2 / 52
ファッションセンスが壊滅的!②
しおりを挟む
「お客様、Lサイズだと幅が広すぎで、お身体に合わないものもございます。それにお客様の肌色とそこのマネキンの服の色味は合わないと思いますので、新たに選ばせていただけると有り難く存じます」
ここで働き始めて五年。望晴にもプライドがあった。
少しも服に興味がなさそうな拓斗だったが、それを許容して、適当なものを売るのは嫌だった。
マネキンが着ているものはイエベ用に考えたものだ。総額二十万円近くになるので、店長がわくわくしている姿が目に入ったけど、拓斗はどう見てもブルベだから似合わない。
人にはパーソナルカラーというものがあって、肌色、瞳の色などによって似合う色似合わない色があるのだ。
色白でくっきりとした黒い瞳、目力のある拓斗はブルベ冬に分類される。
それに彼は背が高いからLサイズだと言っているようだが、スリムだから、肩幅、ウエストを合わせないとせっかくのスタイルが崩れてしまう。
「買ってから合わなくて買い直すのもお金と時間の無駄だと思われます。まずは採寸させていただいたほうが後の時間の短縮になるかと」
望晴は丁寧に、しかし、きっぱり言った。
拓斗は意外という顔で、しげしげと望晴を見直す。
望晴はピンクがかった白い肌に黒目がちの大きな瞳で、髪をシニヨンにまとめているので、上品でおっとりしているように見られがちだが、意志ははっきり示すほうだ。
納得したようで、拓斗はうなずいた。
「なるほど、それは合理的だ。では、手早く測ってくれ」
「かしこまりました」
望晴はポケットからメジャーを取り出し、拓斗のサイズを測った。
手が震えそうになるのを抑えながら。
(もういい加減慣れてもいいのに)
溜め息をつきそうになるのを堪え、手を動かす。
時間を惜しむ彼を待たせないように、望晴は採寸しながら、頭をフル回転させ、拓斗に似合いそうな服を思い浮かべた。
在庫は頭に入っている。
(着やすいものがいいと言ってたから、ジョーゼットジョガーパンツはどうかしら? チャコールグレーにしたら、カジュアルになりすぎないし。トップスは綺麗めペールブルー……ううん、もっと濃い色のシャツが合いそう)
コーディネートを考え出すと、手の震えも止まってきて、楽しくなってくる。
サイズを測り終えると、拓斗をソファーに座らせて、望晴は店内のあちこちから服や小物を持ってきた。
あっという間に、台の上に二種類のコーディネートが揃う。
白Tシャツの上に深みのある葡萄色のセーター、ボトムはチャコールグレーのジョガーパンツ、黒のボディバッグとスニーカー。
デニムっぽい色の青シャツの上にシアサッカーのジレ、カーキのチノパン、白いスニーカー。
(よし、十五分に収まったんじゃない?)
満足げに望晴は時計を見た。
ここで働き始めて五年。望晴にもプライドがあった。
少しも服に興味がなさそうな拓斗だったが、それを許容して、適当なものを売るのは嫌だった。
マネキンが着ているものはイエベ用に考えたものだ。総額二十万円近くになるので、店長がわくわくしている姿が目に入ったけど、拓斗はどう見てもブルベだから似合わない。
人にはパーソナルカラーというものがあって、肌色、瞳の色などによって似合う色似合わない色があるのだ。
色白でくっきりとした黒い瞳、目力のある拓斗はブルベ冬に分類される。
それに彼は背が高いからLサイズだと言っているようだが、スリムだから、肩幅、ウエストを合わせないとせっかくのスタイルが崩れてしまう。
「買ってから合わなくて買い直すのもお金と時間の無駄だと思われます。まずは採寸させていただいたほうが後の時間の短縮になるかと」
望晴は丁寧に、しかし、きっぱり言った。
拓斗は意外という顔で、しげしげと望晴を見直す。
望晴はピンクがかった白い肌に黒目がちの大きな瞳で、髪をシニヨンにまとめているので、上品でおっとりしているように見られがちだが、意志ははっきり示すほうだ。
納得したようで、拓斗はうなずいた。
「なるほど、それは合理的だ。では、手早く測ってくれ」
「かしこまりました」
望晴はポケットからメジャーを取り出し、拓斗のサイズを測った。
手が震えそうになるのを抑えながら。
(もういい加減慣れてもいいのに)
溜め息をつきそうになるのを堪え、手を動かす。
時間を惜しむ彼を待たせないように、望晴は採寸しながら、頭をフル回転させ、拓斗に似合いそうな服を思い浮かべた。
在庫は頭に入っている。
(着やすいものがいいと言ってたから、ジョーゼットジョガーパンツはどうかしら? チャコールグレーにしたら、カジュアルになりすぎないし。トップスは綺麗めペールブルー……ううん、もっと濃い色のシャツが合いそう)
コーディネートを考え出すと、手の震えも止まってきて、楽しくなってくる。
サイズを測り終えると、拓斗をソファーに座らせて、望晴は店内のあちこちから服や小物を持ってきた。
あっという間に、台の上に二種類のコーディネートが揃う。
白Tシャツの上に深みのある葡萄色のセーター、ボトムはチャコールグレーのジョガーパンツ、黒のボディバッグとスニーカー。
デニムっぽい色の青シャツの上にシアサッカーのジレ、カーキのチノパン、白いスニーカー。
(よし、十五分に収まったんじゃない?)
満足げに望晴は時計を見た。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
取引先のエリート社員は憧れの小説家だった
七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。
その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。
恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる