その日君は笑った

mahiro

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事の始まり

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俺の目の前には一升瓶片手に泣きながら愚痴を溢している友人がいる。
その友人は大学入学当初から目立っていた。
顔が小さい上に手足が長く、顔面偏差値と呼ばれるものが非常に高いのにその自覚が全く、黙っていると只のイケメンなのだが、喋り出すと馬鹿さが目立つ、そんな友人だ。
その友人には彼氏がいて、背が高く目付きの悪い人で友人の近くにいると高確率で睨まれ、これ以上近寄こうものなら噛み付かれるのではないかと思うほど狂暴そうな人である。
何故こんな友人にあんな狂犬のような彼氏が居るのか謎だ。


「アキちゃんアキちゃんとうるさいのだ、奴は」


ボロボロと泣く友人を正面から頬杖をつきながら相槌も打たずにただ見ていれば、据わった目で俺を見てきた。


「聞け、孝介。あいつはな」


完全に酔っぱらってるせいで同じ話を何度も何度も繰り返している。
それも全部彼氏の北嶌?さんの愚痴で、彼氏と仲が良いというアキちゃんと呼ばれる人との仲が良すぎて困るという内容だ。
今日はそのアキちゃんの所へ彼氏は行って帰ってこないのだとか。
それでこの状況である。
友人はつい最近引っ越し、彼氏と何かあると俺の家に来るようになった。
今日はこのままだと泊まることになりそうだが、あの怖い彼氏に何か言われたら面倒そうだな。


「ほら、宝生。そのくらいで止めておけ。明日に響くぞ」


「今日くらい飲ませろ!」


「散々飲ませただろうが」


瓶を抱き抱える友人に手を伸ばせば、伸ばす分だけ後退する。
これじゃ埒が開かないな。
どうにかしたい所だが、どうしたものか。
そんなとき、俺のスマホが鳴り出した。
何か非常に嫌な予感がする。


「孝介?鳴っているぞ?」


「そう、だな」


「お前を待っているぞ?」


「俺は待ってない」


俺がいつまで経っても出ないでいると、友人が変わりに出てしまった。


「孝介の変わりに宝生が出ている」
 

ディスプレイを見てないせいで誰だか分からないが、こんな夜中にかけてくる奴なんてろくな奴が今まで居たことがない、もちろんこの友人も然別。


「おぉ、隼(じゅん)ではないか!どうした?」


やっぱり嫌な気配的中した。
俺の友人その2は目の前の友人と同じく彼氏がいる。
その彼氏が実はとある業界の有名人でよく週刊誌にすっぱ抜かれていたりする。
その度に俺の家に唐突に来て泣きついてくる友人だ。
ここは駆け込み寺じゃないぞ。


「またか…お前も大変だな。俺も今孝介の家で飲んでいるのだ。お前も来るか?」


そうなるだろうなとは思っていたが、やっぱりそうなった。
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