全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

希望②

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 おにぎりを食べ終わると、昨日優が聞いてきたアドバイスを元にページを作っていく。

「あーっ、肩こった! これくらい作り込めばいいんじゃないですか?」
「そうだな。十分だ」

 んー!と肩を回しながら優が言い、俺も伸びをしながら答えた。とりあえず、写真を撮った絵の商品ページはすべて完成した。

「ねーねー、先輩。じゃあ、これから川辺に新緑を描きに行きませんか?」

 ほっとひと息入れていると、優がまた突然の提案をしてくる。

「はぁ? じゃあって、どっから出てきたんだ」
「昨日、帰りに寄ったら、新緑がとても綺麗だったんです。新緑が綺麗なのはこの一瞬だけですよ?」

 前に見せてもらった川のキラメキと新緑の鮮やかさを思い出して、ちょっと心惹かれる。

「それに前に約束したじゃないですか!」
「あれはお前が勝手に……」
「お弁当も持ってきたし、あそこで食べましょうよ。新緑をバックに遥斗先輩の写真も撮りたいな」

 そう言われるとモデルをしないわけにはいかない。
 俺はしぶしぶ頷いた。
 「まったくお前は次から次へと……」とぶつぶつ言いながら。

「やった!」と優はガッツポーズを取り、俺に準備するよう急かした。
 手早く描けるので、水彩を持っていくことにして、紙袋に入れた。



 優と外を歩くのは初めてだ。
 今日は快晴で5月の風は寒くもなく暑くもなくとてもさわやかで気持ちがいい。

 自転車で行くか聞かれて、乗ったことがないと言うと、優は泣きそうな顔をした。
 いちいち俺のことでそんな顔をするなよ。
 『お兄ちゃんの自転車で練習してみます?』と聞かれるが、黙って聞き流した。


 しばらく歩くと川辺が見えてきた。
 優が走り出して、うれしそうに振り返る。

「ね、先輩、綺麗でしょ?」

 川も新緑も優もすべてがキラキラしていて、頬を緩めた。
 俺がその景色を眺めていたら、おもむろに優が俺の写真を撮り始める。真正面から撮られるのは初めてで、面映くなり「荷物ぐらい置かせろ」と文句を言った。

 堤防を下りると、優は荷物からビニールシートを取り出し広げた。それを手伝いながら、
「こんなものまで持ってきていたんだな」とあきれたような感心したような声を出す。

「ピクニックみたいでいいでしょ?」

 機嫌よさそうに優は笑った。
 なにもかもきらめいてまぶしくて、俺は川の方を向いた。
 川からのそよ風が頬をなでさする。

「お昼過ぎたし、お弁当食べますか?」

 こんなところで弁当を食べるのは開放感があって、気持ちいいな、きっと。
 気がつくと微笑んでいた。

「ジャーン! 今日はサンドイッチでーす。おいしそうでしょ? 先輩の好きな唐揚げもありますよ」

 草むらに座って優と食べる弁当はどれも美味しかった。
 特に会話が弾んだわけでもないのに、穏やかで優しい時間だった。
 一生大事に取っておきたいような。

 食後は、優は写真を撮ったり、四つ葉のクローバーを探したり、うろうろしていたが、俺はイーゼルを立て、川辺全体の絵や、水面だけを切り取った絵、優がいる景色を描いた。
 優はなかなか一箇所に留まることはなかったが、川を眺めてぼーっとしている瞬間を描いた。
 そういえば、人物画ってほとんど描いたことないな。

 俺の絵の中に自分を発見して、優はやたらと恥ずかしがっていた。

 夕暮れが迫り、暗くなってきた頃に、俺たちは学校に戻った。

「それじゃあ、先輩、また明日」
「じゃあな」

 自転車置き場の前で別れた。
 
 ………今日は楽しかった。




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