人形娘香奈同居日誌 -早く人間に戻りたい-

ジャン・幸田

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人形娘故郷へ

バスの中でわたしは

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 わたしが人形娘になって何日経過したかははっきりしないけど、こんな身体にされたのに気が付いてから一週間はたっているようだった。いま、郷里に向かう夜行バスにいる。幼馴染と一緒だ。

 わたしの身体は脱ぐことの出来ない着ぐるみに閉じ込められている。しかもしゃべれないので筆談とジェスチャーでしか意思を伝える事が出来なかった。そのうえ全身が強い拘束感で押さえつけられた感覚であった。

 また、体内も様々な器具を挿入されていて、頭蓋骨の中にも電極が入れられているのがわかった。わたしの身体は28号という名の人形娘の素体にされているのだ。そう、人間ではなくなっているのだ。呼吸もしていないし人と同じように食事をすることも出来なくなっているのだ。

 わたしは、東京に出てきたとき何気なく立ち寄ったイベントで美少女着ぐるみのマスクを被ったことがあった。その時は何故か女性に限り無料で体験できるものだった。

 わたしは、そのサークルの女の人と一緒に着替えた。まず着ているものを全て脱いで、スキンカラーの全身タイツを着せてもらった。そのとき皮膚が人形になったという感じで不思議な気分になった。

 そのあと、可愛らしいフリルのついたドレスを着てから、美少女の着ぐるみのマスクを被らせてもらった。そのあと、無料条件としてそのままイベントで二時間着ぐるみを着たまま過ごしたけど、変身したようで楽しかった。

 しかし、いまのわたしはそんな楽しい気分ではなかった。いまはこの人形娘の内臓そのものに改造されてしまったからだ。表情は変わらないし、体内の至るところに装置を埋め込まれ、しかもしゃべる事が出来ないのだ。

 わたしをこんな身体に改造した連中の話によれば、会話できるようにすると同時にわたしの電脳化された頭脳をマインドコントロールして、自我を抑制するといっていたので、しゃべれるようにされなくて良かったのかもしれない。

 わたしはバスの中でまどろんでいたけど、このバスは横三列シートで隣の席の間には間仕切りのカーテンがある豪華版なので、隣に座る智樹の姿は確認できなかった。彼からすればわたしの姿はどんな風に思っているのだろうか。

 可愛い、それともおぞましい・・・それはわからない。女の身体を使った人形なんて男がどんな事をするのか、わたしには想像できなかったのだ。

 沢村香奈は人形娘にされたけど、元に出来る限り戻れるだろうか、それともこのまま・・・

 答えなど出ることないことをずっと考えているうちにわたしの意識は遠くなっていった。でもわたしの顔は微笑をたたえたまま、瞳が開いたままだろうね。喜怒哀楽など無縁の。こんなにわたしが悩んでいるというのに。

 わたしの人形娘の身体には高速道路を走行する際の規則正しい振動をずっと感じていた。
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