わたしにゼンタイなんて着せないでよ、もう変態！

わたしにゼンタイを着せないでよ！ 編

１．踏んだり蹴ったりだわもう！

　「申し訳ございませんが、今日は此処から先は行けません。よろしければネットカフェを紹介いたしましょうか？」

　駅員に詰め寄ってはみたけど、今日のような悪天候だから運転打ち切りは仕方なかった。自分が立てた旅行計画が破綻したのが残念でしかたなかった。

　わたしはマドカ、失業中の女。先月いきなりクビになってしまったの。勤めていた焼肉屋が火事になって、お店が消えてしまったのよ。ホント、焼肉焼いても店焼やくなよなあ。しかも原因が客が暴れてガスコンロにイタズラしたためだったのよ。あれはテロ行為だ！　ホントにもう。

　愚痴ばかり言ってしまったけど、さらに愚痴をいいたいわ。それで格安航空会社のセールで片道1000円というのがあって、仕事を探さなきゃいけないのに思わず行ってしまったのよ南の島へ！　まあ、ひそかに素敵な男と出会いがないか期待したけど、そんなことは無かったの。

　それで、帰りの便に乗ろうとしたけど飛行機が機体トラブルなどといって飛んでこないし、飛んでも今度は悪天候で空港がクローズしたといってダイバードするし、さらにそこから元の空港に戻ってきたけど、今度はゲリラ豪雨で電車が不通になって途中で運転打ち切りになったのよ。

　それで、わたしは家まで二十キロの地点で放り出されてしまったのよ、大きなスーツケースを持ったままで！　本当ならここからタクシーに乗ってもよかったし、ビジネスホテルかネットカフェに泊まってもよかったけど、お金が無かったの！

　ただせさえ、お金がないのに旅行に行ったもんだから所持金が千円札数枚という寂しい状態なのよ！　使いたくないし、僅かな貯金をコンビニATMからおろすのも手数料が勿体ないし・・・

　一層の事、駅で野宿しようとも考えたけど、二十四の大して美人ではないけどそれなりのボディラインの女が泊まるのも恐ろしいので断念したわ。それに駅からも追い出されてしまって駅前広場で途方に暮れてしまった。この降りた駅は初めてなので途方に暮れていたけど、ある事に気付いたのよ。この駅ってわたしのことを気に入っているような、気に入っていないような男友達の家があることに！

　そこでメールを打ってみると泊まってもいいというのよ！　それはよかったよ！　なぜその男の家に泊まろうと思ったかだけど、そいつは両親と同居しているし、自宅も屋敷のような家なので部屋がいっぱいあるので、問題ないはずだったのよ。それに性格も大人しくって虫さえも殺せないようなタイプだったし。

　他の女友達の家に行く事もできないし、他の男友達はもっと問題があるので、その男をチョイスしたのよ。それでしばらくしていると、その男が軽乗用車で迎えに来てくれたの。

　「マドカさん久しぶりですね。今日は大変でしたね。食事はどうしましょうか？」

　「ううん、いいよ。そこまでしなくても。さっきコンビニ弁当を食べたから。それよりもお風呂は入れるかな？　シャワーでもいいけど。とめてもらうのに悪いけど疲れて汗だくで気色悪いのよ。本当にお願い！」

　「わかりました。お風呂すぐ沸かせるから入っていいよ。着替えやアメニティグッズはあるかな？　うちには進学した妹のものがあるけど、使ってもいいよ」

　「へえ、そうなの？　もしかすると使わせてもらうかも。その時は借りるわね」

　その男、シンジの車に乗ったがそこがアブノーマルな世界への入り口だったとは想像も出来なかったのよ！　あとで思ったけどあれはあれでよかったのかな？