は?!」
「明日の昼にまたここで」
そう言って今度こそ去って行く男に、オレは何を返したら良いか分からなかった。
え、今日のお礼に相談に乗る?
何のお礼?
大人しく言うことを聞いたからとかそんな所?
まぁ、相談に乗るくらい別に良いけど。
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