運命には間に合いますか?

入海月子

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迫る旅立ち①

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 守谷さんと付き合い始めても私の生活はたいして変わらなかった。
 仕事と研修、毎晩の守谷さんとの電話。
 土日のどちらかは彼と過ごすことが多くなったけど。
 なにをそんなに悩んでいたのだろうと拍子抜けするほどだった。
 むしろ、あれこれ悩む時間がなくなって、集中力が上がった気がする。
 名前だけ知っていた妹の美奈子さんにも会わせてもらった。
 彼女は元気な感じのいい女性で、笑うと守谷さんそっくりだった。
 私たちの交際はとても順調に進んでいた。
(それでも、もうすぐ超遠距離恋愛になるのよね……)
 スペインに旅立つときが近づくにつれ、私は楽しみな気持ちとさみしい気持ちに揺れ動いていた。
 距離はもちろん時差も大きく、昼夜逆転しているので、休みの日ぐらいしかまともに電話できない。
(守谷さんは待っていてくれるかな?)
 強い絆を作るには三カ月弱という期間はあまりに短すぎた。
 彼を疑うわけではないけれど、私のいない間にせっかちで行動力のある守谷さんがほかの人に惹かれないとも限らないのだ。魅力的なこの人を周りの女性が放っておくはずがないから。
 そんな私の不安を察したのか、守谷さんは事あるごとに愛をささやいてくれた。
「好きだよ、優那。俺はちゃんと待てる」
「守谷さん……」
「翔真だ」
 付き合うようになってから、お互い名前で呼ぶことにしていた。私のほうはなかなか癖が抜けなくて、つい苗字で呼んでしまうけど。
「翔真さん、私も好きです」
「気が短い俺だが、君に関しては待つのが苦にならないんだ」
「でも……」
「安心してくれ。俺はいい子で待ってるから。ハチ公のように」
 なんとか私の気を軽くしようという彼の気持ちを感じて、うれしくて切なかった。そのたびに私は泣き笑いのような顔で翔真さんにしがみついた。
 そして、とうとうスペインへ旅立つ日が翌日に迫った。
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