【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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歳の差夫婦の謎

試練の終わり

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 わたしは玲子さんの事を知っている限りはなした。するとお局事務員の顔色が変わった。いつも強そうな面構えをしているのに意外だった。

  「玲子さんは・・・漫才が好きでねえ、噺家のようにしゃべっていたけど、けっこう下ネタが多くてね。それに料理するのも好きでね・・・まさか、ずっと澤村さんと暮らしていたというの? あなたは・・・そんなことないはずよ幽霊でしょ。でも本当なら・・・」

  澤村さんのアパートにに到着したとき、前に訪ねてきた時には感じなかった恐ろしい違和感を覚えた。わたしは前もって連絡していた不動産管理会社の社員に施錠を解除してもらい、リビングに入ると・・・澤村さんが冷たくなっていた。

 その手にはこの前訪ねたときには見なかった二つの位牌が握られていた。玲子さんと娘さんの・・・澤村さんは致命的な発作に襲われ、死ぬ間際に位牌を抱きしめて最期の時を迎えたようだった。その表情は穏やかで笑みを浮かべていた。

 お局事務員は澤村さんの脈を確かめると、手を合わせていた。この時、澤村さんの試練の人生が最期を迎えたことを確認したのだ。そう、澤村さんは玲子さんと同じ存在になったのだと。

  「澤村さん、ようやく玲子さんのところに行けたのよね。彼は言っていたのよ。この世で生を全うした後は玲子さんとお子さんと一緒に暮らしたいと。ようやく神仏に許されたのね、冥途にいくことを。いままで一人で生きてきて辛かったんよね?
  いまごろきっと玲子さんと再会を喜んでいるのようね、きっと玲子さんも待っていたはずよあなたとまた暮らせる日が来るのを・・・」

  そういって泣き崩れてしまったけど、わたしは違うと思っていた。澤村さんはいつからかは知らねいけど玲子さんと再会することが出来たのだと。それで、この部屋でずっと幸せに暮らしていたのだと、そう信じたかった。だって、あの日招かれた私がみた二人は幻でないはずだからだ。

  騒ぎを聞きつけてアパートの他の住民が集まってきたが、その中に上の階に住む老婆がいた。

  「澤村さんお亡くなりになったの? 奥さんのところに行けたのかしら。向こうに行くのだったらわたしの事を孫に伝えてほしいなあ。だって一緒に亡くなったのだから奥さんも孫も」

  どうやら、この老婆のお孫さんも同じ航空機事故で亡くなったようだった。そのときわたしはある気配を感じていた。この部屋から数多くの霊魂が昇っていくような感覚だった。もしかすると澤村さんの魂をあの世へと導いてくれる存在だったかもしれなかった。
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