ヘレンと奈津 -老婆から転生して主人とやり直したいと思ったのにあの人は浮気者でした!ー

ジャン・幸田

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参章:あの人と一緒にいられるのなら

35.覚醒したけど

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 ルドルフが和夫さんの転生体と知って自然と涙が出てきた。元の身体は塵に帰っても魂だけは別の器である身体を得てこうして抱きしめている幸せを感じていた。そして本当ならいろんなことを話をしたかった。息子の事、孫の事。それに和夫さんと生き写しのような曾孫の自転車少年の事を。でも、話をするのは限られていることに気付いた。和夫さんは私と違い一度「死者の門」をくぐり転生しているので、和夫さんだった時の記憶が魂の中に封印されていると。

 魂の記憶という物は、ヘレンに転生する前に少しだけキキョウさんという巫女に聞いたことがあった。万物の魂は遥か昔から現在、そして遠い未来まで八百万の世界を転生し続けるものだけど、その魂が体験した記憶は一つの生に原則として一つしか発現しないと。

 そのため多くの前世の記憶というのはありとあらゆる魂の記憶が混濁したジャンクのようなものか、最初から出まかせのものしかないというものだった。だけど、それでは前世の約束などを守ることが出来ないので、守る必要がある時にだけにじみ出るように思い出すというのだ。和夫さんの記憶が出てきたのも私と再会するためだ。

 「和夫さん!」

 私は今はハダカということもお構いなく抱きついていた。するとルドルフの中の和夫さんはそっけなくいった。

 「本当に奈津なのか? こんなふうに自分から抱きついたりしてこなかったし!」

 それを言われ思い出した。奈津って若い時は物凄くウブでエッチな事をするときはいつも受け身だったと。

 「そうねえ、奈津はそんなことしたのは初めてよね。そういえば、なんでルドルフは昼間に気付かなかったの?」

 それを聞かれルドルフ、いや和夫さんはこう切り出した。

 「なあ、奈津。君って眠っている時に見た夢を明確に覚えているかい?」

 「そうねえ、あんまり。どういうことなの、そんなこと聞いて」

 「今の和夫としての記憶が蘇るのはおそらく夜だけなんだ。昼間は忘れてしまうんだよ。簡単に言えば昼間はルドルフの人格で、夜は和夫の人格なんだ。
 以前、魔道士から聞いたことがあるんだ。この世界の中で転生してきた記憶を持つと主張するものは大勢いるが、昼間っから言っている奴の大半はウソだと。本当に転生してきたものがいても主張することはないだろうと。だから・・・」

 「だから?」

 「奈津も一緒だろ。昼間は奈津だったと認識していても誰にも話せないんじゃないのか?」

 「確かに・・・」

 そういえばヘレンの中に奈津の魂が蘇った今でも、誰にも話すことが出来なかった。なぜなら話そうと思っても口が動かない!

 「そういうことだ。だから昼間のルドルフがヘレンが奈津だと気付くことはなかったということだ。夜になるとルドルフの記憶を持ったまま和夫の意識が蘇っているが、あんな女たらしと奈津が付き合うなんて・・・想像できない!」

 「そうなんだあ、じゃあ和夫さんと奈津として会えるのは夜だけってことなの?」

 「そういうこと! それに今は僕と契りを結んじゃダメなんだよね? 昼間のルドルフだったら据え膳を喰わぬは男の恥とばかりに、やってしまうだろうけど遠慮なく。でもまずいんじゃないかな。例外中の例外の少女だし!」

 私ははっとした。ここは日本ではないんだと。女系尊重の社会だと! 女が家を守るためにしっかりとした男を婿にしないといけないんだと!
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