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無力感
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スースーと静かな寝息をたて始めたシーファの顔をサナリは見つめていた。
彼はサナリの左手を握りしめて、横向きになって眠っている。その綺麗なアーチを描く眉が今はひそめられて、苦しげだった。
銀色の髪が顔にかかっているのを除けてあげようと手を伸ばしたが、彼が触れられるのを好きじゃないことを思い出し、宙で手を止める。
よく見ると、髪も顔も砂にまみれていて、拭いてあげたいとも思った。
手を下ろしながら、サナリは自分の無力を嘆いた。
(さっきの戦闘もただ見てるだけ、魔力補給もできなくて、今もただ見てるだけ)
圧倒的だけど、自分の身の危険を顧みないシーファの戦い方に、まるで死んでもいいというような投げやりな心情が透けて見えて、胸が苦しくなった。
利用してやろうと思っていた相手だったのに、シーファを知れば知るほど、サナリは放っておけなくなっていた。
(キス、してもいいと思うなんて。それどころか、補給してもいいって言った……)
先ほどの自分の発言に、改めて驚き、唇に手を当てる。
シーファの薄く形のいい唇に視線を落として、ひとり赤くなった。
(でも、シーファはなんで頑なに補給を嫌がるんだろう? やっぱり人に触れたくないからなのかな?)
もっと人に慣れて、自分でなくていいから、魔力補給をできるようになるといいのに、と思ったとき、チクンと胸が痛んだ。
(私でなくていいから……?)
シーファが誰かに微笑む様子を想像すると、みぞおちがキューッと苦しくなった。
サナリは首を傾げる。
自分で自分の思考に矛盾を感じた。
(今は私だけに懐いてるシーファが、他の人と親しくなるのがさみしいのかしら?)
そう自己分析するものの、サナリは領地を取り戻すことをあきらめてはいない。
近い将来、シーファを利用する形で彼から離れていくというのに、さみしく思うのは身勝手だと思った。
(私がいなくなる前に、シーファがもっと人の輪に入れるようにしてあげないと)
いつの間にかシーファは両手でサナリの手を握りしめていた。まるで命綱にしがみつくように。彼の寝息が手に当たって、くすぐったい。
愛おしさが胸にあふれ出す。
(これは親愛? それとも?)
自分の思いをうまく心の中で消化しきれず、サナリはふぅっと息を吐いた。
彼はサナリの左手を握りしめて、横向きになって眠っている。その綺麗なアーチを描く眉が今はひそめられて、苦しげだった。
銀色の髪が顔にかかっているのを除けてあげようと手を伸ばしたが、彼が触れられるのを好きじゃないことを思い出し、宙で手を止める。
よく見ると、髪も顔も砂にまみれていて、拭いてあげたいとも思った。
手を下ろしながら、サナリは自分の無力を嘆いた。
(さっきの戦闘もただ見てるだけ、魔力補給もできなくて、今もただ見てるだけ)
圧倒的だけど、自分の身の危険を顧みないシーファの戦い方に、まるで死んでもいいというような投げやりな心情が透けて見えて、胸が苦しくなった。
利用してやろうと思っていた相手だったのに、シーファを知れば知るほど、サナリは放っておけなくなっていた。
(キス、してもいいと思うなんて。それどころか、補給してもいいって言った……)
先ほどの自分の発言に、改めて驚き、唇に手を当てる。
シーファの薄く形のいい唇に視線を落として、ひとり赤くなった。
(でも、シーファはなんで頑なに補給を嫌がるんだろう? やっぱり人に触れたくないからなのかな?)
もっと人に慣れて、自分でなくていいから、魔力補給をできるようになるといいのに、と思ったとき、チクンと胸が痛んだ。
(私でなくていいから……?)
シーファが誰かに微笑む様子を想像すると、みぞおちがキューッと苦しくなった。
サナリは首を傾げる。
自分で自分の思考に矛盾を感じた。
(今は私だけに懐いてるシーファが、他の人と親しくなるのがさみしいのかしら?)
そう自己分析するものの、サナリは領地を取り戻すことをあきらめてはいない。
近い将来、シーファを利用する形で彼から離れていくというのに、さみしく思うのは身勝手だと思った。
(私がいなくなる前に、シーファがもっと人の輪に入れるようにしてあげないと)
いつの間にかシーファは両手でサナリの手を握りしめていた。まるで命綱にしがみつくように。彼の寝息が手に当たって、くすぐったい。
愛おしさが胸にあふれ出す。
(これは親愛? それとも?)
自分の思いをうまく心の中で消化しきれず、サナリはふぅっと息を吐いた。
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