やっと、

mahiro

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「それよりごめんね、ミュライユちゃん……私の我が儘で連れてきて嫌な思いまでさせちゃったね」


落ち込むエディスに私は首を傾けた。
確かに城に連れてこられて牢屋に閉じ込められたが、それ以外は特に何もされていない。
食事を取らなかったのだって、万が一昔の悪事がバレて処刑されるとすればなるべく胃を空けておいた方が良いかと自分で判断したものだし、そうしろと言われたわけてはない。
アルノルフさんが定期的に見に来ていたが、あれは監視や見回りというよりは心配で見に来ていたようにも見えた。


「エディスのせいじゃないよ。それにこの程度で済んだのはエディスのおかげだし」


「私は何もしてないよ………あぁ、肝心な誕生日まであと一日だし、私が何で悩んでるのかノエリア王子にはバレバレだし、プレゼントいらないとか言われるし……ミュライユちゃんの歌う場所提供も今のままだと出来なそうだし」


もう何に落ち込めば良いのか分からない、と泣くエディスの肩を掴んだ。
そうか、あまり経過していないと思っていたのだが、結構経っていたのだな。


「ここまで来たら購入するようなものを渡すのは次回として、今回はエディスの気持ちを手紙にして渡すのはどうだ?」


「気持ちを手紙に?」


「そんでもってエディスの時間をノエリア王子にあげれば凄く喜ばれると思うけど?」


「そんなもので良ければいつでもあげるのに……あ、それじゃあ私が手紙を読んでるときにミュライユちゃんバックで歌ってよ!」


「いや、それはいらないと思うぞ。むしろ邪魔だとノエリア王子に怒られると思う」


エディスの声が聞こえねぇじゃねーか!と怒鳴る姿が頭に浮かぶ。


「私の歌う場所を提供しようと思わなくて良いから、誕生日のことだけを考えなよ」


私がそう言えば、エディスは渋々頷いた。

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