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都会から故郷へ ~Escape from Tokyo~
カズタマードール28号
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表向きヒューマン・マテリアル・カンパニーはサイボーグ技術による義手や義足、または介護用や土木工事用のパワードスーツなどの一流メーカーであったが、裏ではサイボーグ技術とパワードスーツ技術を融合させた強化改造人間を商品化していた。
その商品のひとつが「人形娘」であり、香奈も無断で「素体」にされてしまったものである。この「人形娘」は見た目は可愛らしい姿であるが、オプションと融合させると恐ろしい戦闘マシーンになるというものだった。
「人形娘」は某国軍事政権が秘密裏にヒューマン・マテリアル・カンパニーからの技術移転を条件に開発したもので、その見返りに莫大な報酬と石油利権の配分を受けるはずだった。
香奈を素体にした「カズタマードール28号」は前量産型といえる完成形で、あとはオプションとのシンクロに成功すれば、そのまま某国軍事政権本国で量産される手筈だった。しかし、その28号は洗脳を施す前に逃げ出してしまったのだ。
香奈の肉体に挿入されたシステムによって身体能力が飛躍的に向上しているほか、頭蓋骨内に挿入された高機能演算システムと情報処理システムによって電子戦に対応する事も出来るようになっていた。
またオプションと呼ばれる外骨格戦闘スーツを装着すれば機動戦車以上の戦闘能力を発揮するはずだった。もっとも、すべてのシステムは稼動しないようになっていたが。
ヒューマン・マテリアル・カンパニーの男達は28号こと香奈が乗っていると思われる松山行き高速バス乗り場を急いでいた。少し前にかすかな信号を確認したからだ。
この日は春休みの週末。バスセンターには大勢の乗客でゴッタ返しており、しかも大きなキャリーバックを持っているので前に進むのも難しい状態だった。
「おい、お人形さんは松山行き乗り場にいるというのは本当か?」
「そうだ! はやくしないと出発してしまうぞ! あいつは結構な改造費がかかっているそうだから、しかも秘密のテクノロジーが詰まっているそうだ」
そういっていた。このときタブレットに28号と思われる厚着をした乗客が二号車に乗り込んでいるという情報を伝えられたので、進む足を速めた。二号車ならなんとかなると思われた。
しかし、男たちが見たのは何故か一号車だけ残っていた。思わず男は乗り場のガイド役に詰め寄った。
「おい、どうして二号車が先に出発しているのだよ! 二号車に乗ったヤツに用があったんだが」
「一号車ですが、お客様が急病で倒れてしまい、いま救急措置を取っております。お急ぎのお客様の一部は二号車に移ってもらいました。
もしよろしければ、二号車のドライバーに伝言いたしましょうか?」
「いえ、結構です。ところで二号車が次に停車するのはどこなんだ?」
「予定では御殿場サービスエリアになります。しかしそこからお乗りなる事は出来ません」
そういわれ、男達は戻っていった。
「くそう! もうちょっと早ければ間に合ったのに! こうなったら松山に行って取り戻してやろうか! 」
そう思っていたところ、男達のもとに一本の電話が入った。それを聞いた男は悔しそうにいった。
「お人形さんを回収するのは中止だってよ! しばらく泳がしてから然るべき時期に回収するんだってさ。社長も何を考えているだろうか?」
その商品のひとつが「人形娘」であり、香奈も無断で「素体」にされてしまったものである。この「人形娘」は見た目は可愛らしい姿であるが、オプションと融合させると恐ろしい戦闘マシーンになるというものだった。
「人形娘」は某国軍事政権が秘密裏にヒューマン・マテリアル・カンパニーからの技術移転を条件に開発したもので、その見返りに莫大な報酬と石油利権の配分を受けるはずだった。
香奈を素体にした「カズタマードール28号」は前量産型といえる完成形で、あとはオプションとのシンクロに成功すれば、そのまま某国軍事政権本国で量産される手筈だった。しかし、その28号は洗脳を施す前に逃げ出してしまったのだ。
香奈の肉体に挿入されたシステムによって身体能力が飛躍的に向上しているほか、頭蓋骨内に挿入された高機能演算システムと情報処理システムによって電子戦に対応する事も出来るようになっていた。
またオプションと呼ばれる外骨格戦闘スーツを装着すれば機動戦車以上の戦闘能力を発揮するはずだった。もっとも、すべてのシステムは稼動しないようになっていたが。
ヒューマン・マテリアル・カンパニーの男達は28号こと香奈が乗っていると思われる松山行き高速バス乗り場を急いでいた。少し前にかすかな信号を確認したからだ。
この日は春休みの週末。バスセンターには大勢の乗客でゴッタ返しており、しかも大きなキャリーバックを持っているので前に進むのも難しい状態だった。
「おい、お人形さんは松山行き乗り場にいるというのは本当か?」
「そうだ! はやくしないと出発してしまうぞ! あいつは結構な改造費がかかっているそうだから、しかも秘密のテクノロジーが詰まっているそうだ」
そういっていた。このときタブレットに28号と思われる厚着をした乗客が二号車に乗り込んでいるという情報を伝えられたので、進む足を速めた。二号車ならなんとかなると思われた。
しかし、男たちが見たのは何故か一号車だけ残っていた。思わず男は乗り場のガイド役に詰め寄った。
「おい、どうして二号車が先に出発しているのだよ! 二号車に乗ったヤツに用があったんだが」
「一号車ですが、お客様が急病で倒れてしまい、いま救急措置を取っております。お急ぎのお客様の一部は二号車に移ってもらいました。
もしよろしければ、二号車のドライバーに伝言いたしましょうか?」
「いえ、結構です。ところで二号車が次に停車するのはどこなんだ?」
「予定では御殿場サービスエリアになります。しかしそこからお乗りなる事は出来ません」
そういわれ、男達は戻っていった。
「くそう! もうちょっと早ければ間に合ったのに! こうなったら松山に行って取り戻してやろうか! 」
そう思っていたところ、男達のもとに一本の電話が入った。それを聞いた男は悔しそうにいった。
「お人形さんを回収するのは中止だってよ! しばらく泳がしてから然るべき時期に回収するんだってさ。社長も何を考えているだろうか?」
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