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何のためにこれを持っていたのだろう。
やっぱりルイスに使うためなのかな。
「実はルイスにこれが何だか調べてこいって言われたんだけどぉ、俺説明するのが苦手でさぁ、代わりに説明してくれない?」
説明するのが苦手なのではなくて、説明するのが面倒なだけなんじゃ、という視線を先輩がザッカリーに向けている。
向けられているザッカリーは気にした風もなく、へらへらと笑っていた。
そういえば昔からこんなような人だったなぁ、なんて懐かしんでいると、先輩に肩を掴まれた。
「サラ、代わりに行ってきて。私はほら、納品があるから」
先輩、私も納品あるんですけど、なんて後輩である私が言える筈もなく、ザッカリーに引き摺られるようにしてルイスのいる営業部へと向かうことになったのだった。
ルイスとは勤務初日に挨拶を交わしただけで、他の新入社員と同様の対応をされた。
視線は全く合わなかったし、愛想もなく無愛想に名前を言われただけ。
それでも、今世で再会できて言葉を交わせただけでも喜ばしいことでそれだけで満足している私がいたっけ、なんて過去を振り返りながら目の前に腰かけているルイスの何処に視線を向ければ良いのか迷う。
宝石のように輝く瞳か?
思わず触れたくなるような唇か?
それとも男らしくなった首筋か?
「で?これが何か分かるのか?」
「は、はい!」
急に話しかけられて思わず姿勢を伸ばす。
その反応に後ろに立っていたザッカリーに鼻で笑われた。
笑わないでくれ、こっちは一対一で話すのなんて前世ぶりなんだ。
前世だってまともに二人で話すことなんてなかったというのに。
「なんかぁ、危ないものらしいよぉ」
「何がどう危ないんだ?」
「なんだっけぇ、人を従わせる?ものとか?」
「人を従わせるもの………」
私が話し出す前にザッカリーが話し出したかと思えば、あとは面倒くさいから説明お願いねと視線を向けてきた。
それに呆れながらも早く説明するだけして、自分の部署へ戻ろうと口を開いた。
「それは『術具』というもので、術者が人を従わせるために用いるものです。ターゲット以外が触れても問題ありませんが、もし、ターゲットが触れてしまえば目的を達成するまで剥がれません」
「…………」
ルイスは私の説明に何の反応も示さず、綺麗な指を口元へ持っていき、形のよい唇をその指で触れた。
それを思わず視線で追ってしまったあとに、見てはいけないものを見た気がして慌てて視線を反らした。
「なら、これが何か分かるか?」
そう言ってルイスがテーブルの上に提示したものを見た。
そこには焼け焦げた何かのカスが袋に入ってあった。
「これは使い終わった『術具』ですね。先程の紙が役割を終えると自然とこうなります」
「なるほど」
「え、ルイスってばぁ、ゴミみたいの何処で見つけたのぉ」
大きな身体を前のめりにし、私の真横にザッカリーの顔があった。
あまりの近さに距離を取ろうとすれば、その顔をルイスが掴んだ。
「ゴミじゃない。というか彼女に失礼だろ、離れろ」
「えぇ?覗き込んだだけなのに顔掴むなんて酷くない?」
「覗き込むな。物が見たいなら横着しないで回り込んでこい」
「はぁい。で?何処で見つけたのさぁ。さっきの所にはなかったよねぇ?」
ルイスに言われるがままに身体を離したザッカリーは、ルイスの隣に腰かけ、燃えカスを手にとって匂いを嗅いで焦げ臭いと顔をしかめながら言った。
「家だ」
「家ぇ?ストーカーか何かなのぉ?」
「知るか」
「だってぇ、家にこれがあるってことはぁ、あの子に家バレてるってことじゃん?危なくない?ルイス」
「そのようだな」
やっぱりルイスに使うためなのかな。
「実はルイスにこれが何だか調べてこいって言われたんだけどぉ、俺説明するのが苦手でさぁ、代わりに説明してくれない?」
説明するのが苦手なのではなくて、説明するのが面倒なだけなんじゃ、という視線を先輩がザッカリーに向けている。
向けられているザッカリーは気にした風もなく、へらへらと笑っていた。
そういえば昔からこんなような人だったなぁ、なんて懐かしんでいると、先輩に肩を掴まれた。
「サラ、代わりに行ってきて。私はほら、納品があるから」
先輩、私も納品あるんですけど、なんて後輩である私が言える筈もなく、ザッカリーに引き摺られるようにしてルイスのいる営業部へと向かうことになったのだった。
ルイスとは勤務初日に挨拶を交わしただけで、他の新入社員と同様の対応をされた。
視線は全く合わなかったし、愛想もなく無愛想に名前を言われただけ。
それでも、今世で再会できて言葉を交わせただけでも喜ばしいことでそれだけで満足している私がいたっけ、なんて過去を振り返りながら目の前に腰かけているルイスの何処に視線を向ければ良いのか迷う。
宝石のように輝く瞳か?
思わず触れたくなるような唇か?
それとも男らしくなった首筋か?
「で?これが何か分かるのか?」
「は、はい!」
急に話しかけられて思わず姿勢を伸ばす。
その反応に後ろに立っていたザッカリーに鼻で笑われた。
笑わないでくれ、こっちは一対一で話すのなんて前世ぶりなんだ。
前世だってまともに二人で話すことなんてなかったというのに。
「なんかぁ、危ないものらしいよぉ」
「何がどう危ないんだ?」
「なんだっけぇ、人を従わせる?ものとか?」
「人を従わせるもの………」
私が話し出す前にザッカリーが話し出したかと思えば、あとは面倒くさいから説明お願いねと視線を向けてきた。
それに呆れながらも早く説明するだけして、自分の部署へ戻ろうと口を開いた。
「それは『術具』というもので、術者が人を従わせるために用いるものです。ターゲット以外が触れても問題ありませんが、もし、ターゲットが触れてしまえば目的を達成するまで剥がれません」
「…………」
ルイスは私の説明に何の反応も示さず、綺麗な指を口元へ持っていき、形のよい唇をその指で触れた。
それを思わず視線で追ってしまったあとに、見てはいけないものを見た気がして慌てて視線を反らした。
「なら、これが何か分かるか?」
そう言ってルイスがテーブルの上に提示したものを見た。
そこには焼け焦げた何かのカスが袋に入ってあった。
「これは使い終わった『術具』ですね。先程の紙が役割を終えると自然とこうなります」
「なるほど」
「え、ルイスってばぁ、ゴミみたいの何処で見つけたのぉ」
大きな身体を前のめりにし、私の真横にザッカリーの顔があった。
あまりの近さに距離を取ろうとすれば、その顔をルイスが掴んだ。
「ゴミじゃない。というか彼女に失礼だろ、離れろ」
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「はぁい。で?何処で見つけたのさぁ。さっきの所にはなかったよねぇ?」
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「家だ」
「家ぇ?ストーカーか何かなのぉ?」
「知るか」
「だってぇ、家にこれがあるってことはぁ、あの子に家バレてるってことじゃん?危なくない?ルイス」
「そのようだな」
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