新たな物語はあなたと共に

mahiro

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ここは正直に答えた方が良いだろう。
変に誤魔化した方が怪しく思われる可能性がある。
でも、全てを語るわけでもなく後に響きにくい言葉を返さないと。


「貴方がウェーターの方からグラスを受け取ったときにドリンクの香りだけでなく、薬品のような香りがしたのよ。もしかしてと思ってスプーンを入れてみたらそうなっていたの」


「なるほどな」


グラスを傾けたり、匂いを嗅いでみたりしてから変色したスプーンをじっと見た後に真剣な瞳を私に向けてきた。
その視線に思わず姿勢を正して見つめ返せば、その表情のままローランドは言った。


「君はここにいてくれ。俺はルークにこの成分が何か調べて貰う。あと、出来ればさっきのウェーターを探しだしたい」


そう言ってすぐにでも去ろうとするローランドの袖を掴んだ。
ここでもし一人で行動をし、事件でも起ころうものならこの場で一番立ち位置が低いのは私だ。
私が何もしていなくとも、証明できる人が居なければ何を言っても聞いてくれる人はいない。
それに今は単独行動するよりも共に行動することで、私の行動をローランドが把握することで怪しまれる可能性が少しでも高まらずに済む。
逆に側に居ることで、怪しまれる可能性もゼロではないが今は単独行動だけは避けたい所だ。


「待って、私も連れていって。ここに一人で残るのは怖いわ」


「………それもそうか」


ローランドは少し考え込んでから、袖を掴んでいた私の手を握り笑った。


「こんなことがあった後だ。君も一人では心細いよな。よし、一緒に行こうじゃないか!」


特に怪しむ様子もなく、私の手を引くローランドの後ろ姿はいつものローランドに見えているが本音が見えない。
怪しまれても可笑しくない点は多いと思うけれど、そこをついてくるわけでもないし、今だって何を考えながらルークの居る玄関先まで向かっているのか分からない。


「ルーク、居るか?」


ローランドに連れられ、建物の玄関先に辿り着けばルークがローランドを見て慌てて駆け寄ってきた。


「早いですね?何かありましたか?」


「あぁ、これの成分を調べて貰いたいたくてな。出来るか?」


ふざけた様子もなく持っていたグラスごとルークに渡せば、ルークは首を傾けた。


「出来ますけど…何か入ってる可能性があるのですか?」


「あぁ。何者かが仕込んだものに違いないんだが……誰が何の目的でやったものか今はまだ分からない」


「そうですか……分かりました、確認します!」


そう言ったルークはグラスとその中に入っているスプーンを持って何処かに行ってしまった。
何が検出され、どの程度使用されているのかはもうある程度分かっているから、どこでどういう検査をした結果、そう判明したのか教えてほしいものだ。
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