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啓子が啓子を着る!

ソフィアの誓い(2)

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 その「ソフィアの誓い」のあらすじはこんなものだった。昔、皇帝の後宮で働いていた侍女が無実の罪に陥れられて、半殺しにされ川に流された女が、どこかの親切な男に助けられて女房になって幸せになったというのに、自分の娘に自分の無念というか相手を復讐するように教育してから、後宮に入っていろいろとやるという話だった。

 その小説自体はイジメがあったり女同士の汚い面の描写があっていやだったけど、一つだけ良いと思ったな面があった。それは復讐すべき母の敵を討った後、その娘と和解する場面だった。その娘はソフィアの親友のカリンだった。カリンは後宮から追い出されるため、全ての着ているモノを脱がされ、一糸まとわぬ姿にされたのだ。それまでカリンは復讐相手の娘だというのを知らなかったので衝撃ショックを受けたのだ。

 「カリン・・・どうしてあなたがそんな目に遭わないといけないのよ! わたくしはただあの女の罪を暴き、この世界から抹殺したかっただけなのに・・・」

 ソフィアはそれまで容赦なく粛清にいそしんでいたが、この後宮のただ一人ともいえる友人の姿に動揺していた。なぜ、彼女も?

 「ええ、知っていたわ。あなたが我が母を憎いんでいた事も、そして相応の罰を与えたかった事も。その罰によって私も滅ぼすことをしっていたわ。でも、言えなかったわ。バカだと思わない? いくら悪い事ばかりしてきた女でもあの女は母よ! あいつに打ち明ければあなたの思惑なんぞ一瞬でかき消すことが出来たわよ。でも、しなかったわ。あなたの事を・・・」

 カリンは豪奢な衣装を脱がされ、ただの娘以下の奴隷に落とされることを予測していたのに何もできなかった。その理由はソフィアの事が好きだったからだ。
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