氷の魔術師(引きこもり)のはずなのに、溺愛されても困ります。

入海月子

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補給は、しない

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「交代だ! 第二陣前へ!」

 魔術師団長が叫び、伝令が駆けていく。
 近場の魔物を駆逐した隙に、二つに分けていたグループを入れ替えるようだ。
 先行していた騎士と魔術師がベースキャンプに戻ってきた。
 恋人や娼婦が駆け寄り、魔術師と濃厚なキスを交わす。
 サナリはそれを見て、頬を赤らめた。
 でも、魔術師たちは性的なものを求めているというより切迫した様子で、急速に魔力補給を求める彼らの心情が表れていた。
 魔術師と補給係のカップルは、キスを交わしながら割り当てられたテントに入っていく。
 
(これから、魔力補給するんだわ)

 つい、彼らの睦み合う姿を想像してしまって、サナリの顔が沸騰した。
 彼らとすれ違うように、第二陣が出撃していく。
 一番魔力を使ったと思われるシーファは、もの憂げにゆっくり歩いて帰ってきた。

「シーファ!」

 サナリが駆け寄ると、彼は表情を緩めたが、やはり疲労の色が濃い。
 シーファは自分の割り当てのテントに入った。
 サナリも続けて入ると、彼は座り込んだ。

「シーファ、大丈夫ですか? キスします?」

 思わず口にしたサナリの言葉に、シーファは目を見開いた。
 サナリも自分で発した言葉に動揺した。
 でも、彼はゴクリと喉を動かすも、ゆるくかぶりを振る。

「大丈夫」
「でも、苦しくないんですか? 私、補給してもいいですよ?」
「補給は、しない。……大丈夫。慣れてるから」

 顔色の悪いシーファが心配で、思い切った言葉を口にしたサナリに対して、彼は同じ言葉を繰り返すだけだった。
 その口調はやわらかいが完全に拒否の姿勢で、サナリはショックを受ける。
 
(日頃はあんなにスキンシップをとってくるくせに……。私は大丈夫なんでしょう?)

 モヤモヤしたものが胸に広がったが、これ以上彼を煩わせるわけにはいかないとサナリはうなずいた。

「じゃあ、ゆっくり休んでくださいね。そばにいない方がいいですか?」

 気を使ってそう言うと、シーファは首を振った。

「いや、仮眠を取ったら、また出る。だから、そばにいて起こしてほしい」
「そんなんで魔力が回復するんですか?」
「大丈夫。いつものことだよ」

 シーファはごろんと横になる。サナリはその上に、毛布を掛けてやり、そばに座った。
 彼が毛布の間から手を出した。

「……手を握ってもいい?」
「はい」

 サナリが手を差し出すと、シーファはうれしそうに微笑み、その手を握る。そして、すぐ電池が切れたように眠りに落ちた。
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