49 / 171
第一章 ― 優 ―
魔法みたい①
しおりを挟む
誰かが自分の作ったものをおいしそうに食べてくれるのって、なんだか幸せだな。
ニコニコと先輩を見ていたら、「そんなに見られていたら食べにくい」と先輩が文句を言った。
私は慌てて自分のおにぎりにかぶりついた。
「あー、梅干しだった。おかかがよかったのに」
「自分の好きじゃないものを入れたのか?」
「だって、おにぎりには梅干しは一個ぐらい入ってないと……。様式美ってやつ?」
「なんだそれ」
遥斗先輩があきれた顔をしながらも、自分の食べていたおにぎりを差し出して、私の梅干しおにぎりを奪っていった。
先輩の一口かじったおにぎりはおかかだった。
おかかおにぎりをもらって、じっと見る。
先輩って、こういうの全然気にしないよね……。
ま、いっか。
私はおにぎりをかじった。
やっぱりおかかはおいしい。
「そういえば、バイトの面接はどうだったんですか?」
「あぁ、採用になって、今日の昼前から行く」
「よかったですねー!」
弾んだ声を上げると、先輩も頷いた。
「ちょうど土日は人手が少なくて困っていたそうだ」
「じゃあ、このお弁当は夜にでも食べてください」
お弁当を指し示すと、遥斗先輩の眉間に皺が寄った。
「バイトも決まったし、来週はこんなことしなくていいからな」
「わかりました。でも、私のおせっかいは続きますよ?」
一応、予告しておく。
先輩はなんとも言えない顔で、肩をすくめた。
食後に、持ってきた画材を広げる。
「まずは水彩絵の具、水彩紙、あとパステルとか油絵具もあったんで持ってきました」
「なんでそんなに持っているんだ?」
「叔父さんが画廊をやっていて、その影響で一時期絵を描こうと思い立ったんですが、いまいちで、画材を変えたらいけるかなと次々と買っちゃったんです。結局、全部向いてなかったんですが」
私は苦笑して、先輩に画材を押しつけた。
「先輩に水彩であの花を描いてもらいたいんです。あ、花がこんなにあると時間がかかりそうだから、一輪でいいんですけど」
「別にいいが、なんでだ?」
「ふふっ、絵で稼ごうかと思って」
「稼ぐ?」
先輩は眉をひそめる。
「具体的になったら説明しますよ。とにかく描いてください!」
花瓶に活けた花から一輪の薔薇を取り出して、持ってきた空き瓶に活けなおした。
それを机の上に置く。
先輩は不満そうだったけど、水彩セットからパレットを取り出して、絵の具を出すと、準備を始めた。
キャンバスに水彩紙を置くと、先輩の手は魔法みたいになった。
ニコニコと先輩を見ていたら、「そんなに見られていたら食べにくい」と先輩が文句を言った。
私は慌てて自分のおにぎりにかぶりついた。
「あー、梅干しだった。おかかがよかったのに」
「自分の好きじゃないものを入れたのか?」
「だって、おにぎりには梅干しは一個ぐらい入ってないと……。様式美ってやつ?」
「なんだそれ」
遥斗先輩があきれた顔をしながらも、自分の食べていたおにぎりを差し出して、私の梅干しおにぎりを奪っていった。
先輩の一口かじったおにぎりはおかかだった。
おかかおにぎりをもらって、じっと見る。
先輩って、こういうの全然気にしないよね……。
ま、いっか。
私はおにぎりをかじった。
やっぱりおかかはおいしい。
「そういえば、バイトの面接はどうだったんですか?」
「あぁ、採用になって、今日の昼前から行く」
「よかったですねー!」
弾んだ声を上げると、先輩も頷いた。
「ちょうど土日は人手が少なくて困っていたそうだ」
「じゃあ、このお弁当は夜にでも食べてください」
お弁当を指し示すと、遥斗先輩の眉間に皺が寄った。
「バイトも決まったし、来週はこんなことしなくていいからな」
「わかりました。でも、私のおせっかいは続きますよ?」
一応、予告しておく。
先輩はなんとも言えない顔で、肩をすくめた。
食後に、持ってきた画材を広げる。
「まずは水彩絵の具、水彩紙、あとパステルとか油絵具もあったんで持ってきました」
「なんでそんなに持っているんだ?」
「叔父さんが画廊をやっていて、その影響で一時期絵を描こうと思い立ったんですが、いまいちで、画材を変えたらいけるかなと次々と買っちゃったんです。結局、全部向いてなかったんですが」
私は苦笑して、先輩に画材を押しつけた。
「先輩に水彩であの花を描いてもらいたいんです。あ、花がこんなにあると時間がかかりそうだから、一輪でいいんですけど」
「別にいいが、なんでだ?」
「ふふっ、絵で稼ごうかと思って」
「稼ぐ?」
先輩は眉をひそめる。
「具体的になったら説明しますよ。とにかく描いてください!」
花瓶に活けた花から一輪の薔薇を取り出して、持ってきた空き瓶に活けなおした。
それを机の上に置く。
先輩は不満そうだったけど、水彩セットからパレットを取り出して、絵の具を出すと、準備を始めた。
キャンバスに水彩紙を置くと、先輩の手は魔法みたいになった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる