その日君は笑った

mahiro

文字の大きさ
5 / 16

知らない男

しおりを挟む
講義が終わり帰ろうとすれば、何故か俺は宝生にとある国立大学の前に連行されていた。
男性が割合的に多いように見えるここに一体誰が居ると言うのか。
まさか、あの怖い彼氏の通っている大学とか?
だとしたら何故俺は連れて来られた?
1人で待っていれば良いじゃないか。


「あの、宝生?俺は何故連れて来られたんだ?」


「ここは奴の通う大学で、ここで待つように言われたんだが絶対に1人で待つなと言われてな」


「あ、そう」


つまり、用心棒的な存在として連れて来られたのか。
それが終われば俺はおさらばして良さそうだな。


「別におなごじゃあるまいし1人で待てるのだがな」


「いや、宝生のことがそれほど心配なんだろ?」


俺がそう言えば嬉しそうに笑う宝生を通り過ぎる女性たちが宝生を見て頬を染めて騒いでいるのが見え、何となくヤバい気がした。
これは宝生の姿を出来るだけ彼女たちから隠すべきかと門に背を向けたのだが、宝生の方が俺より微妙に背が高いせいで隠れきれていない。


「どうしたのだ?孝介、何かあったか?」


「この無自覚人間め……」


分かっていてやられるのも困るが、無自覚のも困るな。
これじゃあ彼氏も大変だ。


「お、奴が来たな。でも、誰だ?あのチャラそうな男は」


俺の横から覗くように門の方を見た宝生に促されるように見てみれば、あの凶悪面をした彼氏と金髪で目立つ格好をした男が話ながらこちらに向かっている姿が見えた。


「宝生が知らないのに俺が知るわけないだろ」


「だよな…」


そうこうしているうちに宝生の彼氏はこちらに気付き、毎度のごとく睨まれました。
宝生を1人で待たせないために一緒に居ただけなのに酷い。


「あれ?男じゃん」


宝生の彼氏もそれならに身長があるのに、それを越えるこの男。
俺たちを交互に見てガッカリしたように言ってきたが、誰が居ると思って来たんだ。


「だからお前が付いてきても面白くないっつったろ。さっさと帰れ」


宝生の彼氏が嫌そうな顔をしながら追い払おうとすれば、その男は何故かにんまりと笑った。


「初めまして、真宮颯斗(じんぐうはやと)って言います。お見知りおきを」


「こんな奴知らなくて良いから行こうぜ」


宝生の彼氏に宝生共々背中を押され、真宮という男とは逆方向に向かされ、そのまま背中を押され続ける。
宝生は分かるが何で俺まで。


「おい、北嶌?押さなくとも歩けるぞ」


「はいはい、今はこのまま歩け」


「逃げるなよ、北嶌!オレも行く!」


「来んな!」


面白そうに追いかけてくる真宮に宝生は足を止め、真宮に指を指し言った。


「真宮だか何だか知らんが、北嶌が嫌がっているではないか。北嶌のためにもいい加減、ついてくるのは止めてくれないか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

だから振り向いて

黒猫鈴
BL
生徒会長×生徒会副会長 王道学園の王道転校生に惚れる生徒会長にもやもやしながら怪我の手当をする副会長主人公の話 これも移動してきた作品です。 さくっと読める話です。

息の仕方を教えてよ。

15
BL
コポコポ、コポコポ。 海の中から空を見上げる。 ああ、やっと終わるんだと思っていた。 人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。 そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。 いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚? そんなことを沈みながら考えていた。 そしてそのまま目を閉じる。 次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。 話自体は書き終えています。 12日まで一日一話短いですが更新されます。 ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

処理中です...