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16.幸せな時間②
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お腹が空いたから、昨日買ったパンをもらうことにする。
好きに使ってと言ってくれたから、コーヒーも淹れて、朝食にする。
パンはさすが人気店。どれもおいしかった。
テレビをつける。
平日の今の時間は、ニュース番組ばかり。
流行ってるものの特集で、動画サイトの「#歌ってみた」で取り上げられて、スマッシュヒットになった曲を紹介していた。
最近、そういうの多いよね。
SNS発信とか、本当に侮れない。
ふと思った。
『ブロッサム』もそれでバズってるけど、次の曲と連動させられないかしら?
せっかく『ブロッサム』の続きみたいだから、完全にストーリー仕立てにして売り出すのはどうかな?
あの男の子の恋は実るのかしら?
片想いが続くのかしら?
想像していくと楽しい。
TAKUYAにもらう歌だけじゃなくて、ほかのアーティストに提供する曲でもいいから、同じ世界観で完結編がほしいなぁ。
藤崎さんの中には構想とかあるのかな?
彼が起きたら、聞いてみよう。
そんなことを考えながら、テレビを見ていると、藤崎さんが起きてきた。
まだぼーっとしていて、なんだかかわいい。
こんな藤崎さんが見られるのも役得だ。
「おはようございます」
「……おはよう」
「昨日、遅かったんですか?」
「んー、寝たの四時くらいかな?」
あくび混じりに答えてくれる。
そんなしぐさでも美形がやるともの憂げで色っぽい。
「そんなに遅かったんですね。まだ寝てたらいいのに」
「せっかく希が来てるのに、もったいない」
「私はそんなレアな存在じゃないですよ……」
「いや、僕にとっては得難い存在だよ」
人を喜ばせることを臆面もなく言うんだから、もう。
熱くなった頬をごまかすように、話題を変えた。
「コーヒー飲みますか?」
「飲む」
コーヒーを淹れにキッチンに向かおうとしたら、ソファーに座った藤崎さんに捕まった。
私を抱き込んで、匂いを嗅ぐように髪に顔を埋める。
「藤崎さん、コーヒー淹れられませんよー」
「んー」
その体勢でうとうとしてるようだ。かわいい。
「藤崎さーん、寝るならベッドで寝てください」
「希が一緒に寝てくれるならいいよ……」
「寝ませんよー。私は目がパッチリです」
「……君は本当につれないなぁ」
藤崎さんは私を離して、後ろにもたれて、目を閉じた。
今のうちにと、私はキッチンに逃げ出した。
「パン食べますか?」
「食べる」
コーヒーを淹れて、パンを焼いて、簡単にサラダと目玉焼きを作って、テーブルに運んだ。
「できましたよ」
藤崎さんは目を開け、テーブルの上を見て、うれしそうに微笑んだ。
「希の手料理だ」と。
こんなので喜んでくれるなんて、藤崎さん、ちょろすぎます……。
照れかくしにさっきの構想を話してみる。
「そういえば、もらった曲なんですが、『ブロッサム』の続きの歌として売り出してもいいですか?」
「続き?」
コーヒーを飲みながら、藤崎さんが興味深そうな目で私を見る。
何気ない流し目にいちいちドキッとする。
動揺を静めて説明する。
「『ブロッサム』で恋を知った男の子が、次の曲では恋の切なさを歌って、次の歌ではその結末が……ってするとおもしろいかなと思って。あ、最後の歌はTAKUYAの歌でなくてもいいんですが」
さっき考えていたストーリー仕立ての連作の話だ。
藤崎さんはアイディアが浮かんだのか、だんだん楽しげな表情になって、「いいね」と言ってくれた。目が輝きだして、うずうずしたのか、食べかけで席を立った。
「じゃあ、さっきの曲をちょっと手直ししていい?」
「もちろんです!」
続きっぽく直してくれるみたいで、ワクワクする。
そして、私のアイディアを採用してくれたことにも感動する。
藤崎東吾の曲作りに参加してるみたい。
なにか思いついたようで、藤崎さんがハミングを始める。
「うん、いい!」
目が輝いて、それに見惚れていると、いきなり抱きあげられた。藤崎さんは歌いながら、私を腕にぐるりと回った。
「ちょっと、藤崎さん!」
振り回された私は慌てて彼の首もとに腕を回して掴まる。
ハハハッと笑った藤崎さんはそのまま私を仕事部屋に運んだ。
パソコンの前に腰を下ろすと、また膝の上に私を乗せる。
「君は本当にすごいね。本物のミューズだ。頭の中で曲がどんどんできていくよ。アウトプットする暇がないくらい」
「それは大変! 忘れないでくださいね!」
「忘れても、また新たな曲が浮かんでくるから大丈夫だよ」
藤崎さんは機嫌よく笑った。
そう言いながら、カチャカチャとパソコンを操作して、どんどん曲を作っていく。
私が膝に乗ってたら、やりにくいだろうに、下りようとするとはばまれる。
結局、藤崎さんが納得するまで、膝の上にいた。
「そういえば、『ブロッサム』の男の子の恋は成就するんですか?」
「それはどうかな……。僕にもわからない」
休憩中に聞いてみると、藤崎さんは私の頬をなでながら、遠い目をする。
構想を練っているのかな。
あの男の子の心情になっているのか、その顔は切なそうだった。
その後、いろいろと話しているうちに、アルバムの曲はゆるく同じ世界観で繋がっていて、その中で生きる人々を取り上げてもいいなと藤崎さんが言ってくれた。
『ブロッサム』のセルフカバーを冒頭に、相手の女の子側の歌だったり、男の子に片想いをしてる女の子の歌だったり、と世界が広がっていく。
こんなふうに曲作りに関わっていけるのはうれしい。
幸せな気分で、その日を過ごした。
好きに使ってと言ってくれたから、コーヒーも淹れて、朝食にする。
パンはさすが人気店。どれもおいしかった。
テレビをつける。
平日の今の時間は、ニュース番組ばかり。
流行ってるものの特集で、動画サイトの「#歌ってみた」で取り上げられて、スマッシュヒットになった曲を紹介していた。
最近、そういうの多いよね。
SNS発信とか、本当に侮れない。
ふと思った。
『ブロッサム』もそれでバズってるけど、次の曲と連動させられないかしら?
せっかく『ブロッサム』の続きみたいだから、完全にストーリー仕立てにして売り出すのはどうかな?
あの男の子の恋は実るのかしら?
片想いが続くのかしら?
想像していくと楽しい。
TAKUYAにもらう歌だけじゃなくて、ほかのアーティストに提供する曲でもいいから、同じ世界観で完結編がほしいなぁ。
藤崎さんの中には構想とかあるのかな?
彼が起きたら、聞いてみよう。
そんなことを考えながら、テレビを見ていると、藤崎さんが起きてきた。
まだぼーっとしていて、なんだかかわいい。
こんな藤崎さんが見られるのも役得だ。
「おはようございます」
「……おはよう」
「昨日、遅かったんですか?」
「んー、寝たの四時くらいかな?」
あくび混じりに答えてくれる。
そんなしぐさでも美形がやるともの憂げで色っぽい。
「そんなに遅かったんですね。まだ寝てたらいいのに」
「せっかく希が来てるのに、もったいない」
「私はそんなレアな存在じゃないですよ……」
「いや、僕にとっては得難い存在だよ」
人を喜ばせることを臆面もなく言うんだから、もう。
熱くなった頬をごまかすように、話題を変えた。
「コーヒー飲みますか?」
「飲む」
コーヒーを淹れにキッチンに向かおうとしたら、ソファーに座った藤崎さんに捕まった。
私を抱き込んで、匂いを嗅ぐように髪に顔を埋める。
「藤崎さん、コーヒー淹れられませんよー」
「んー」
その体勢でうとうとしてるようだ。かわいい。
「藤崎さーん、寝るならベッドで寝てください」
「希が一緒に寝てくれるならいいよ……」
「寝ませんよー。私は目がパッチリです」
「……君は本当につれないなぁ」
藤崎さんは私を離して、後ろにもたれて、目を閉じた。
今のうちにと、私はキッチンに逃げ出した。
「パン食べますか?」
「食べる」
コーヒーを淹れて、パンを焼いて、簡単にサラダと目玉焼きを作って、テーブルに運んだ。
「できましたよ」
藤崎さんは目を開け、テーブルの上を見て、うれしそうに微笑んだ。
「希の手料理だ」と。
こんなので喜んでくれるなんて、藤崎さん、ちょろすぎます……。
照れかくしにさっきの構想を話してみる。
「そういえば、もらった曲なんですが、『ブロッサム』の続きの歌として売り出してもいいですか?」
「続き?」
コーヒーを飲みながら、藤崎さんが興味深そうな目で私を見る。
何気ない流し目にいちいちドキッとする。
動揺を静めて説明する。
「『ブロッサム』で恋を知った男の子が、次の曲では恋の切なさを歌って、次の歌ではその結末が……ってするとおもしろいかなと思って。あ、最後の歌はTAKUYAの歌でなくてもいいんですが」
さっき考えていたストーリー仕立ての連作の話だ。
藤崎さんはアイディアが浮かんだのか、だんだん楽しげな表情になって、「いいね」と言ってくれた。目が輝きだして、うずうずしたのか、食べかけで席を立った。
「じゃあ、さっきの曲をちょっと手直ししていい?」
「もちろんです!」
続きっぽく直してくれるみたいで、ワクワクする。
そして、私のアイディアを採用してくれたことにも感動する。
藤崎東吾の曲作りに参加してるみたい。
なにか思いついたようで、藤崎さんがハミングを始める。
「うん、いい!」
目が輝いて、それに見惚れていると、いきなり抱きあげられた。藤崎さんは歌いながら、私を腕にぐるりと回った。
「ちょっと、藤崎さん!」
振り回された私は慌てて彼の首もとに腕を回して掴まる。
ハハハッと笑った藤崎さんはそのまま私を仕事部屋に運んだ。
パソコンの前に腰を下ろすと、また膝の上に私を乗せる。
「君は本当にすごいね。本物のミューズだ。頭の中で曲がどんどんできていくよ。アウトプットする暇がないくらい」
「それは大変! 忘れないでくださいね!」
「忘れても、また新たな曲が浮かんでくるから大丈夫だよ」
藤崎さんは機嫌よく笑った。
そう言いながら、カチャカチャとパソコンを操作して、どんどん曲を作っていく。
私が膝に乗ってたら、やりにくいだろうに、下りようとするとはばまれる。
結局、藤崎さんが納得するまで、膝の上にいた。
「そういえば、『ブロッサム』の男の子の恋は成就するんですか?」
「それはどうかな……。僕にもわからない」
休憩中に聞いてみると、藤崎さんは私の頬をなでながら、遠い目をする。
構想を練っているのかな。
あの男の子の心情になっているのか、その顔は切なそうだった。
その後、いろいろと話しているうちに、アルバムの曲はゆるく同じ世界観で繋がっていて、その中で生きる人々を取り上げてもいいなと藤崎さんが言ってくれた。
『ブロッサム』のセルフカバーを冒頭に、相手の女の子側の歌だったり、男の子に片想いをしてる女の子の歌だったり、と世界が広がっていく。
こんなふうに曲作りに関わっていけるのはうれしい。
幸せな気分で、その日を過ごした。
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