【第一部完】全包防御衣的巫女退魔日誌

ジャン・幸田

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第一章:夜明け前の想い出は仄暗い路に続く

9.夜明け前の想い出は仄暗い路に続く

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 淫獣のコアというのは俗称であった。そこは四魂とよばれるエネルギー源ともいえるものが存在しているといわれているが、確かではなかった。はっきりしたことは分からないが大正時代の頃に暴走した淫獣巫女を止む無く成敗して身体が引き裂いたときに、淫獣が巣食っているような臓器があったという記録があった。だから淫獣巫女と化したミスズの体内にもあるはずだが、それがあるのは子宮の付近だったようだ。だからユマから伸びた触手はミスズのヴァキアから体内に侵入したのはそれが理由のようだ。

 ユマの触手がミスズのコアに接触した際、恐ろしい勢いでエネルギーの放出現象が発生した。それをまともに受けたケンイチもアリスも吹き飛ばされ、結界をも吹き飛ばした。そのため金色夜会の会場内にトンデモない暴風が噴き出した。そのため残っていた客やスタッフ、それにナズナも吹き飛ばされ壁や床にたたきつけられた。

 「あ、た、た、なんなんだそりゃ? 何が起こったんだというんだよ!」

 黒縁のメガネを吹き飛ばされた男が見あげるとそこには胸があった。それはナズナだった。

 「早くどけ!」

 「す、すいません・・・一体何が起きたのですか」

 「それは・・・誰にも公言しないと誓えるのならいってもいいぞ」

 「け、けっこうです・・・はやく電車にのって羽田までいかないといけないから・・・」

 男はこれ以上面倒な事に巻き込まれたくないと思い、立ち上がろうとしたとき、視線の先に真っ赤なゼンタイ女がブラックラバー女から伸びた触手に絡まっている光景が広がっていた。ミスズとユマだった。

 「ありゃ、なんなんだ?」

 「あれか? 説明したら長くなるからな。聞くか? 飛行機に乗らないといけないんだろ、あんたは?」

 ナズナはそういいながらスマホを操作していた。それは外で待機している検非違使の機動部隊に中へ突入する指示だった。しかし、それは出来ない状況であった。逃げ出そうとしてドアを開けようとしても溶接されたように開ける事が出来なかった。しかもエレベーターや階段の前に新たな結界が生まれていた。

 「帰れないようなんですが、そちらで何とができないですか、あのコスプレ女たちを」

 「それはなあ・・・まあ見守ってやってくれ!」

 ナズナが後に語った事によれば、機動部隊は場合によってはミスズと一緒に封印しても構わないという命令書を受けていたという。それだけユマの淫獣としての淫気は激しく周辺にいる人間を狂わすに充分なレベルに高まっていたという。

 その時、ケンイチは気が付くなる気を失っているアリスに近寄っていた。彼女を淫獣の本体だと推測しての行動だった。

 「おい、貴様、目を覚ませ! お前が正体なんだろう!」

 ケンイチはアリスの頬を揺さぶった。アリスは十代半ばの顔つきをしていたが、恐らくは数十年まえから存在している淫獣だとみていた。するとアリスは悲しそうな瞳を開いた。

 「そうよ、わたしがユマに憑依している淫獣のコアよ。元々はそこの駅で自殺した女よ、たしか今頃の季節で夜明け前だったわ。それで仄暗い路を歩んでいたのよ。その時だったわ、自殺した者の魂がたどり着く先は地獄だと言われたのよ。それは誰かは分からないけど。
 それで契約したのよ、電車に轢かれた身体と魂を譲り渡すとね。それ以来わたしは淫獣の実体として存在していたわけなの。でもね、一年前から異変が起きたのよ」

 そういうとアリスは持っていたヌイグルミのお腹を裂きだした。そこには・・・虚無の空間があった。

 「そいつは・・・無間の闇か?」

 「ええ、そういうだろうね淫獣を狩る立場からはね。こいつはわたしに命じたのよ。淫獣の糧となる人間の魂で特に淫らで邪なのを調達せよと。それで一ヶ月に一回ここに来ていたわけ、仄暗い路へと送り出すために。今夜はそこのゼンタイ巫女を選んだんだけど検非違使の手下だったわけだ、あんたたちは」

 ケンイチは答えなかった。答える必要もないからだ。ただ、こんな質問をした。

 「あんたがいう仄暗い路というのは淫獣の巣だろ! そこに巣食う奴の為にそんなことをしたんか? それに、あのユマは何者なんだいったい?」

 「ユマは・・・」

 そこまで言ったところでアリスは唾を飲み込んでいた。何か恐ろしい事をいうための様子だった。
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