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全てを奪われるジャンヌ!

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 その日はやってきた。ジャンヌ側は万全を尽くしていることを知らない、屍肉を食らう醜き者のような連中がやってきた。トーマスとシンシアが意気揚々とウォレス公爵家の居城にやってきたのは昼過ぎだった。二人はまるで芝居の舞台に上がろうとしている”三流”の役者のようであった。

 「ここだけは、凄い建物だな」トーマスはそう言った。ウォレス領を田舎だとバカにしていた者の発言からして、自分の立場をわきまえていたといえなかった。もし、時代が平和でこの国に男系優先の相続法がなければ婿養子などという立場は剥奪されて当然の無能な男であった。

 「トーマスさま、これ以上に凄いものを王都のそばに作りましょうね」 シンシアは腕にぶら下がるように甘えていた。シンシアはウォレス家の財力と父親が受けるであろう武勲による褒美で簡単に出来ると思っていた。

 そんな二人を密かに公爵執務室からこっそりのぞいていたのが、喪服姿のジャンヌであった。彼女はこれから始まる茶番劇を想像していた。全てを奪われた令嬢の行く末を!

 「いよいよです、ジャンヌ。それでは事前の手はず通りにいたします」そういってピーターは執務室から秘密の部屋に隠れた。そのとき、あの二人が執務室に流れ込んできた。
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