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間に合って!
夢魔はじめました。
ルシードの案内で私達は街を走り出す。
「プロス通りは治安が悪い地区だから、僕から離れないでね」と言われて、手を繋がれながら、先を急いだ。
9対1って、あの森で襲われていた状況とほぼ同じなんじゃない?
しかも、相手は一人と思って行ってるから、油断してるはず。
不安でならない。
一刻も早くライアンの元へ行きたい。
その点、街を知ってて、ライアンの居場所を聞き出してくれたルシードの存在がとても有り難い。
ライアンに追い出されたのに、よく戻ってきてくれたわね。
私だって、怪我は治っても、あの状態で逃げられたかどうか自信がない。
感謝を込めて、横を歩くルシードを見上げると、彼は妖艶な笑みを浮かべて言った。
「ねぇ、ライアンが死んでたら、僕と一緒に暮らさない?」
「縁起でもないことを言わないでください!」
せっかく感謝してたのに、一番考えたくないことを言われて怒る。
それを全然気にする様子もなく、ルシードは続けた。
「じゃあ、死んでなくてもいいや。なんかライアンってヤバい奴らに狙われてるっぽいじゃん。エマの存在もバレてるみたいだから、これからエマも危険でしょ?いっそ、彼と別れて、僕と暮らそうよ。僕と相思相愛を目指してみない?」
「そんなこと……」
危険だからって、ライアンから離れたくはない。
でも、私は確実にライアンの弱点になる。
今回のことも、多分ライアン一人だったら、刺客なんて、放っておいて、先に進んでただろう。
そうしたら、こんなことにならなかった。
私はライアンのそばにいない方がいいの?
「アイツから離れるために利用してもいいんだよ?『助けられて、ルシードが好きになっちゃいました』とか言って」
私の葛藤を見透かしたように、ルシードがにんまり笑う。
確かに、中途半端な理由ではライアンは私を離してくれないかも。
せっかく両想いになったのに……。
鼻の奥がツンとする。
でも、泣いてる場合じゃないわ!
「それは、ライアンを助けてから考えます。でも、もしライアンになにかあったら、私はあなたとは行きません!」
私がきっぱり言うと、「ちぇっ、ライアン救助一択かぁ」とルシードがつぶやき、その他の選択肢があったことにゾッとする。
気を許しかけていた彼とそっと距離を取る。
夢魔の倫理観はそんなものなのかもしれない。
人間は餌と思ってるみたいだし。
私も夢魔だけど、今の人間の感覚を失くしたくないな……。
そうしている間に、プロス通りに入った。
ルシードが言ってた通り、荒んだ雰囲気のところだった。
さすがにルシードも宿の名前までは覚えていないということなので、通りすがりの人に聞こうとするけど、皆話しかけられるのを嫌がるように避けられてしまう。
仕方なく宿屋のマークを探しながら歩く。
「あ、あそこ!」
汚れたり欠けたりしてよく読めない字だったけど、『ガウスの宿』と読めるかも。
そこへ走り寄ると、入口に強面の黒ずくめの男が見張りのように立っていた。
ライアンが悪魔教の追手は黒ずくめって言ってた。
やっぱりここかな?
私は彼に「手を握ってもらえますか?」と手を出した。
突然声をかけられたからか、彼は素直に手を握ってくれた。
瞬時に精を吸う。
彼は崩れ落ちた。
でも、老けてはいないから、人違いでも大丈夫よね?
後ろでルシードの吹き出す声がした。
「アハハハッ 手を握ってって!はははっ、おもしろいなぁ……」
必死な私は、それに構わず、ドアを開けて、中に走り込んだ。
「あ、待ちなよ!危ないよ!」
入った途端、誰かにぶつかりそうになる。
「エマ…?」
満身創痍のライアンだった。
濃厚な血の匂いを漂わせて、顔も服も傷だらけで、出血がひどいのか、顔色も蒼白になっていた。
でも、生きてる!
「ライアン!」
喜びでいっぱいになって、彼に抱きつこうとしたら、突き飛ばされた。
ザンッ
鈍い光が走ったと思ったら、剣が掠めた残像だった。
ライアンが肩を押さえた。
後ろから刺客が来ていて、攻撃してきたのだった。
ライアン!
かばってくれたんだわ。
ごめんなさい。
やっぱり邪魔になった……。
治療してあげたいけど、刺客が間に入って、近寄れない。
それどころか、刺客は私に剣を向けて、「こいつが殺されたくなければ、親書を出せ!」と脅した。
ライアンは血の気の引いた顔で刺客を睨みつけた。
私は尻もちをついている上、剣を向けられたことで身体が震えて立ち上がれずにいた。
「ライアン、私は大丈夫だから反撃して!怪我ならすぐ治るから」
私が叫ぶけど、刺客は口元を歪めて、「怪我ならいいが、あんたなんか一撃で殺せるんだよ、お嬢ちゃん」と言う。
それがわかっているのか、ライアンは動かない。
私はお尻をついたままジリジリと後ろに下がった。
それと共に刺客もジリジリと距離を詰めてくる。
私はドアの近くにいるから、そこから逃げればライアンは反撃できるかな?
そう思うけど、立ち上がってドアを開けてる間に斬りかかられそうな気がする。
それとも斬られてる間にライアンがやっつけてくれるかしら?
そうしている間にも、ライアンの肩からボタボタと血が滴る。
ダメだ。彼をこれ以上動かしたらいけないわ。
飛びついて刺客の精を吸えるかな?
ルシードみたいに魅了できたらいいのに。
そう思った時、刺客の後ろに突然、人影が射した。
ルシードだった。
「なっ……」
刺客が驚いて、注意が逸れた時、ザンッとライアンが飛び込んできて彼を斬った。
そのままライアンは刺客と共に倒れた。
「ライアン!」
私は彼の元に駆け寄って、抱き起こし、「治って治って治って!」と全力で祈った。
真っ青で苦しげに目を閉じていた顔が、和らいで、みるみるうちに赤みが差してきた。
出血も止まって、顔の傷も塞がっていく。
よかった。間に合った……。
その目が開いて、空色の大好きな瞳が私を見上げる。
「エマ……無事でよかった……」
ライアンが私の頬に手を伸ばした。
「ちょっとエマ、もう止めなよ!死ぬよ?」
ライアンの手を遮って、ルシードが私を彼から引き離した。
「?」
なんのことだかわからずに、私はルシードを見ようとしたけど、くらり……めまいがして、動けなくなった。
身体が重い。
ルシードに後ろから抱きかかえられた状態は不本意なのに、ぐったりと彼にもたれかかるしかなかった。
あ、もしかして、また精を使い果たしちゃったのかな?
全力で祈ったもんね。
ライアンを助けられたから、それでいいんだけど。
「エマ!」
ライアンがルシードから私を奪い返すと、私に口づけた。
甘い蜜が入ってくる。
渇ききった土に水が染み込むように、飢えた私にライアンの精気が染み渡った。
舌を絡めて、ライアンが無事だった喜びと飢えが満たされる悦びをたっぷり味わった。
「………もういい加減いいんじゃない?」
ルシードの不機嫌そうな声に我に返る。
わ、私、こんなところで恥ずかしい……。
慌てて離れようとするけど、ライアンががっちりホールドしてて離してくれない。
「足りない分は、こいつから吸えば?」
気がつけば、ルシードのそばにはもう一人、黒ずくめの男が座り込んでいた。
もう一人いたのをルシードが動けなくしてくれたみたい。
「ルシード、助けてくれて、ありがとうございます!」
「本当にずいぶん働いちゃったよ。追加でなにしてもらおうかなぁ」
彼はニヤニヤ笑う。
そうだ、お礼にディープキスをする約束だった……。
でも、彼のおかげで私達は助かったんだし、追加でもなんでもするわ。
私は了解だと頷いた。
「追加って、そもそもなにを約束したんだ?」
ライアンが私を問いただすように見た。
「内緒だよ。一番効果的な時に返してもらうから」
「わかりました」
ライアンには言えない。
こんな約束。
一番効果的な時っていつなんだろう?
「で、この黒い奴らはこれで全部なの?」
「中にいたのはこれで全部だ」
「9人いるって言ってましたけど……?」
「それじゃあ、あと一人どこかにいるのか……?」
「いや、外にもう一人いるよ?エマが無効化したけど」
「エマが?」
「そうそう……」
ルシードは思い出し笑いをしながら、言う。
「『手を握ってください』ってかわいいお願いの後に容赦なく精を吸って無効化するなんて、なかなかえげつないね」
「だって、必死だったから……」
「まぁ、手から精を吸えるようになって、よかったじゃん。実践して見せてあげなよ、ライアンに」
ルシードが顎で刺客を指した。
「まだ瞳が赤いから、吸えるならこいつから吸っておけばいいんじゃないか?」
ライアンまでそんなことを言う。
必要に迫られてではなく、人の精を吸うのにはやっぱり抵抗があるけど、今後はそうも言ってられないだろうから、刺客の人の手を取ると、精を吸った。
なんとなく、その人の残量がわかった気がした。
余剰の精気はその人の身体を取り巻いているけど、それが失くなったら、気力、体力を奪っていって、それも失くなったら、老化が始まるんじゃないかな。
私は気力、体力が失くなったところで、吸うのを止めた。
「エマは本当に絶妙なラインで止めるよねー」
感心したようにルシードがつぶやいた。
私の瞳の色を確認して、ライアンはルシードに話しかけた。
「ルシード、俺はここの後始末をしていくから、エマを宿に送っていってくれないか?」
「あれ?僕の方が危ないんじゃなかったの?」
「危ないとは思うが、仕方ない。宿の方はもう大丈夫なんだろ?」
「たぶんねー。じゃあ、帰ろうか、エマ」
「え、でも………」
ライアンを見ると、ちょっと困った顔をしていた。
「先に帰っていてくれ。調べたいことがあるんだ」
「わかりました。もう大丈夫なんですよね?」
「あぁ、おかげさまで傷は塞がったし、万全だ」
「よかった。じゃあ、先に帰ってます。気をつけてくださいね」
「あぁ」
きっと彼の調べ物の邪魔になるのね。
心配だったけど、私は素直に従うことにした。
「二人っきりで仲良く帰ろ」
ルシードが急かすように肩を抱いてくる。
「エマに触るな!」
後ろからライアンが怒鳴っていた。
「プロス通りは治安が悪い地区だから、僕から離れないでね」と言われて、手を繋がれながら、先を急いだ。
9対1って、あの森で襲われていた状況とほぼ同じなんじゃない?
しかも、相手は一人と思って行ってるから、油断してるはず。
不安でならない。
一刻も早くライアンの元へ行きたい。
その点、街を知ってて、ライアンの居場所を聞き出してくれたルシードの存在がとても有り難い。
ライアンに追い出されたのに、よく戻ってきてくれたわね。
私だって、怪我は治っても、あの状態で逃げられたかどうか自信がない。
感謝を込めて、横を歩くルシードを見上げると、彼は妖艶な笑みを浮かべて言った。
「ねぇ、ライアンが死んでたら、僕と一緒に暮らさない?」
「縁起でもないことを言わないでください!」
せっかく感謝してたのに、一番考えたくないことを言われて怒る。
それを全然気にする様子もなく、ルシードは続けた。
「じゃあ、死んでなくてもいいや。なんかライアンってヤバい奴らに狙われてるっぽいじゃん。エマの存在もバレてるみたいだから、これからエマも危険でしょ?いっそ、彼と別れて、僕と暮らそうよ。僕と相思相愛を目指してみない?」
「そんなこと……」
危険だからって、ライアンから離れたくはない。
でも、私は確実にライアンの弱点になる。
今回のことも、多分ライアン一人だったら、刺客なんて、放っておいて、先に進んでただろう。
そうしたら、こんなことにならなかった。
私はライアンのそばにいない方がいいの?
「アイツから離れるために利用してもいいんだよ?『助けられて、ルシードが好きになっちゃいました』とか言って」
私の葛藤を見透かしたように、ルシードがにんまり笑う。
確かに、中途半端な理由ではライアンは私を離してくれないかも。
せっかく両想いになったのに……。
鼻の奥がツンとする。
でも、泣いてる場合じゃないわ!
「それは、ライアンを助けてから考えます。でも、もしライアンになにかあったら、私はあなたとは行きません!」
私がきっぱり言うと、「ちぇっ、ライアン救助一択かぁ」とルシードがつぶやき、その他の選択肢があったことにゾッとする。
気を許しかけていた彼とそっと距離を取る。
夢魔の倫理観はそんなものなのかもしれない。
人間は餌と思ってるみたいだし。
私も夢魔だけど、今の人間の感覚を失くしたくないな……。
そうしている間に、プロス通りに入った。
ルシードが言ってた通り、荒んだ雰囲気のところだった。
さすがにルシードも宿の名前までは覚えていないということなので、通りすがりの人に聞こうとするけど、皆話しかけられるのを嫌がるように避けられてしまう。
仕方なく宿屋のマークを探しながら歩く。
「あ、あそこ!」
汚れたり欠けたりしてよく読めない字だったけど、『ガウスの宿』と読めるかも。
そこへ走り寄ると、入口に強面の黒ずくめの男が見張りのように立っていた。
ライアンが悪魔教の追手は黒ずくめって言ってた。
やっぱりここかな?
私は彼に「手を握ってもらえますか?」と手を出した。
突然声をかけられたからか、彼は素直に手を握ってくれた。
瞬時に精を吸う。
彼は崩れ落ちた。
でも、老けてはいないから、人違いでも大丈夫よね?
後ろでルシードの吹き出す声がした。
「アハハハッ 手を握ってって!はははっ、おもしろいなぁ……」
必死な私は、それに構わず、ドアを開けて、中に走り込んだ。
「あ、待ちなよ!危ないよ!」
入った途端、誰かにぶつかりそうになる。
「エマ…?」
満身創痍のライアンだった。
濃厚な血の匂いを漂わせて、顔も服も傷だらけで、出血がひどいのか、顔色も蒼白になっていた。
でも、生きてる!
「ライアン!」
喜びでいっぱいになって、彼に抱きつこうとしたら、突き飛ばされた。
ザンッ
鈍い光が走ったと思ったら、剣が掠めた残像だった。
ライアンが肩を押さえた。
後ろから刺客が来ていて、攻撃してきたのだった。
ライアン!
かばってくれたんだわ。
ごめんなさい。
やっぱり邪魔になった……。
治療してあげたいけど、刺客が間に入って、近寄れない。
それどころか、刺客は私に剣を向けて、「こいつが殺されたくなければ、親書を出せ!」と脅した。
ライアンは血の気の引いた顔で刺客を睨みつけた。
私は尻もちをついている上、剣を向けられたことで身体が震えて立ち上がれずにいた。
「ライアン、私は大丈夫だから反撃して!怪我ならすぐ治るから」
私が叫ぶけど、刺客は口元を歪めて、「怪我ならいいが、あんたなんか一撃で殺せるんだよ、お嬢ちゃん」と言う。
それがわかっているのか、ライアンは動かない。
私はお尻をついたままジリジリと後ろに下がった。
それと共に刺客もジリジリと距離を詰めてくる。
私はドアの近くにいるから、そこから逃げればライアンは反撃できるかな?
そう思うけど、立ち上がってドアを開けてる間に斬りかかられそうな気がする。
それとも斬られてる間にライアンがやっつけてくれるかしら?
そうしている間にも、ライアンの肩からボタボタと血が滴る。
ダメだ。彼をこれ以上動かしたらいけないわ。
飛びついて刺客の精を吸えるかな?
ルシードみたいに魅了できたらいいのに。
そう思った時、刺客の後ろに突然、人影が射した。
ルシードだった。
「なっ……」
刺客が驚いて、注意が逸れた時、ザンッとライアンが飛び込んできて彼を斬った。
そのままライアンは刺客と共に倒れた。
「ライアン!」
私は彼の元に駆け寄って、抱き起こし、「治って治って治って!」と全力で祈った。
真っ青で苦しげに目を閉じていた顔が、和らいで、みるみるうちに赤みが差してきた。
出血も止まって、顔の傷も塞がっていく。
よかった。間に合った……。
その目が開いて、空色の大好きな瞳が私を見上げる。
「エマ……無事でよかった……」
ライアンが私の頬に手を伸ばした。
「ちょっとエマ、もう止めなよ!死ぬよ?」
ライアンの手を遮って、ルシードが私を彼から引き離した。
「?」
なんのことだかわからずに、私はルシードを見ようとしたけど、くらり……めまいがして、動けなくなった。
身体が重い。
ルシードに後ろから抱きかかえられた状態は不本意なのに、ぐったりと彼にもたれかかるしかなかった。
あ、もしかして、また精を使い果たしちゃったのかな?
全力で祈ったもんね。
ライアンを助けられたから、それでいいんだけど。
「エマ!」
ライアンがルシードから私を奪い返すと、私に口づけた。
甘い蜜が入ってくる。
渇ききった土に水が染み込むように、飢えた私にライアンの精気が染み渡った。
舌を絡めて、ライアンが無事だった喜びと飢えが満たされる悦びをたっぷり味わった。
「………もういい加減いいんじゃない?」
ルシードの不機嫌そうな声に我に返る。
わ、私、こんなところで恥ずかしい……。
慌てて離れようとするけど、ライアンががっちりホールドしてて離してくれない。
「足りない分は、こいつから吸えば?」
気がつけば、ルシードのそばにはもう一人、黒ずくめの男が座り込んでいた。
もう一人いたのをルシードが動けなくしてくれたみたい。
「ルシード、助けてくれて、ありがとうございます!」
「本当にずいぶん働いちゃったよ。追加でなにしてもらおうかなぁ」
彼はニヤニヤ笑う。
そうだ、お礼にディープキスをする約束だった……。
でも、彼のおかげで私達は助かったんだし、追加でもなんでもするわ。
私は了解だと頷いた。
「追加って、そもそもなにを約束したんだ?」
ライアンが私を問いただすように見た。
「内緒だよ。一番効果的な時に返してもらうから」
「わかりました」
ライアンには言えない。
こんな約束。
一番効果的な時っていつなんだろう?
「で、この黒い奴らはこれで全部なの?」
「中にいたのはこれで全部だ」
「9人いるって言ってましたけど……?」
「それじゃあ、あと一人どこかにいるのか……?」
「いや、外にもう一人いるよ?エマが無効化したけど」
「エマが?」
「そうそう……」
ルシードは思い出し笑いをしながら、言う。
「『手を握ってください』ってかわいいお願いの後に容赦なく精を吸って無効化するなんて、なかなかえげつないね」
「だって、必死だったから……」
「まぁ、手から精を吸えるようになって、よかったじゃん。実践して見せてあげなよ、ライアンに」
ルシードが顎で刺客を指した。
「まだ瞳が赤いから、吸えるならこいつから吸っておけばいいんじゃないか?」
ライアンまでそんなことを言う。
必要に迫られてではなく、人の精を吸うのにはやっぱり抵抗があるけど、今後はそうも言ってられないだろうから、刺客の人の手を取ると、精を吸った。
なんとなく、その人の残量がわかった気がした。
余剰の精気はその人の身体を取り巻いているけど、それが失くなったら、気力、体力を奪っていって、それも失くなったら、老化が始まるんじゃないかな。
私は気力、体力が失くなったところで、吸うのを止めた。
「エマは本当に絶妙なラインで止めるよねー」
感心したようにルシードがつぶやいた。
私の瞳の色を確認して、ライアンはルシードに話しかけた。
「ルシード、俺はここの後始末をしていくから、エマを宿に送っていってくれないか?」
「あれ?僕の方が危ないんじゃなかったの?」
「危ないとは思うが、仕方ない。宿の方はもう大丈夫なんだろ?」
「たぶんねー。じゃあ、帰ろうか、エマ」
「え、でも………」
ライアンを見ると、ちょっと困った顔をしていた。
「先に帰っていてくれ。調べたいことがあるんだ」
「わかりました。もう大丈夫なんですよね?」
「あぁ、おかげさまで傷は塞がったし、万全だ」
「よかった。じゃあ、先に帰ってます。気をつけてくださいね」
「あぁ」
きっと彼の調べ物の邪魔になるのね。
心配だったけど、私は素直に従うことにした。
「二人っきりで仲良く帰ろ」
ルシードが急かすように肩を抱いてくる。
「エマに触るな!」
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