62 / 62
おまけのお話
「なぁ、好きでたまらない子に花束を贈りたいんだが、どういうのがいいと思う?」
一花を後ろから抱きしめながら、颯斗が聞いてきた。
彼女が台所でコーヒーを淹れているところだった。
「ひゃっ!」
颯斗が彼女の肩に顎を乗せ、耳もとでささやくから、くすぐったくて一花は首をすくめる。
そして、振り向いて、文句を言った。
「ちょっと、颯斗さん、危ないです!」
「悪かった」
颯斗は謝るついでに、近づいた唇にチュッとキスを落とす。
甘い視線に反省の色はない。でも、顔を赤らめた一花は「もうっ」と言うだけで許してしまう。
「それで、どう思う?」
颯斗がふたたび尋ねてきた。
『好きでたまらない子』という表現にくすぐったさを感じながら一花は考える。自分のことだと素直に思えるのがうれしい。
「そうですねー、その子はきっとダリアが好きです」
「色は?」
「白なんて素敵かもしれません。白いダリアに白のラナンキュラスやニゲラを合わせて、スプラウトやファーンのグリーンでアクセントをつけたら、清楚でいいですね」
「それはいいな。清楚って言葉が似合う子なんだ」
自分の好きな花で作った花束を思い浮かべてにっこりした一花に、颯斗は同意した。
「そういう意味で言ったわけでは……」
恥ずかしくなって、一花はまた頬を染めた。色づいたところにキスをして、颯斗は目を細める。
「かわいい子だからピンクの花も入れたいな」
「だったら、コーラルピンクのラナンキュラスを入れましょう」
一花の頭の中の花束が清楚なものから可愛らしいものに変わった。
「甘すぎますね」
「じゃあ、どうする?」
「グリーンを増やしましょう」
花の好きな一花は、想像でも、花束を作っていく過程が楽しかった。
あれこれ考えて、颯斗と花束を完成させる。
そして、次のデートで迎えに来た颯斗が持っていたのが、思い描いた通りの花束だった。
「Green Showerのものじゃなくて、すまないが」
そう言いながら、花束を差し出した颯斗は花に負けずに華やかでさわやかで一花は見惚れてしまった。
受け取った花束に視線を落とし、一花は答えた。
「いいえ、同じ花を使っていても本数や長さ、束ね方でぜんぜん違うものができるので、勉強になります」
一花が甘すぎると言ったからか、茎を長めにとって、大人っぽく作ってある。とてもセンスのいい花束だ。
彼女がしげしげ眺めていると、颯斗がふっと笑った。
「勉強になるか。それはよかった」
「あっ、今のなしです! やり直しさせてください!」
自分の発言を反省して、焦った一花が彼を見上げる。
「颯斗さん、ありがとうございます。すごくうれしい!」
微笑んだ一花を花束ごと、そっと抱き寄せて、颯斗は言った。
「可愛い彼女が喜んでくれて、俺もうれしいよ」
ラナンキュラスと同じように彼女の頬が色づいた。
甘い颯斗にどうにも慣れない一花だった。
―FIN―
一花を後ろから抱きしめながら、颯斗が聞いてきた。
彼女が台所でコーヒーを淹れているところだった。
「ひゃっ!」
颯斗が彼女の肩に顎を乗せ、耳もとでささやくから、くすぐったくて一花は首をすくめる。
そして、振り向いて、文句を言った。
「ちょっと、颯斗さん、危ないです!」
「悪かった」
颯斗は謝るついでに、近づいた唇にチュッとキスを落とす。
甘い視線に反省の色はない。でも、顔を赤らめた一花は「もうっ」と言うだけで許してしまう。
「それで、どう思う?」
颯斗がふたたび尋ねてきた。
『好きでたまらない子』という表現にくすぐったさを感じながら一花は考える。自分のことだと素直に思えるのがうれしい。
「そうですねー、その子はきっとダリアが好きです」
「色は?」
「白なんて素敵かもしれません。白いダリアに白のラナンキュラスやニゲラを合わせて、スプラウトやファーンのグリーンでアクセントをつけたら、清楚でいいですね」
「それはいいな。清楚って言葉が似合う子なんだ」
自分の好きな花で作った花束を思い浮かべてにっこりした一花に、颯斗は同意した。
「そういう意味で言ったわけでは……」
恥ずかしくなって、一花はまた頬を染めた。色づいたところにキスをして、颯斗は目を細める。
「かわいい子だからピンクの花も入れたいな」
「だったら、コーラルピンクのラナンキュラスを入れましょう」
一花の頭の中の花束が清楚なものから可愛らしいものに変わった。
「甘すぎますね」
「じゃあ、どうする?」
「グリーンを増やしましょう」
花の好きな一花は、想像でも、花束を作っていく過程が楽しかった。
あれこれ考えて、颯斗と花束を完成させる。
そして、次のデートで迎えに来た颯斗が持っていたのが、思い描いた通りの花束だった。
「Green Showerのものじゃなくて、すまないが」
そう言いながら、花束を差し出した颯斗は花に負けずに華やかでさわやかで一花は見惚れてしまった。
受け取った花束に視線を落とし、一花は答えた。
「いいえ、同じ花を使っていても本数や長さ、束ね方でぜんぜん違うものができるので、勉強になります」
一花が甘すぎると言ったからか、茎を長めにとって、大人っぽく作ってある。とてもセンスのいい花束だ。
彼女がしげしげ眺めていると、颯斗がふっと笑った。
「勉強になるか。それはよかった」
「あっ、今のなしです! やり直しさせてください!」
自分の発言を反省して、焦った一花が彼を見上げる。
「颯斗さん、ありがとうございます。すごくうれしい!」
微笑んだ一花を花束ごと、そっと抱き寄せて、颯斗は言った。
「可愛い彼女が喜んでくれて、俺もうれしいよ」
ラナンキュラスと同じように彼女の頬が色づいた。
甘い颯斗にどうにも慣れない一花だった。
―FIN―
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む
華藤りえ
恋愛
塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。
ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。
それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。
神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。
だが二人に思いもかけない事件が起きて――。
※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟
※R18シーン有
※全話投稿予約済
※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。
※現在の版権は華藤りえにあります。
💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕
※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様
デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
54頁と55頁、同じ内容が投稿されてます
本当ですね!
至急直します。
教えてくれて、ありがとうございます!