不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子

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完成したと思ったら②

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 彼が図面を出力している間に、私は給湯室でコーヒーを淹れた。
 ここにはちゃんとしたコーヒーメーカーがあって、豆から挽くので、美味しいコーヒーが飲める。
 ガガーッと音がして、ミルがコーヒー豆を挽き始めると、こうばしい香りが漂った。
 こぽこぽと溜まっていくコーヒーを眺めながら、ぼーっとする。

(よく働いたなぁ。しかも、ずいぶんレベルアップした気がする)
 
 充実感に疲労さえも心地よく感じる。
 コーヒーをマグカップに注いで、冷蔵庫から牛乳パックを取り出した。
 私はブラック派なんだけど、黒瀬さんはいつもフレッシュではなく牛乳を入れるからだ。
 牛乳を入れたほうを黒瀬さんのところに持っていく。

「あぁ、ありがとう」

 受け取った黒瀬さんは一口飲んで、「うまいな」とつぶやいた。
 そして、ニヤッと笑って、私を見る。

「瑞希ちゃんもすっかり俺の好みを覚えたな」
「そりゃあ、毎日見てましたからね」
「俺のことを?」
「コーヒーの淹れ方です!」

 久しぶりの名前呼びにうかつにもドキッとしてしまう。
 なにげなく流すと、彼は意外とでもいうように片眉を上げた。

「名前呼びでも怒らないんだな?」
「……まぁ、それなりに親しくなったというか、以前と違うから……」

 私はごにょごにょと弁解した。
 実際、もう嫌悪感はなかったのだ。
 黒瀬さんは破顔した。

「瑞希ちゃんの許可が得られる日が来るなんてな。感慨深いな」
「あ、でも、”ちゃん”は止めてください。なんだかオヤジ臭いですよ、黒瀬さん」
「ひでーな。じゃあ、瑞希、でいいか?」

 ドキンと大きく心臓が跳ねた。
 さっきの比ではなくトクトクと鼓動が早くなる。
 でも、そんなそぶりは見せないで、私はそっけなく答えた。

「どうぞ、ご自由に」

 ポーカーフェイスが見抜かれたのか、黒瀬さんは口角を上げて、いつものニヤリとした笑いを見せた。
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