オレに触らないでくれ

mahiro

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正しいリアクションが取れません

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宮永の話が気になりすぎて、学校に向かっている最中に宮永と何を話していたのか覚えてないし、璃生や葵たちにまともな返答が返せていたのか分からない。
そもそも何が届いていたのか、誰からメッセージが届いていたのかさえ覚えてないな。
大丈夫か、オレ。


「いやぁ、頑張ったなぁ……玖蕗栖…宮永…先生は嬉しいぞ」


肩をバシバシと力加減なしで担任に叩かれ、その担任の目には涙が止めどなく流れている。
一年の頃から同じ担任だから、思うところも多いと思うが泣きすぎじゃないか。


「今日くらいゆっくり休めよ」


「ありがとうございます…」


先生もな、とは言えずにそれだけ言って教室を出た。
そのあとは宮永についてきてくれ、と言われてついていった先はまさかの宮永の家でした。
え?
入って良いの?


「どうした?」


「いや!何でもない!お邪魔します!」


門から家までの距離が長いし建物も立派。
こんな家に住んでる人が、一般庶民が暮らす一軒家に毎回来ていたのかと思うと申し訳なく感じるな。
家の中も綺麗だし、一つ一つの家具が高そうで触れて割ってしまったら弁償しろと言われても一生働いていても払いきれなそうなものばっかり。
窓の外からは宮永のご両親が働く病院が見えてるけど、まさか何かあればすぐに行けるようにこの土地を買ったとかじゃないよな。


「こっちだ」


そう言われて案内された部屋は、宮永の部屋なようでベッドと勉強机、タンスと何故か殺風景に見えた。
もしかして、オレの家が物有りすぎるだけなのか?


「お疲れのところ急に悪いな」


「いや、宮永こそ疲れてるだろ」


「俺は大丈夫だ。まぁ、空いてるスペースにでも座ってくれや」


そうは言われてもベッドに座れないし、勉強机のところにある椅子を借りるわけにもいかず何となく部屋の端っこ辺りに腰かけてみた。
絨毯が敷いてあるからお尻も冷たくないし、ここで良いか。
宮永も何故かオレと同じ様に床に座り、豪快に胡座をかいて座った。



「さて、いきなりで悪いが、ちと俺の話を聞いてくれ。話って言っても過去に起きたことと今の話なんだがな」


「おう」


過去の話って、前に盗み聞いしちゃった話だろうか。
確かある事件がきっかけで宗方以外の男が苦手になってしまい、その中でも特に苦手なのがオレみたいな奴で、そんな奴に酷い目に合わされたっていう。


「小学校六年の頃、そのところの担任とクラスの中心にいた奴に酷い行為をされたことがあってなぁ、それ以降、男を、特に酷い行為をしてきた奴らに似たような男と普通に接することが出来なくなっちまったんだよ。大雅はそんな俺に寄り添ってリハビリとかにも協力してくれて今でも助かったと思ってる。最近は二人とも忙しくて前より接しなくなったが、前より症状が良くなったことを大雅は喜んでくれてなぁ」


「そ、そうだったんだな…」


前半部の話は何となくその話を聞いたことあります、とか言えないから曖昧な返答しか出来なくてすまん。
本当だったらそんなことあったのかと、衝撃を受けても良いような内容だと思うよ、うん。
けどオレ聞いてしまっていたからどんなリアクション取れば良いのか分からんのですよ。


「まぁ、そこは置いといて、ある問題がとあるときから浮上してきた」


「問題?」
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