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第壱章:下克上国王親娘とロートル魔道士
6.魔道士ウェルズビル(3)
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そのボロを纏った男こそ魔道士ウェルズビルであった。彼はこの世界で五本の指に入る魔導士と称賛されていたのは遠い昔で、今では依頼すらほとんど来ない状態に落ちぶれていた。だからリョーグ・ヴェルグ王国の依頼を受けたのかもしれなかった。ちなみに彼の家があるのは王国の隣国のカペイク公国の僻地で、半ば強引に国王一行は強行突破してきていた。
そのウェルズビルにルドルフが降りて行って激しい雨の中を近づいていった。祭壇の周りには粗末な屋根が付いていたので、国王母娘の馬車はそこに横づけしようとしたところ、なぜかウェルズビルの方が近寄って来た。
「ほう、あんたさんがリョーグ・ヴェルグ王国国王だというんかい? なんだか逞しいのお! たしか今の国王ってウランフ5世でなかったかのう?」
その言葉にガイル三世は呆れていた。その国王が在位していたのはもう半世紀以上も前の事であったからだ。
「違います! 魔道士様! それは四代前の国王ですよ! 私は先日即位したばかりのガイル三世です。申し遅れましたが横にいるのは娘の王太子エルザ=ナオミです」
そう紹介されエルザ=ナオミが場所の外に目をやると、脳裏に少し前の出来事が思い浮かんで怒鳴り始めた。
「魔道士様って、三か月前にあたいが大事にしていた泉陽桃の木を台無しにしたおっさんじゃないのよ!」
そういって彼女はウェルズビルに駆け寄っていった。雨が少し小ぶりになっていたとはいえ濡れるのも厭わずに。
「泉陽桃って、あんたはあんときの果樹園のじゃじゃ馬娘?」
「そうよ! 通りすがりのおっさんに依頼したのもバカだったけど、おっさんは依頼通りにやってくれないから、ダメになったんじゃないのよ! あの時支払った銀貨二枚を返して!」
ガイル三世もルドルフも何の話なんか訳も分からず呆然としていた。その前で元農民の王太子の娘と年老いてしまった魔導士がもめていた。
そのウェルズビルにルドルフが降りて行って激しい雨の中を近づいていった。祭壇の周りには粗末な屋根が付いていたので、国王母娘の馬車はそこに横づけしようとしたところ、なぜかウェルズビルの方が近寄って来た。
「ほう、あんたさんがリョーグ・ヴェルグ王国国王だというんかい? なんだか逞しいのお! たしか今の国王ってウランフ5世でなかったかのう?」
その言葉にガイル三世は呆れていた。その国王が在位していたのはもう半世紀以上も前の事であったからだ。
「違います! 魔道士様! それは四代前の国王ですよ! 私は先日即位したばかりのガイル三世です。申し遅れましたが横にいるのは娘の王太子エルザ=ナオミです」
そう紹介されエルザ=ナオミが場所の外に目をやると、脳裏に少し前の出来事が思い浮かんで怒鳴り始めた。
「魔道士様って、三か月前にあたいが大事にしていた泉陽桃の木を台無しにしたおっさんじゃないのよ!」
そういって彼女はウェルズビルに駆け寄っていった。雨が少し小ぶりになっていたとはいえ濡れるのも厭わずに。
「泉陽桃って、あんたはあんときの果樹園のじゃじゃ馬娘?」
「そうよ! 通りすがりのおっさんに依頼したのもバカだったけど、おっさんは依頼通りにやってくれないから、ダメになったんじゃないのよ! あの時支払った銀貨二枚を返して!」
ガイル三世もルドルフも何の話なんか訳も分からず呆然としていた。その前で元農民の王太子の娘と年老いてしまった魔導士がもめていた。
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