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サナリの事情①
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サナリが憤っていると、シーファのほうも気になっていたようで、質問してきた。
「聞いてもいい? サナリはどうして貴族じゃなくなったんだ?」
サナリはシーファに目を戻し、さみしげに笑った。
「領地を騙し取られたんです」
「そんなことが可能なのか?」
驚いてシーファは目を見張る。
知識のない彼でも、貴族の領地がそんな簡単に騙し取れるとは思わなかったからだ。
「可能とは思わなかったんだけど、まかり通っちゃったんですよね」
嘆息したサナリはさらっと説明しようとしたけど、話しだしたら止められなくなり、結局ぜんぶしゃべってしまった。
そんなことを聞いてきてくれた人は今までいなかったから。
さすがに魔術師団長が絡んでいることは伏せたが。
「最初はうちの領地管理人が暴漢に襲われて重傷となったことから始まったんです。今思うと、それも仕組まれていた気がしますが」
シーファは黙ってうなずき、聞いていてくれる。
「お父様が困ったなと思っていると、隣の領地の侯爵が代理人を紹介してくれたんです。普段、あまりやり取りがないのに、おかしいと思ったんです。でも、お人好しのお父様は感謝して、その人を雇いました」
サナリはいったん切って、溜め息をついた。
あのときに止めていたらと思ったのだ。
いくら侯爵の推薦でも、もっと身元を調べるとか、注意すればよかったと思った。それでも、あやしいと見抜けたかというと疑問だが。
「その代理人がいつの間にか土地の権利書を持ち出して、紹介者の侯爵にそれを渡したんです。そして、お父様が領地を売った形にして……」
「サインは?」
シーファの言う通り、本来なら土地の売買にはトッレ伯爵のサインが必要だ。しかし、偽造されたのか、そのまま書類が国に受理されてしまった。
「私たちは領地が奪われたことを王宮からの爵位剝奪の書状で知ったんです。領地を持たない者はもう貴族ではないと言われて……」
そのときのことを思い出して、サナリは悔しそうに言った。
父にとっても自分にとっても晴天の霹靂で、わけもわからないうちに、追われるように屋敷を明け渡すしかなかった。
「訴えられないのか? 公文書偽造だろう? 調べればすぐわかるはずだよね?」
「訴えたんですが、書類は相手が持ってるし、その侯爵が関係機関に根回ししていたみたいで却下されてしまって……」
偽造書類は真偽魔法にかければ一発でわかる。
でも、そこまで話を持っていくことができずに、結局、サナリたちは泣き寝入るしかなかった。
相手が格上の力のある侯爵だったのが圧倒的に不利だった。
仕方なく、父は親切な知人の口利きで官吏として働きだし、サナリも事務員として働くことになった。
こうなってみると、母が生きてなくてよかったと、たまに父と話した。
根っからの貴族気質で体の弱かった母はこんな生活に耐えられなかっただろうから。
「そんなことがあったんだ。大変だったね、サナリ」
シーファが心から同情するように労ってくれる。
その彼を騙すようにして、領地を取り戻そうとしているサナリは心が痛かった。
(でも、演習に出るのは魔術師団員の義務だし、後々のことを考えたら、シーファのためでもあるわよね?)
自分をごまかすようにサナリはそう考えようとした。
「聞いてもいい? サナリはどうして貴族じゃなくなったんだ?」
サナリはシーファに目を戻し、さみしげに笑った。
「領地を騙し取られたんです」
「そんなことが可能なのか?」
驚いてシーファは目を見張る。
知識のない彼でも、貴族の領地がそんな簡単に騙し取れるとは思わなかったからだ。
「可能とは思わなかったんだけど、まかり通っちゃったんですよね」
嘆息したサナリはさらっと説明しようとしたけど、話しだしたら止められなくなり、結局ぜんぶしゃべってしまった。
そんなことを聞いてきてくれた人は今までいなかったから。
さすがに魔術師団長が絡んでいることは伏せたが。
「最初はうちの領地管理人が暴漢に襲われて重傷となったことから始まったんです。今思うと、それも仕組まれていた気がしますが」
シーファは黙ってうなずき、聞いていてくれる。
「お父様が困ったなと思っていると、隣の領地の侯爵が代理人を紹介してくれたんです。普段、あまりやり取りがないのに、おかしいと思ったんです。でも、お人好しのお父様は感謝して、その人を雇いました」
サナリはいったん切って、溜め息をついた。
あのときに止めていたらと思ったのだ。
いくら侯爵の推薦でも、もっと身元を調べるとか、注意すればよかったと思った。それでも、あやしいと見抜けたかというと疑問だが。
「その代理人がいつの間にか土地の権利書を持ち出して、紹介者の侯爵にそれを渡したんです。そして、お父様が領地を売った形にして……」
「サインは?」
シーファの言う通り、本来なら土地の売買にはトッレ伯爵のサインが必要だ。しかし、偽造されたのか、そのまま書類が国に受理されてしまった。
「私たちは領地が奪われたことを王宮からの爵位剝奪の書状で知ったんです。領地を持たない者はもう貴族ではないと言われて……」
そのときのことを思い出して、サナリは悔しそうに言った。
父にとっても自分にとっても晴天の霹靂で、わけもわからないうちに、追われるように屋敷を明け渡すしかなかった。
「訴えられないのか? 公文書偽造だろう? 調べればすぐわかるはずだよね?」
「訴えたんですが、書類は相手が持ってるし、その侯爵が関係機関に根回ししていたみたいで却下されてしまって……」
偽造書類は真偽魔法にかければ一発でわかる。
でも、そこまで話を持っていくことができずに、結局、サナリたちは泣き寝入るしかなかった。
相手が格上の力のある侯爵だったのが圧倒的に不利だった。
仕方なく、父は親切な知人の口利きで官吏として働きだし、サナリも事務員として働くことになった。
こうなってみると、母が生きてなくてよかったと、たまに父と話した。
根っからの貴族気質で体の弱かった母はこんな生活に耐えられなかっただろうから。
「そんなことがあったんだ。大変だったね、サナリ」
シーファが心から同情するように労ってくれる。
その彼を騙すようにして、領地を取り戻そうとしているサナリは心が痛かった。
(でも、演習に出るのは魔術師団員の義務だし、後々のことを考えたら、シーファのためでもあるわよね?)
自分をごまかすようにサナリはそう考えようとした。
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