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わたしにゼンタイを着せないでよ! 編

5. 裸にされてしまったあたし!

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 後で聞いた話だけど、ゼンタイフェチとは全身タイツを着たり見たりすることに性的な衝動を感じるという人をいうことだという。だからゼンタイフェチになると全身タイツを着るのが楽しくって気持ちいいのよ! というらしい。難しく言えば性的嗜好の一つで服装に対するフェティシズムというらしい。だからシンジは変態なの?

 それにしても私って人からみれば結構エッチな女だと思われていたようなの。特定の恋人がいないし、雰囲気に流されて簡単に身体を許すからだと。たしかに、なんとなく身体を許して、なんとなくエッチをしてということはあったし、エッチをしても付きまとったりしないから、便利な女だったのかもしれない。だって相手の男に魅力をあまり感じてこなかったからだけど。

 でも、今わが身に起きていることはいったいなによ! そのあたしをゼンタイの虜にしようというのよ! だがらどうするんじゃバカシンジ!

 「マドカちゃん。いま採寸したからね君のボディサイズを。明後日には君のためにオーダーしたゼンタイが届くから楽しみにしていてね。そうそう君をそれまでにゼンタイフェチになるから届いたら涙を流して喜ぶはずだからね」

 シンジのやつはそんなことをほざいていたわ。こいつのルックスもセレブだという事も、いまの私がプータロウ女だということを考えたら魅力的でひかれるはずなのに、なんてすることだというのよ! 私を裸にしてからに!

 「あんた、さっきからあたしをゼンタイフェチにするんだって言っているけど、これからどうするんだよ! 説明責任ぐらい果たしなさいよ! それぐらいしてちょうだいよ、まったく」

 生まれたままの姿の私はシンジに叫んでいた。すると目の前で奴は服を脱ぎだして裸になった。その肉体は引き締まっていて筋肉質だったけど、これって私の好みだわ! ていうかレイプするわけなの! そんなことを思っていたが、先にシンジの方がゼンタイを着てしまったのだ。

 その姿を見た私の中で何かが崩れるような感覚に襲われた。それはゼンタイと男に対するイメージだ。焼肉屋のお座敷で見たブタのような奴が着た醜悪なゼンタイのイメージと、そして何よりも男に対する感情だった。

 シンジの均整の取れたセクシーな身体にメタリックな質感がするゼンタイがフィットしたが、その姿はまるで彫刻のように美しかった。しかも私はの頭の中には変な気持ちが浮かび上がっていた。触りたい! 抱かれたい!だ。こんな無理矢理、人を裸にしたというのにである。

 むかし、バカ兄貴が持っていた官能小説を密かに盗み見たことがあったけど、登場人物の女がレイプされた場面で、心は激しく拒絶しているのに身体は性の悦びで溢れてイヤー! なんて描写があったけどそんなのファンタジーでありえないと思ったけど、今の自分はその女の心境のようだった。

 それにしてもバカシンジ、はやく私の身体と心をどうやってゼンタイフェチにするのか説明して頂戴! それに裸のままでいるのもイヤだからゼンタイでも何でもいいから着せてください、お願い!

 
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