氷の魔術師(引きこもり)のはずなのに、溺愛されても困ります。

入海月子

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演習に参加?①

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「ねぇ、僕、ここから出られる気がしないよ」

 演習当日、研究室のドアの前で立ち止まったきり動こうとしないシーファが泣き言を洩らす。
 サナリは深い溜め息をついた。
 朝からごねまくるシーファをなんとかなだめて、ようやく立ち上がらせたのだが、ドアの前で足が動かないと言うのだ。
 それでも、石にならないだけマシかとサナリは気を取り直した。

「でも、魔物討伐のときはちゃんと自分で出かけてるんですよね?」
「魔物は先生のかたきだからね」

 急に鋭い声になって、シーファが返した。
 サナリの前にしてはめずらしく視線も尖っている。

(そっか、前魔術師団長は魔物討伐のときに亡くなったから……)

 『先生』だけに懐いていたらしいシーファの衝撃は如何ばかりかと考えるとサナリの胸が痛んだ。
 ひとりで前に出て魔物に立ち向かっていってしまうのも、敵討ちという意識があるからかもしれない。

「演習に出れば、敵の魔物ももっと効率的に倒せるんじゃないですか?」
「必要ない。片っ端から凍らせるだけだから」

 シーファの答えはにべもない。
 そういうクールな姿は『氷柱の貴公子』そのものだ。
 
「じゃあ、魔物討伐に行くという気持ちでドアの外に出ましょうよ」
「思えないよ……」

 サナリが言うと、精悍な顔つきがへにゃりと崩れた。

(かわいい)

 怜悧な美貌が台無しだったが、それはそれでかわいらしく庇護欲を誘われて、世話好きなサナリの心を鷲掴みにする。

(違う違う。そんな場合じゃなかったわ)

 すでに演習は始まっている時間だった。
 今日は絶対連れてこいと魔術師団長に言われているのにどうしたものかとサナリは頭を悩ませた。

「そうだ! 小石に変身したシーファを私が演習場に持っていくというのはどうですか?」
「サナリが?」

 意外なことを提案されて、シーファは目をぱちくりさせた。
 うーんと考え込んで、他に手がないと思ったのか、しぶしぶうなずいた。
 
「わかったよ」

 そう言うなり、コロンとシーファがいたところに小石が転がった。

「ありがとうございます」

 サナリはにっこり笑って、優しく小石を拾い上げた。

「じゃあ、演習場に行きますね」

 声をかけてから、サナリは研究室のドアを開けた。
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