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レキ

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プロローグ

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『はぁはぁはぁ………っ』


 瞼を開くと不意に差し込む光の矢に反射的に右手が世界を暗闇へと誘う。


 心臓がまるでぶっ壊れるかと思うようなムチャクチャに速い心拍数、100メートル走をこれでもかってくらい走らされたかのように乱れた呼吸。

 しばらくしてそれがどうにか落ち着くと世界を遮る右手をゆっくりと動かす。


するとそこにはどこまでもつづく青、青、青…。



 果てしなく無限に広がるその青は、手を伸ばせば届きそうな、それこそ今にも落ちてきそうなくらい近くにある気がした。


『…なんだってんだクソっ!!』



オレはその青に向かって可能な限り叫んだ。




5月のゴールデンウイークを過ぎた日曜日の昼下がり…


車通りも少ない国道の、見通しも悪くないゆるやかなカーブ。

けして【魔のカーブ】と呼ばれたり、【死亡事故多発】の看板が立つにはまったく無縁なほどのゆるやかで見通しのよいカーブ。



でも、



そこにはガードレールに突っ込んだ一台のバイク。



そして…


大の字で仰向けに倒れている血塗れのオレ。



タイヤだけが力無くカラカラと廻っていた。




ようやくオレのしがない脳ミソが現状を理解し、身体に次の行動の指令を送る。指令通りゆっくりと身体を起こそうと、左腕を地面に着いた瞬間、激痛が走る。


『ぁがっ…』


言葉にもならないような声をだすと、またペタリと地面に倒れこむ。


『イッテ~~~っ』


左腕に走る鈍い激痛。

今まで腕をバキッ、あばらをミシッ、足をグキッ、包丁でズバッ、幾度かのケガを体験してきてはいるがケガってもんはとりあえず痛いもんである。痛いランキングをつけろと言われても今現在の痛みにオレは順位をつけられるわけがなかった。


以前テレビか雑誌かなんかで見たんだが、ヒトって生物は視覚からの情報によって下手すればショック死するようなケガもあっちゃうワケらしく、とりあえずどの程度のケガなのか見ようと思ったのだがさすがに見たくもない。


『くぅ~っ…』


痛みをこらえながらどうにか起き上がる。まずは状況の整理だ。


たしかオレはバイトへ向かう途中だった。


いつもは駅前の通りを使うのだが今日は野暮用があって少し遅刻気味だったのでいつもは使わないこの道を使ったのだ。


少しスピードをあげてメーターの針が60を指したくらで左カーブに差し掛かる。いつも使ってないとはいえ何度も走ったことのある道だ。このカーブが緩いことも知っている。


身体を左に傾げ、あえてアクセルを開ける。


それが間違いの元凶だった。


左カーブの途中いきなり後輪が滑りだしそのまま転倒。


そしてアスファルトの地面に時速60キロ近いスピードでのスライディング。


対向車線をシカトして吹っ飛んだオレは道路にシマシマがひいてあるゼブラゾーンに、バイクはもう少しいったガードレールに…


対向車がいたら死んでたかもしれないな…


脳裏を《死》というイメージがよぎったりしたがまぁそれより今は現実だ。


なぜ滑った?


中学生の頃、全力でチャリをこいでた時、雨が降ったあとのマンホールで滑って転んだことはあったがここ最近雨なんか降った記憶もない。見ての通り五月晴れだ。


キョロキョロと辺りを見回すとあるモノが目に入ってきた。


『…コイツのせい…か』


カーブの入り口にあったソレを見つけるとオレは落胆のため息をつく。


砂たまり…


ちょうどそこだけがくぼんで風で運ばれた砂がそこに溜まったんだろう。


なるほど…この砂でタイヤが滑って転倒したんだ。



『マジかよ、まだ買って一ヶ月だぞ…』


ってかよく考えたらこれはどう考えても国土交通省に責任有りだろ?いわゆる《道路管理の瑕疵》にあたるんじゃないのか?


意味もなく新しい道路を作るくらいならこういう既存の道路を新しく舗装しなおすなりしやがれってんだ。


オレたちの血税をなんだと思ってる!!


なんてこの間テレビで知った無駄な知識を展開しつつ、今の現状を整理しつつまた1つため息をついた。



オレの名前は高村 涼


名前の由来は


《常にクールにカッコよく生きていけるように!!》


ってことで《涼》と名付けたとオヤジは言ってるが、実はオカン曰わく、この《凉》って字と間違えて役所に提出してしまったらしい。

普通、息子への最初のプレゼントたる《名前》を間違えた字で提出するか?とオヤジに文句を言いたいトコロだがすでに時効は成立してしまっている。

まぁ実際、点が1つ増えようがオレはまったく気にしないし、むしろ後付けの由来通り《クールにカッコよく》生きてやろうじゃねぇかとさえ思う。


まぁ名前の由来以外はたぶん、ごくごく普通の16歳の高校2年生だ。


身長は173センチ、中学ではバスケ部に所属。ポジションはガードで3ポイントシューターだったりしたんだがワケあって高校に入ってからは部に所属していない。


オレは中学卒業と同時にすぐにバイトを始めバイクの資金を貯め始めた。

16歳の誕生日を迎えると同時にソッコーで免許取得のために教習所へ。もちろん学校にはバレないように少し遠めのトコに通ったりした。


そこにはやっぱりオレと同じようなヤツもいて、ほとんどはヤンキー入ってるヤツばっかだったけど、まぁ変なヤツが多かった。スキなバイクを語ったり、4輪の免許を取りにきてる3年生のお姉様と仲良くなってみたりってケッコー楽しかったな。




バイクは中学卒業と同時に始めたバイトでコツコツ貯めた金で親父の知り合いのバイク屋からドラッグスターを50万で購入!!

新車にはさすがに手が届かなかったが、オレが中学んときからずっと店頭に飾ってあったヤツを熱意のこもった交渉にてかなり値引かせた。そっからコツコツとハンドル変えて、マフラー換えて、シート換えたりとその他もろもろひっくるめて20万くらい。

高校生にしちゃかなりでかい買い物だろう。でも免許取って、バイク買って浮かれてたんだろうなぁ…


『はぁ~っ、これダイジョブかなぁ…つっう!?』



バイクの方に歩み寄ろうあと足を踏み出そうとすると激痛が走る。


左膝がグチャグチャだ。


デニムがクラッシュデニムになっちまってるしTシャツなんかは血塗れで所々が破れている。
    
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