上 下
11 / 18
公爵家を狙うもの者たち

10

しおりを挟む
 シンシアはジャンヌよりも一つ下の17歳だった。兄弟は他にもいたがジェイソンから特に溺愛されていた。そんな娘の為にも自分がウォレス公爵家の当主になる必要があった。そのために多くの血が流れるもの厭わずに。

 「なあシンシア。トーマス殿はプロポーズしてくれたか?」

 「はい、頂きました」

 「で、首尾は?」

 「お受けいたしましたわ! わたしと心も身体も相性が抜群ですわ」

 「身体って・・・?」

 さすがにジェイソンもそんなに早く肉体関係を結ぶなんてはしたないと思ったが、全ては計画のうちだと思った。ジャンヌの婚約者を奪えば、ウォレス家の当主代行でいる理由の一つがなくなるからだ。

 王国の貴族継承法では、その爵位は男系でしか相続できないとあり、女性が婿養子を貰って継承するには同じ男系男子と婚姻もしくは婚約していなければならなかった。また、この時期ジャンヌやシンシアの婚約者候補になりえる王家の男系男子で最も適しているのがトーマスしかいなかった。だからシンシアが実家に残るためにトーマスと結婚する必要があった。

 「じゃあ、話はうまくいっているな」

 「でも、パパ。あのジャンヌが婚約破棄に応じるとは思えないわ」

 「それは大丈夫! 奴から当主代行の地位を奪う算段は出来ている! 奪った後で婚約破棄は問題なくできるさ。そうすればお前はトーマス殿の妻になって将来はウォレス公爵夫人さ!」

 「嬉しいわ!」

 ジェイソンは微笑んでいたが、娘に対する親愛の情とは真逆のジャンヌに対するドス黒い企みがその頭の中で渦巻いでいた。
しおりを挟む

処理中です...