2 / 41
【出張編】
抜けがけ失敗②
しおりを挟む
今日は土曜日。ここに来たのはプライベートだ。相手をする義理はないと無視して、写真を撮っていたら、腕を掴まれた。
「帰るぞ!」
「ちょっ、なによ! ブレちゃったじゃない」
彼を見上げて睨みつけると、それ以上に進藤は不機嫌そうに「帰るぞ」と繰り返した。
いつも笑みを絶やさない彼がこんな表情をしているのはめずらしい。だけど、私の前ではたまにこう苛立った顔をするかも。ファンが見たらがっかりするわよ?
「まだ中にも入ってないのに、帰らないわよ」
だいたいなんでそんなこと進藤に言われないといけないのよ。
抗議の目を向けると、ますます苛立ったように握った腕に力を入れ、進藤は言った。
「バカだな。もうすぐ雪が降り始める。こんなところで雪に降られたら、下手すると遭難するぞ?」
「バカ!?」
ムッとして、その手を振り払う。
「バカだろ? こんな薄着で冷え切って……」
そう言うと進藤は自分の着ていたダウンコートを脱いで、私に着せかけた。
(あったかい……)
彼の体温であったまっていたダウンコートに包まれて、冷え切っていた身体がブルッと震えた。
撮影に我を忘れていたけど、寒さを思い出してしまった。
「バカはあんたでしょ! 風邪引くわよ?」
慌ててコートを彼に掛け返す。
フワッと彼の整髪料の香りがして、近づきすぎなのに気づいた。
距離を取ろうとしたら、また腕を掴まれた。
「早く戻るぞ。あんた、雪山を舐めてるだろ?」
「別に舐めてないけど……」
舐めてはいないけど、一応、人も住んでる場所だしバスもあるしとは思っていた。
でも、進藤の焦り具合にちょっと不安になる。
雪の中を三十分バス停まで戻って、いつ来るかわからないバスを待つことを想像した。ちょっとやばくない?
「わかったわよ」
ふてくされてうなずいた私の頭に、無情にも雪がひらりと落ちてきた。
あっという間に、雪は本降りになって、どんどん積もってきた。積もった雪に足が潜って、歩きにくいことこの上ない。コートのフードを被っているけど、その上にも雪が積もってきて、首を振って振り払う。
フードのない進藤の頭も白くなっていて、雪を払ってやった。
風邪引かれても困るしね!
その仕草に、彼はニコッと笑って答えた。
「お前だったら、あの話を聞いたら月曜を待たずに飛び出していくと思ってたよ。案の定だったな」
(勘違いしないでよ! 私にそんな可愛い笑みを向けても無駄よ!)
それに行動を読まれていて、腹立たしい。
本当ならコイツと月曜日からここに出張だった。でも、優位に立ちたい私は速攻ここに来たのだ。
(それで先を越されまいと慌てて来たのね)
今回はリードできると思ったのに。
ムカムカしながら、バス停を目指した。
「帰るぞ!」
「ちょっ、なによ! ブレちゃったじゃない」
彼を見上げて睨みつけると、それ以上に進藤は不機嫌そうに「帰るぞ」と繰り返した。
いつも笑みを絶やさない彼がこんな表情をしているのはめずらしい。だけど、私の前ではたまにこう苛立った顔をするかも。ファンが見たらがっかりするわよ?
「まだ中にも入ってないのに、帰らないわよ」
だいたいなんでそんなこと進藤に言われないといけないのよ。
抗議の目を向けると、ますます苛立ったように握った腕に力を入れ、進藤は言った。
「バカだな。もうすぐ雪が降り始める。こんなところで雪に降られたら、下手すると遭難するぞ?」
「バカ!?」
ムッとして、その手を振り払う。
「バカだろ? こんな薄着で冷え切って……」
そう言うと進藤は自分の着ていたダウンコートを脱いで、私に着せかけた。
(あったかい……)
彼の体温であったまっていたダウンコートに包まれて、冷え切っていた身体がブルッと震えた。
撮影に我を忘れていたけど、寒さを思い出してしまった。
「バカはあんたでしょ! 風邪引くわよ?」
慌ててコートを彼に掛け返す。
フワッと彼の整髪料の香りがして、近づきすぎなのに気づいた。
距離を取ろうとしたら、また腕を掴まれた。
「早く戻るぞ。あんた、雪山を舐めてるだろ?」
「別に舐めてないけど……」
舐めてはいないけど、一応、人も住んでる場所だしバスもあるしとは思っていた。
でも、進藤の焦り具合にちょっと不安になる。
雪の中を三十分バス停まで戻って、いつ来るかわからないバスを待つことを想像した。ちょっとやばくない?
「わかったわよ」
ふてくされてうなずいた私の頭に、無情にも雪がひらりと落ちてきた。
あっという間に、雪は本降りになって、どんどん積もってきた。積もった雪に足が潜って、歩きにくいことこの上ない。コートのフードを被っているけど、その上にも雪が積もってきて、首を振って振り払う。
フードのない進藤の頭も白くなっていて、雪を払ってやった。
風邪引かれても困るしね!
その仕草に、彼はニコッと笑って答えた。
「お前だったら、あの話を聞いたら月曜を待たずに飛び出していくと思ってたよ。案の定だったな」
(勘違いしないでよ! 私にそんな可愛い笑みを向けても無駄よ!)
それに行動を読まれていて、腹立たしい。
本当ならコイツと月曜日からここに出張だった。でも、優位に立ちたい私は速攻ここに来たのだ。
(それで先を越されまいと慌てて来たのね)
今回はリードできると思ったのに。
ムカムカしながら、バス停を目指した。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる