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御曹司も大変だ
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ブティックを出たあと、颯⽃は創作フレンチレストランに連れていってくれた。
ランチコースを頼み、⼀花は勧められるままにデザートまでしっかり完⾷する。
「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」
「それはよかった。気持ちいい⾷べっぷりだったな」
「つい⾷べ過ぎました。こんなにケーキを⾷べてたら、太っちゃいそう」
会計を済ませた颯⽃に⼀花がお礼を⾔った。
⾞に戻りながら⼀花が満⾜の溜め息をつきつつ漏らすと、颯⽃が⽚眉を上げた。
「全然太ってないじゃないか。むしろ痩せてる」
「⾁体労働が多いので、カロリーを消費してるんでしょうね」
「たしかに装花というのは思ったより重労働なんだな。今まで、パーティーや店舗の装花なんて⾒過ごしていたが、君が⼿間暇かけて作っているのを⾒ていたら、気になるようになったよ」
「それはうれしいです!」
⾃分が作ったものでなくとも、装花に興味を持ってもらえるのは⼀花にとってうれしいことだった。客先との打ち合わせ、デザイン、材料の調達、設置など、かなりの労⼒がかかっているので、その苦労が認められた気になるからだ。
「それにしても、君の歳で独⽴しているのはすごいな」
「その歳で⼤企業の副社⻑をやっている颯⽃さんのほうがすごいですよ」
「俺は家業なだけだからな」
一花は今二十八歳だ。昨年、独立したばかりだけど、業界で著名な師匠の教え子としては特に早いほうではなかった。
なにかの雑談の際、颯斗は三十二歳だと言っていた。その歳で大企業の重責を担っているほうが尊敬に値すると思った。
素直に思ったままを返した⼀花に、颯⽃が⽚⽅の⼝端を上げて答えた。めずらしく自虐的な表情だ。
それが意外で、⼀花は⾸を傾げた。
「それでも、先⽇総務部の⽅とお話ししたとき、颯⽃さんへの信頼が感じられましたよ。私が⾔うのもなんですが、しっかりやれている証拠じゃないでしょうか」
「オーナー企業の経営者側にいると、なかなか率直な意⾒を聞くことがないから、そう思ってもらえているなら有難いな」
颯⽃は⽬を細めて、いつものさわやかな笑みを⾒せた。
その表情に翳はなくなり、彼にはこっちのほうが似合っていると⼀花は思う。
(御曹司をやるのも⼤変なのね。強固なレールが敷かれていると、私みたいに⾃由にはできないんだろうなぁ)
いたって普通のサラリーマン家庭育ちの⼀花には想像もつかない世界だ。
気遣うような彼⼥の視線に気づき、颯⽃は髪を掻き上げ、不敵に笑った。
「選択したのは俺だ。仕事はおもしろいし、結局のところ、好きでやってるんだがな」
「そう⾔い切れるのはかっこいいですね」
思ったままを⼝に出した⼀花を颯⽃はおもしろそうに眺めた。
ひょいと⼿が伸びてきたかと思ったら、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ちょ、ちょっと、髪をぐしゃぐしゃにしないでください!」
颯⽃の突然の⾏動に⼀花は動揺して、顔を⾚くする。
細められた⽬が⽢い。
(親しげすぎない? あ、恋⼈設定だからか)
彼は恋⼈をこんなふうに扱うのかなと思ったら、⼀花の⼼臓は激しく跳ねて、なかなか治まってくれなかった。
⼣⽅近くに藤河邸に戻ると、警備担当だという男⼥三⼈が待っていた。
「彼らが⼆⼗四時間君に張りついている。なにかあったら、声をあげてくれ」
「⼆⼗四時間!? そこまでする必要あります?」
「君が嫌がらせを受けたのも早朝だろ? ⼈気の少ない夜になにか仕掛けてくる可能性もあるからな」
そう⾔われて、⼀花は⾃分が⽢く考えていたことに気づく。
やっぱり什器が倒れたのは⾵とか事故とかだったんじゃないかという考えが頭から抜けていなかった。
「お⼿数をおかけしますが、よろしくお願いします」
会釈をした⼀花に護衛たちは礼儀正しく挨拶を返してくれた。
結果的に適切な処置だったのがすぐわかる。
次々と嫌がらせを受けたのだ。ぜんぶ彼らが防いでくれたが。
ランチコースを頼み、⼀花は勧められるままにデザートまでしっかり完⾷する。
「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」
「それはよかった。気持ちいい⾷べっぷりだったな」
「つい⾷べ過ぎました。こんなにケーキを⾷べてたら、太っちゃいそう」
会計を済ませた颯⽃に⼀花がお礼を⾔った。
⾞に戻りながら⼀花が満⾜の溜め息をつきつつ漏らすと、颯⽃が⽚眉を上げた。
「全然太ってないじゃないか。むしろ痩せてる」
「⾁体労働が多いので、カロリーを消費してるんでしょうね」
「たしかに装花というのは思ったより重労働なんだな。今まで、パーティーや店舗の装花なんて⾒過ごしていたが、君が⼿間暇かけて作っているのを⾒ていたら、気になるようになったよ」
「それはうれしいです!」
⾃分が作ったものでなくとも、装花に興味を持ってもらえるのは⼀花にとってうれしいことだった。客先との打ち合わせ、デザイン、材料の調達、設置など、かなりの労⼒がかかっているので、その苦労が認められた気になるからだ。
「それにしても、君の歳で独⽴しているのはすごいな」
「その歳で⼤企業の副社⻑をやっている颯⽃さんのほうがすごいですよ」
「俺は家業なだけだからな」
一花は今二十八歳だ。昨年、独立したばかりだけど、業界で著名な師匠の教え子としては特に早いほうではなかった。
なにかの雑談の際、颯斗は三十二歳だと言っていた。その歳で大企業の重責を担っているほうが尊敬に値すると思った。
素直に思ったままを返した⼀花に、颯⽃が⽚⽅の⼝端を上げて答えた。めずらしく自虐的な表情だ。
それが意外で、⼀花は⾸を傾げた。
「それでも、先⽇総務部の⽅とお話ししたとき、颯⽃さんへの信頼が感じられましたよ。私が⾔うのもなんですが、しっかりやれている証拠じゃないでしょうか」
「オーナー企業の経営者側にいると、なかなか率直な意⾒を聞くことがないから、そう思ってもらえているなら有難いな」
颯⽃は⽬を細めて、いつものさわやかな笑みを⾒せた。
その表情に翳はなくなり、彼にはこっちのほうが似合っていると⼀花は思う。
(御曹司をやるのも⼤変なのね。強固なレールが敷かれていると、私みたいに⾃由にはできないんだろうなぁ)
いたって普通のサラリーマン家庭育ちの⼀花には想像もつかない世界だ。
気遣うような彼⼥の視線に気づき、颯⽃は髪を掻き上げ、不敵に笑った。
「選択したのは俺だ。仕事はおもしろいし、結局のところ、好きでやってるんだがな」
「そう⾔い切れるのはかっこいいですね」
思ったままを⼝に出した⼀花を颯⽃はおもしろそうに眺めた。
ひょいと⼿が伸びてきたかと思ったら、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ちょ、ちょっと、髪をぐしゃぐしゃにしないでください!」
颯⽃の突然の⾏動に⼀花は動揺して、顔を⾚くする。
細められた⽬が⽢い。
(親しげすぎない? あ、恋⼈設定だからか)
彼は恋⼈をこんなふうに扱うのかなと思ったら、⼀花の⼼臓は激しく跳ねて、なかなか治まってくれなかった。
⼣⽅近くに藤河邸に戻ると、警備担当だという男⼥三⼈が待っていた。
「彼らが⼆⼗四時間君に張りついている。なにかあったら、声をあげてくれ」
「⼆⼗四時間!? そこまでする必要あります?」
「君が嫌がらせを受けたのも早朝だろ? ⼈気の少ない夜になにか仕掛けてくる可能性もあるからな」
そう⾔われて、⼀花は⾃分が⽢く考えていたことに気づく。
やっぱり什器が倒れたのは⾵とか事故とかだったんじゃないかという考えが頭から抜けていなかった。
「お⼿数をおかけしますが、よろしくお願いします」
会釈をした⼀花に護衛たちは礼儀正しく挨拶を返してくれた。
結果的に適切な処置だったのがすぐわかる。
次々と嫌がらせを受けたのだ。ぜんぶ彼らが防いでくれたが。
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