仮面症のノベル

ナヒジキ

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第5話 やっぱり人は人

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第5話 やっぱり人は人
「はい授業始めるぞ~、今日は藤ヶ谷は休みだから」
つなしがダウンで授業は始まった
そのお陰で英語の時間の日本語訳は一個早く進んで構えていた人には迷惑だった
「全く何しているのよ、あのバカつなし」
「まぁ風邪気味の人と一緒に仕事していたし、あの寒さをブレザー無しでさらに自転車で飛ばしたからね」
「そういえば見つかったの?」
「捕まったらしい、そして制裁を喰らったって」
写真を見せてもらったが結構怒りが篭っている事がわかった
昼休みが開けると待ちに待った英語だった
「やばっ、教科書忘れたっほい」
「何やっているの鈴、貸すことできないよ」
「今から違うクラスに行ったら間に合わないか、つなしに賭ける」
置き勉だがつなしの机の中はきちんと整理されていて英語の教科書も入っていた
「やった、これでなんとかなる」
「確か今日は24ページの文章だったね」
つなしの教科書を開いてみると思っても見なかった事が在った
「ここってやらなかった?」
「いや、やってない筈だぞ」
気になってパラパラめくる結果は全て同じだった
「つなし、英語の教科書の日本語訳、それと小問題全部終わらせてある・・・」
「えっ!?マジか!!」
「まだ授業始まって一ヶ月しか経ってないよ」
外国語が話せる事は知っていたが既に英語の単位はクリア出来る位だったのか・・・
私達の会話に反応してかクラス全員が寄ってくる
『本当だ、全部日本語訳がしてある』
『これ回せばこれから先難関はテストだけになるぞ』
『俺の間違いだったのか・・・怒られずに済んだ』
今は時間がないから範囲だけを担当者に教える
教員も全員正解なので少し不審がっていたがそれが普通なのでバレることはなかった
「終わった終わった」
「鈴村、つなしのお見舞い行くけど行くか?」
「そうね、保育園の近くって言っていたから特に問題はないね。それにしても珍しいね、創路がそう言うなんて」
「いやさっきメールしたら知らないPCメール『だいおjうぶ、紋だ否し』って来たから」
「パソコン、っていうことは」
・・・・・あいつ、仕事しているな
「何何?何の話?」
「つなしのお見舞い、佐々森も来るか?」
「八代くんも連れて行く?」
「騒ぎになるからやめなさい!」
「じゃああまり多くで行っても迷惑だし、早めに行かないと」
つなし、しっかりと治してもらわないと
と言うかパソコンやってないで寝てないと治らないでしょ

マンションの702号室、ちゃんと藤ヶ谷と書いてある
「よし、ここみたいね」
何でマンションを知っているかと言うと母に会ってきてさらに鍵まで借りてきた
母親も絶対に仕事していると踏んでいる
だから私達は今からそれを肯定しに行き、やっていることを否定する
「入るか」
鍵を開けると創路がダッシュでつなしの部屋に入り込む
それと同時に叫び声がこだました
行ってみるとつなしはベットから落ちて布団の中で死んでいる様に倒れていた
近くには体温計が39.3℃と表示されていた
「おい、洒落になってないぞ!!」
「あっ、大丈夫大丈夫。病気じゃ死なないようになっているから」
「それ確証あるの?」
「・・・ない」
「じゃああり得るだろ!!」
ベットに戻すとくるまる様に布団を被った
「薬は飲んだの?」
「飲んだ、だけど効果はない」
「重症だね、本当に死にそうだね」
「「やめろ、洒落になってない」」
45度を超えると臓器が壊れるから体温計は45度までしか測れない
「じゃあ台所借りるわよ」
「どうして?」
「あんたのためにお粥作るんでしょ」
「あっ、ありがとう」
台所に行くと3人となる
「正直なこと聞いていい?創路はつなしの過去の話は聞いたの」
「話したよ、逆に佐々森は八代からどこまで聞いたの?」
「琴美でいいよ、具体的には事故の話とそのあとの病院の話、そして卒業間際の話」
「大体同じみたいだな、つなし以外は海外に行っていたんだよな?なんでお前は日本に残ったんだ?」
「英語も話せるんだからアメリカとかイギリスに行けたはずだよね」
「そんな事考える暇さえ与えられていなかったから、それに全員居なくなったら先生も・・・」
そこで止まった、そして紛らわせるかの様に鼻をかんだ
「まぁ本当は8年前にも生命の危機があったんだけど、そこは話さなかったみたいだな」
「さらっと爆弾発言したな」
「それはおいおい話すよ、だから今は・・・」
コトンと眠りに落ちた、いきなりで何が起きたのか理解する間もなかった
「つなしって結構辛い人生送っているんだよね」
「庶民からは想像も出来ないほどにな、でも不思議だよな背負っているもの」
言っていた通り、必然的に殺させそうになっている
毎日、いつ死ぬか分からない恐怖の中で生活しているのにあの落ち着きよう
いくら精神に支障があるからといってあれはおかしい
「出来たわよ~って眠ったの」
「今さっきね」
「ならしばらくは起きないよね」
確認するとパソコンを立ち上げる
「鈴、勝手に触ると怒られるよ」
「大丈夫よ、怒らないと思う」
「いや普通に怒ると思うぞ」
「それでつなしのパソコンで何調べるの?」
「5巻はもう少しで発売だから6巻をいま製作中の筈なのよ、それを盗み見る」
「それって普通に犯罪じゃあ」
「友達権限でなんとかなる、5巻の時も普通に見せてくれたし」
立ち上がるとすぐにログイン画面が表示される
『パスワードを入力れてください』
「何かな?」
「つなしだから『274』じゃない?」
入力してみるとブブッという音の後に残り2回という文字が表示される
「やっぱつなしの好きな言葉じゃないのか?」
「つなし、お前の好きな言葉ってなんだ?」
「何だよいきなり」
「交流の一貫」
「パピルス」
「「「パピルス!!?」」」
パピルスとは『カミガヤツリ』の別名
植物の一種で古代エジプトでは最古の紙の原料となっている
紙を意味する、英語『PAPER』やフランス語『PAPIER』はこの語に由来する
「パピルスだって」
PAPIRUSUとしっかり入れてみる
結果は不正解で回答権がまた一つ失われた
「他に何かないのか」
「八代君にも聞いてみたけどさっぱりだって、ハッキングしていいのならやるけどだって」
「いや、そこまではしなくていいから」
「あれ?よく見るとなにか表示されたぞ」
下の表示では運命の日と書かれている
「運命の日って意味不明な単語ね」
「結婚する日とか」
「つなし、今彼女いないって」
「大丈夫、みんな知ってる」
あと運命の日って・・・・・
「「事故の日だ!!」」
「なによ2人ハモッて、それに何よ事故って」
「佐々森、あの事故の日って何月何日だ?」
「待って今聞くから」
しばらく経つと回答が返ってきた
「『9月20日』か『3月17日』だって」
「なんで二つ?」
「初めは事故の日で9月20日が出てきたけど運命の日って聞いたら3月17日もありえるって」
そこでいくつかの壁が出現してくる
第一にどちらか2つが正解だがどちらだか分からない
9月20日は"運命を知らされた"日
3月17日は"運命が証明された"日
それに月が一桁なので初めに0が付くか付かないかの問題も出てくる
「もうここは感でいくよ」
鈴村は意見を聞かずに『0920』と打ち込んだ
そしてEnterキーを押そうとした瞬間手を止められる
「つなし、何してんの?」
「いやこっちのセリフですよ」
熱冷ましシートを取って体温を測ると平熱近くまで下がっていた
「大丈夫なの?」
「大声で目が覚めたけど具合も戻ってるし問題ない、それで何してんだ?」
「私達はつなしのパソコンを探ろうと」
「それで0920か0317かで迷ってたんですか」
「そういう事だ」
「でも両方共違ってたからあのまま入れたら強制終了されて再起動出来なくなってたから」
数時間すればまた立ち上げることは可能となる、八代特性セキュリティー
「なるほど、それでログインしてみてよ」
「病気だし、やることないから」
手を離して重力でEnter周辺のキーを押させた
警報音が鳴り、終わると画面が真っ暗になった
鈴村さんは燃え尽きてただ見ていることしかできなかった
「そうだ、今日休んだから授業内容教えとかないと」
「体育はいいとして今日は英語と古文、社会か」
「英語はもう終わらせていたね」
「俺のモノを見ることが流行っているのか?」
「今日のは仕方ないわよ、教科書忘れちゃったんだから」
「本当なら信じるが・・・さっきのを見ると、ねぇ~」
「信じてない、いや信じられないよな」
「創路もそっち派か!」
「英語は良いとして数学は方程式の説明だったね」
「これがね、難しかったんだよ。何回も鈴に聞かないと分からなかったんだから、説明するとね」
「いや、良いです。もうそこの次の次の計算問題を終わらせていたので、どこまで進んだかが分かれば」
「正直な所、何の為に学校に来ているか分からねぇぞ?」
勉強が出来ることが定義された
そしてそれはクラス内にも伝染していることは分かった
「起きたのならお粥作ったから食べなさい」
「ありがとう」
パクっと一口食べた瞬間、口に入れたものを戻した
一瞬吐いたのかと思った
「まっ!!」
次に『ず』と言う前に言葉を止まらせる
せっかく作ってくれたんだからそんなことは言えない
大丈夫、一気に流し込めば味覚を感じずに済む
温度を確認して一気に飲み込んだ
「そんだけ食べられれば、大丈夫ね」
「あぁ、そうですね。これを食べられればね」
入れ違いで台所に行っていた琴美がその食べ物の異変に気が付いて走りこんだ
「鈴、作り方色々と間違えているでしょ」
「えっ?違うの!?」
「やっぱりか」
何か再確認したら吐き気がしてきた
創路に背中を摩って貰ってすっきりした
「うわっ!つな兄ちゃん病気?」
「うん、だからあまり近づかない方がいいよ?」
母親が帰ってくると同時に雅人くんも家に上がってくる
鈴村さんも俺の家にいるからか
保育園の園児と一部の人には全員このあだ名で覚えられている
「死んじゃうの?」
「死にはしないよ、ただ感染ったら苦しいよ」
「感染ったらどうなるの?」
こちょこちょと脇腹をくすぐった
「感染ったらもっと酷くなるよ」
子供を逃す事に成功したが近付くなと言って自分から近付いた俺には頬に軽い制裁があった
女子2人は母親と雅人くんの相手をするために部屋から離れた
「創路は俺の看病のために残ってくれたのか?」
「いや、そういう訳じゃなく・・・そういえばメールどうしたんだよ?」
「携帯メールは始め、パソコンに行くからそこから返事を返した」
そうかと言って話が止まる
しばらく沈黙が続く・・・
「お前って好きな奴いるのか?」
「それ佐々森、琴美にも聞かれたよ」
何?俺の素性探るのマジではやっているの?地味に怖いんだが
「・・・俺は特にそういう人はいないかな?創路は?」
「睦美・・・って言ったらどうする?」
「いろんな意味でよろしく」
「どういう事だよ!?」
「その場合は睦美の気持ちも考えてやらないとだからな」
「いや、冗談だから」
「俺に恋とかは縁無いだろ?俺オタクで根暗な印象埋め込んでるし」
「最近、明るくなったってクラスで有名だぞ」
「うわっ!!目立ちたくねぇ!!!」
「多分俺等の性で」
「責任取れや!」
すぐに遠くから『うるさい』という言葉が響いた
確かに盛り上がってうるさかった気がする
「もう全部さらけ出せばいいだろ?」
「そんな簡単な話じゃないんだよ、俺自慢する訳じゃないけど超売れている小説家だぞ?正体明かしてないの運命の性だけじゃなくってパニックを無くすためにしているんだぜ?」
「確かにお前が有名人って聞いた時、始めは信じられなかったしな」
「それに俺は地味なイメージで学校生活を過ごしたい」
「そっちが本音だろ」
俺の部屋に人を上がらせるのも何時振りか・・・
運命の事を話してそれでも一緒にいてくれるんだよな、皆は・・・

その日の夜、とある夢を見た
俺が望んだ通りになった未来が映し出されていた
誰にも関わらず、クラスの奴も誰も俺に関わろうとはしない
『藤ヶ谷って暗いからな』
『何考えているか分からないし』
『男のクセに髪が長いとか気持ち悪い』
聞かせているのか陰口なのか分からないがちゃんと聞こえている
そんなことじゃあ俺の心は全く動かなかった
だけど夢だと分かっていてもそれだけは悲しかった
創路、琴美、鈴村さんがいつもとは違った行動をしている
夢だとはわかっていてもそれをついつい忘れてしまう
誰に無視をされても何も感じなかったがこの3人だけは違った
目が覚めると涙が流れた
『一人じゃ出来ない事も誰かとやればきっと出来る、奇跡だって起こせる』
12年前、俺じゃない誰かが言ったセリフ
なんで今俺はこんな事を思い出したんだろう
それは前から聞いてあったセリフだったが琴線に触れていた
あいつ等は不思議な人達だ、こんな俺を必要としてくれる
カッフー?まぁいてもいいかなランクだな

「あっ、おはよ~つなし」
教室に入った途端、最初に気が付いて声をかけてくれた
「つなし宿題やった?」
「宿題!?」
「あぁ~、これは怒られるパターンだ」
「いや聞いてないから」
「鈴、宿題見せて!あ、おはよう、つな」
「しを付けて、しを」
「えっ?つなし死にたいの?」
「そっちじゃなく!!しかもそれは子供に呼ばせている奴だから」
「おーつなし、おはよ」
「おはよ、創路。それで今日の宿題ってどこ?」
出された宿題範囲を聞いた
よし、ここはもう終わらせてあるぜ
「なんだよその顔、終わらせている所だな」
「さぁどうだろうね~」
「実は俺も忘れて鈴村に聞こうと思ったから、だから見せてくれ」
「公式が難しいからね、それに昨日看病してくれたしいいよ」
「おっ、何かつなしの方が答え合ってそう」
「琴美、そんなこと言うのならもう見せないよ」
「それは困る」
わいわいとしていて他のクラスメイトも驚いていた
少し前までは根暗だった奴がいきなり普通に話していた
それほどの驚きをした行動が俺にはあった
『藤ヶ谷くん、私達もいい?』
「あっ、いいですよ。あぁ、でも全員正解だと逆に怪しまれる可能性が・・・」
『大丈夫だって、昨日だってお前の教科書の翻訳全部正解だったから』
「そうだったんですか」
宿題は普通家でやるものだが殆どの奴等が学校でやっていた
小さな授業みたく分かりやすく説明して相手に分からせる
答えを教えるだけじゃなく理解してもらう
数学の宿題はこれで難を免れた
昼休みが終わるとLHR(ロングホームルーム)の時間になる
今日の話は来週行くことになる修学旅行の話だ
班は5人組で男女混合でも問題ないらしい
「という訳でこの4人にさらに一人加わります」
「どうも~紀ノ国航太(きのくにこうた)です、よろしく」
同じクラスで基本いつもハイテンションでよく知っている
登校中はよく音楽を聴きながら歩いている、時々踊る
「航太も幼馴染みたいなもので昔はよく遊んだ仲だ」
「そうなんですか」
「藤ヶ谷っていつも敬語だよね」
「まぁそうですね」
「同い年なんだからタメででいいだろ?オレつなしって呼ぶ」
「いや、そんないきなりは」
「はいダメ~、今からこの場は敬語禁止だから」
「えっ、それは・・・」
うるささとハイテンションだけが取り柄だったが初めて航太を羨ましいと思った
たった数秒でつなしをここまで追い詰めて壁を突破らってタメに切り替えさせるとは・・・
このメンバーなら多分つなしも昔のことを思い出さないだろう
つなしには辛い過去を乗り越えて旅行に行って欲しい
これは俺と佐々森の気持ちとアイデアだった
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